第7話 イベント、ですか?

「おや?」


 いたずらをする少年のような笑みを浮かべているセナさんを見ていると、視界に何か不可解なものが入り込んできました。


《レベルが上がりました》

《新しく〈瞬殺〉スキルを獲得しました》

《〈短剣術〉スキルの熟練度が上がりました》

《〈隠蔽〉スキルの熟練度が上がりました》

《〈隠密〉スキルの熟練度が上がりました》

《新しく称号『暗殺者』を獲得しました》


「これはなんです?」


 左下を指しながら、セナさんに聞いてみます。


「これってどれだよ……。通知のことか?」


「通知? ええ、多分それです」


「色々上がったら教えてくれるんだよ。試しに、ウインドウ開いてみな?」


 人差し指を一回転。どこを見ればいいのでしょうか。


「そこの、ステータスって書いてあるとこ見てみな」


 〈STATUS〉これですね。ポチッと押してみると、新たな画面が現れました。

 なになに……?


▼△▼△▼△▼△▼△▼△


るり Lv.3

HP 50/50 SP 50/50

性別:女 種族:エルフ

陣営:ハイド

殺人回数:2 死亡回数:0

貢献度:2

ランキング:10426位


STR:1 AGI:2 VIT:0

MND:0 INT:0 DEX:2 LUK:0


所持スキル:

〈短剣術〉Lv.2〈隠蔽〉Lv.2〈隠密〉Lv.2(霧中視野〉Lv.1〈瞬殺〉Lv.1


所持称号:

『暗殺者』気付かれずに殺人をした者に贈られる称号。セットすると〈隠密〉スキルのレベルが上がりやすくなる。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 なるほど? よくわかりませんね。

 なんとなくですが、自分の情報みたいなものでしょうか。英語で書かれているものの意味がわかりませんね。何かの略称でしょうか。


「なるほどね。割とまともなステ振りなんじゃん? スキルは……ま、今後もっと増やしていけばいいだろ」


「あの、このえすてぃーあーる以下のものは何でしょうか?」


「ああ、それは強さの具合? みたいなもんだよ。それぞれに意味があって、STRだったら筋力、AGIだったら敏捷力って感じ。他は自分で調べてくれ。めんどくさい」


「わかりました。後で調べてみますね」


 もう用は済んだようなので、ウインドウを閉じます。


「ところで、もっと楽しいこととはどんなことですか?」


「それはだな――」



▼▼▼▼▼



「もうっ。るり姉ったら、帰ってこないなら帰ってこないって言えばいいのにっ」


 せっかくるり姉と一緒にゲームできると思って楽しみにしてたのに、もう1時間以上も経っちゃったし、戻ってこないしでほんと困っちゃうよ。

 るり姉は自由なんだか縛られたいんだかよくわかんないんだよね。

 天然なのは間違いないけど。


 でも、あんなるり姉と一緒にいられる人がいるなんて。私以外はみんなるり姉のこと苦手なのに。お父さんも、お母さんも。


「めんどくさいことになってないといいけど」


 ゴーグルをつけたままのるり姉はきれいなんだけど、喋ったらなあ。

 戻ってこなさそうだから、私も遊んじゃおう。

 るり姉のアバター変更もできなさそうだしね。



▼▼▼▼▼



「うわぁ! は、ハイ……っ」


「よ、いしょ」


 驚いてるところ申し訳ないですが、気づかれた以上危ないのでさっさと殺してしまいます。

 飛んでいった頭は派手なエフェクトとともに消えました。


「もう、セナさん。外すなんて、危ないではないですか。気づかれてしまえば立場が悪くなってしまうのでしょう?」


「すまんすまん。ま、ソロだったしいいじゃんか。次、行こうぜ」


 セナさんは銃を腰に収めて緑の森の中を歩いていきます。

 私も短剣を収めて、セナさんについていきます。


 私たちは、シークの領地に来ていました。なんと、シークはハイドの領地には入れないそうですが、ハイドはシークの領地に入れるそうなのです。

 セナさんによると、これはソロ狩り?というやつだそうです。

 さっきの人で3人目ですね。大きめのパーティ?だと気づかれずに殺すのが難しいそうなので、1人でいる人たちを狙っています。

 殺す人が1人しかいないのは寂しい気もしますが、危険な所にいるという緊張感もあって、なかなか楽しいですね。現実ではなかなか味わえないことです。


「セナさんセナさん」


「あ?」


「その銃はどこで手に入れたのですか? 私は持っていませんよ?」


「あんたは短剣選んだんだろって……そうか、あんたはカクレちゃんに選んでもらったのか」


「そうですよ?」


「最初のカクレちゃんと会うタイミングで、どの武器を使えるか選べるんだよ。ハイドの定番は、あんたの短剣とか俺の銃だな」


「どうしてですか?」


「隠れながらだと、使える武器が限られるんだよ。片手剣とか大きめの剣だと小回りが効かなくて振ってる間に気づかれちまう。毒も定番だな。武器はやっぱ短剣が多い。毒と投擲を取るやつもいるが」


「へえ? 意外と深いんですね」


 カクレちゃんはちゃんと定番を選んでくれたのですね。ありがたいです。

 短剣も、なんとなく私にあっている気がします。


「そーいえば、あんた次のイベントどうするんだ? 妹さんと参加する予定だったんだろ?」


「イベント、ですか? 妹からは特に何も聞いていませんが」


「…………あんたの妹、ほんとなんにも言っとかないんだな」


「琥珀を悪く言わないでくださ……」

「わーわー!」


 突然口を塞がれてしまいました。どうしたのでしょう?


「そんなリアルのことをこんなとこで話すもんじゃねえよ。俺は別にいいが、誰が聞いてるかわかんねえんだ」


「……? そうなのですか? 今後は気をつけますね」


 ゲームの中でそんな決まりがあるなんて知りませんでした。


「ところで、そのイベントとはなんのことですか?」


「ああ、一週間後に公式イベントがあるんだ。聞くか? ハイドにめちゃ有利なイベントなんだぜ」

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