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           💐お母さんに捧げる子育てアドバイス🌈

           お子さんの行動にイライラしないために。

           お子さんの行動には全て理由があります。

           お子さんの才能を伸ばすためには、

           長い目で見ることが不可欠です。

           どうか、お願いです。

           頭ごなしに怒ってしまう前に、深呼吸を

           して下さい🕊🕊

           #傾聴保健師

           #伊吹真由子 #子育て

            2022/7/31         ♡1422


           みか@rusi_f_1日

           返信先:@mayuibuki123さん

                子供に対して我慢できずに感情的になってしまっ

                ていました・・・。

                伊吹先生、いつもありがとうございます。

                                    ♡1

                                                                      

           伊吹真由子@傾聴保健師@mayuibuki123_1日

           返信先:@rusi_fさん 

                こちらこそ、コメントありがとうございます😊

                微力ながらお役に立てますように🙏🏻

                                    ♡8


           lily@フラワーアレンジ💐勉強中@_LoF _20時間

           返信先:@mayuibuki123さん 

                子育ての女神様!!!

                                    ♡4


           伊吹真由子@傾聴保健師@mayuibuki123_20時間

           返信先:@_LoFさん

                コメントありがとうございます😊

                女神様だなんて、、、とんでもない!!

                でも、ありがとうございます 😲🥰 🙏🏻                                                                                                               

                                    ♡4


           さかな♪_🌀_@uzu2 _12時間

           返信先:@mayuibuki123さん

                まゆ様について行きます。。。

                                    ♡16                                                                          


           伊吹真由子@傾聴保健師@mayuibuki123_12時間 

           返信先:@uzu2さん 

                コメントありがとうございます😊

                ふつつか者ですが、そう言って頂けるとうれしい

                です。。。🙏🏻

                水際の指針を示す形で発信をしていますが、更

                に良いお手伝いが出来るよう、がんばります。

                                    ♡8


           このツイートは表示できません


           伊吹真由子@傾聴保健師@mayuibuki123_12時間 

           返信先:@yamiko_0さん 

                コメントありがとうございます。

                失礼ながら、大変お辛い状況にいらっしゃると

                推察致します。

                もちろん、お子さんの個性が絡みますので、全

                てがこうと言い切ることは出来ません。

                もしよろしければDMの方にご連絡を下さい。

                保健師として直接お話を伺うことで、より具体

                的な解決策をご提案出来るかもしれません。

                                    ♡1


            リエ_@noanoa@cat_of_hornplayer _8時間

            返信先:@mayuibuki123さん 

                猫ちゃんかわいいですね。うちも猫飼ってます。

                                    ♡8


            伊吹真由子@傾聴保健師@mayuibuki123 _8時間

            返信先:@cat_of_hornplayerさん 

                 コメントありがとうございます😊

                 名前はバルと言います。

                                    ♡16                                                                                                                    


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 今日も、すぐに起きられない。悲惨な現実を受け止めるために、しばらく布団の中で考えを巡らせるのが私の日課になりつつある。耳を澄ませても物音一つしない。あいつはまだ寝ているようだ。もう、このまま永遠に起きなければいいと思う。

目を閉じたまま、今日も日課のように布団の中で足を動かす。右横の部屋の隅にはあいつのベッドがある。見たくない。赤ん坊の頃から使っていて、未だに片付けられないベッド。右横を向いてベッドを見ると、嫌でもあいつの姿が目に入るから、起きてから暫くの間は、目を開けない。どうせ赤ちゃん返りの夜泣きで悩まされているんだから、その位の贅沢、いいはずだ。それに、頭を動かすと血の気が引いていくから寝起きは、むやみに動かさないことにしている。

私の一日はいつも貧血と吐き気を伴った絶望で始まる。今日は、それに加えて筋肉痛もあった。今日は、目覚めたことが恨めしいほどふくらはぎが痛かった。昨日もまた区役所に行くついでに会社の前に行った。行った日の翌日は必ずふくらはぎが痛む。これは行った罰に違いないと思う。

私はどうかしてしまったのだろうか。最近は一日おきに巡礼に行っている。日頃の家事育児でどんなに走り回ってもこんな痛みは出ないのに、巡礼に行った翌日は必ずこの痛みが出る。筋肉痛の痛みを陰湿に引き延ばしたような痛み。筋肉痛を起こした足を一晩水にずっとつけていたような、足全体がふやけて膨張していくような痛み。足が水の中で壊死しかけている痛みと言ってもいいかもしれない。この痛みが出たら、一日中足を引きずらなければならない。足を労わりながら過ごせば、痛みは二三日で引くが、あいつの世話が第一優先なのだ。特にぐずっている時は、足を使って相手をしなければならないから、療養なんて出来ない。それに、治りそうになる傍からまた出かけているのだから、始末に負えない。

あの日、夫と私しかいなかった世界に、異物がやってきた。夫と正式に付き合い出して6年ほど経ったあの日の夜、あれは私に寄生した。当初は絶対に異物ではないと思おうとした。夫と血が繋がっているから、自分と血が繋がっているから、自分の中から出てきたから異物ではない、と。

選択で子どもを作った責任を果たすのだと、育児書を教科書に、当初は完璧な育児をしようとした。愛情を持って接すれば、言葉が通じなくても伝わるのだと自分に言い聞かせた。毎晩泣き喚いても、ミルクを何度吐かれても、離乳食をひっくり返されても、かわいい我が子として接した。何度も手が出そうになったが、決して叩かなかった。血がつながっているのだから目を見れば通じるのだと言う言葉を信じた。でも私が笑えば余計に泣き喚くばかりだった。向けられている愛情が、自分に対するものではないことを直感で見抜かれているのか、と思ったら、一気に熱が冷めたのを覚えている。

次は扶養義務のある人間だと思おうとした。性格的に合わなくても、生んだからには育てていかなければならない。それが親の責任だと理解することに努めた。そう考えると機械的に手は動いたが、その代償として感情の振り幅が更に大きくなった。理性のたがが外れやすくなった。たがが外れるだけならまだ良いけれども、最近は理性が暴発した感情の味方を勝手にするようになった。

私の自慢だった理性はもう私の味方ではいてはくれないのだ。

訳の分からない理由で夜中に何時間も泣き叫んでも、食べる側から排泄物を垂れ流しても、仕方がないと思える? 夜中に泣き喚いて睡眠時間が一時間でも、口の周りをベタベタにして猿のような顔を歪めて笑顔の形を作れば、全て許される。そんな世界を許容しなければならない? 壊れたボイスレコーダーのように同じことばかりを考えて悩んだせいで、理性の牙城である脳内にまで触手を伸ばした感情は理性に張り付いたまま、そのまま煮詰まって情念に変わってしまった。情念は蛇のようなグロテスクな身体で私の脳内を我が物顔に回遊する。私は自分の理性が気の毒で仕方がない。こんな化物の相手を毎日させられるなんて。

不潔なものに自分から触る。何度お腹を壊しても、諭しても同じことを繰り返す。人が嫌がることを嬉々としてする。前は粉々になったセミの抜け殻が指の隙間から溢れて思わず悲鳴を挙げた。あのねママ、蟲がものすごく嫌いだから、やめてって言ったよね? 何度同じ注意を繰り返したか分からない。蟲以外でも似たような注意は気が遠くなるほどした。特に命を危険に晒すことをした時には大泣きしても許さず、しつこいほど。注意した時のリアクションは2パターンしかない。癇癪を起こして大泣きするか、へらへら笑うか。聞くという選択肢はないのだ。理由を話して言い聞かせてもだめ。目をじっと見てけん制してもだめ。落ち着きがなく人の話を聞かない。空気が読めない。何かあったら泣けばいいと思っている。ずっとそう。喋れるようになれば少しずつ良くなると思ってきたけど、ある程度言葉を覚えた今も、何も変わらない。三つ子の魂百まで。こいつは将来、人に嫌なことを平気でする人間になるだろう。矯正出来なければ親の責任。個人の生まれ持った性質も含めて性格です、と世間は耳あたりの良い建前を言う。親はそれを笑顔で否定しなければならない。

親から聞いた話では、私は大人しい子供で、めったに泣かなかったそうだ。上げ膳据え膳で泣くほどの理由がなかったからか。あるいは泣いても無意味だと子供ながらに悟っていたからか。だから誰かが言って欲しい。それはこいつの生まれ持った性格であって私の責任ではないと。だから私が関わる必要はないと。

いたずらだけは一丁前。他人の痛みが分からないのか、そのいたずらも加減を知らないのだ。一番腹が立ったのは、独身時代のよそ行きの服をベタベタ触って汚されたこと。あの時は、私のアイディンティティを本気で否定されたように思った。子供のやったことだから、いたずらだから、けして大人の本気では怒ってはいけない。一枚一枚揃えたあのグッチのスーツも、全部だめになった。身体ではもう限界が来ていたのだろう。気づけば自分でもびっくりするほど冷たい声で喋っていた。誰に対して喋っていたのかは分からない。そのジュース、戸棚の奥の奥にしまってあったのに、わざわざ潜って取ってきたの? わざわざこのいたずらのためにそうやって取ってきたの? そもそも、どうしてママはあなたに自分のクローゼットをジュースまみれにされなきゃいけないの? ママが嫌がることばっかり、なぜするの? あいつが答える訳なかった。一瞬固まった後で、黙ってへらへら笑うだけ。今まで付き合ってきたから分かってしまう。こいつの反応は動物そのもの。他の子みたいに答えられる知性なんて、ある訳がない。

なんでこんなことをされて、子育てだからって耐えなきゃいけないの。耐えた方が偉いって言うのは、最低限、まともに育つ子に対して言える理屈でしょう。

‥‥‥一つだけこいつの才能が分かった。こいつが触った瞬間に何でも高確率でゴミになる。これは、ある意味才能だわ。

住んでいる世界の規則を変えられた。不条理を許容することが美徳。そう振る舞うのが利口だと分かるけど、そう立ち回っている自分自身を想像すると気味が悪い。何をされても耐えろと、‥‥‥それは本当の良妻賢母とは言わないんじゃないかと思う。

子供を産んで自分がバカになった気がする。


悪いけど、どんなに期待しても、ママはあんたと同じレベルには堕ちないわよ。


前に公園で遊ばせた時、滑舌が悪すぎる声で何事かを叫んでいた。狂った猿みたいにキイキイうるさい声で喚き散らして、顔から火が出る思いだった。異常な子供と関わりたくないという周囲の視線が、また突き刺さった。せっかく良識のあるママ達と仲良くなれたのに、もうあの子達とは遊ばせてもらえない。味方が敵に変わる瞬間を経験するのはこれで何度目か。

もうこの公園には行けないと絶望しながら、人差し指を立てた後で時間稼ぎに抱きしめた。右手には泥だらけのアンパンマン。昨日まで新品だったのにもうボロ切れになっていた。

ちゃんと言葉を話しなさい。日本語を話しなさい。教えたでしょう。あんたがせがむからこの前みんなの歌で流れてたあいうえおの歌、寝るまで何十回も歌ったでしょう。

思えば私は会社の仕事でも電話応対が一番嫌いだった。相手の都合でこちらの世界の壁を裂かれて、強制的に時間を費やされるから。ビジネスで証拠の残らない会話など無駄なのに、周知の事実なのにあえて電話の沼に引き込もうとするのは、なぜなのか。

大変申し訳ございません。少々お電話が遠いようで、もう一度御社名お伺い出来ますでしょうか。電話が遠くてもけしてお客様のせいにしてはいけません。世の中には小声の人や電話の苦手な人もいるのです。

ふざけんな。

‥‥‥ある育児書に載っていた説明に「育てにくい子には才能があります。何でもかんでも嫌だと言うのは、感受性が鋭く、知能が高い証拠です」とあった。同じことをママ友からも聞いた。‥‥‥もう元ママ友か。2歳になったら楽になるわよ、3歳になったら楽になるわよ、4歳になったら楽になるわよ。完全に他人事だ。

‥‥‥あいつの本当の才能って何? それ将来食える類の才能? あなた達に見えてるのなら具体的に説明してくれる? 何となくそう思うは無しね、何となくそう、で私の一連の苦労を片付けられたら溜まったもんじゃないから。あの、それ説明出来ないならそれ、見えてないのと一緒だと思うけど、違う?

‥‥‥あいつは本当にテレビが好きだ。よく戦隊ヒーロー物を見ている。同じパターンのものを飽きずに何十回もよく見るものだと感心する。そんなに好きなら椅子に縛り付けて録画した映像を見させればどの位耐えられるのか実験してみたくなる。見つかったら夫に軽蔑されて大問題になるからやらないが。

――夫。

子供を産んでしばらくしてから夫は帰りが遅くなった。昇進したからだと本人は言っている。ゆりちゃん、俺マネージャーになったから。夫はこの前、淡々とした口調でそう言った。夫は言った後でため息をついた。ようやくマネージャーになれたよ、と言いたいのだろう。おめでとう、と言った時、夫は私の目を見ず、あからさまにそっぽを向いた。何かにイライラしているのか、私の言葉を皮肉と捉えて怒っているのか。その横顔には、過労と老いが滲んでいた。老いは誰にでも平等だ。現代医学の進歩のスピードからすると、少なくとも私が死ぬまではそうだろう。人より若く見えるけれど、この人ももう30代後半なのだ。もちろん私だって、人のこと言えない。私も三十路に入って数年経つ。

だから週末も会社に行かなきゃならなくなる、と夫は事務的に続けた。確かに企画部はクライアントの都合で休日出勤をすることが多いらしかった。でもそれ以上に気になったのが、ゆりちゃん、の呼びかけが硬さを増していることだった。この呼び方だけは変わらないと、心のどこかで思っていた。でもこれも今思えば、必然だったのかもしれない。夫みたいなタイプはあの会社では珍しい。だから生き残ってこられた。前例の無い人たらしの異物として振舞うことが彼の処世術。私も含めて皆免疫が無かった。

プロパーと中途で昇進のスピードが違うのは、あの会社の人事評価システムの欠陥であって、私のせいじゃない。本当におめでとうって、思ってる。家事だって、育児だって、無理強いしたことなんて、一度も無い。だから、私に当たらないでよ。

あんな風に誰かに、直接的に傷つけられる感覚を味わうのは久々だったから、面食らっていたのかもしれない。あの時、夫の言っていることが本当なのか、確かめても良かったが、私には確かめる気力も、残っていなかった。理不尽に対する怒りに囚われて、無意識のうちに我を忘れていたからかもしれない。

まだ専業主婦になったばかりの頃、夫は時々仕事の話を雑談でしてくれて、私もそれを聞くのを楽しみにしていたのだが、最近は話してくれなくなった。仕事の話を振ると、疲れた顔で、「守秘義務があるから。昇進して分かったんだけど、今までの筒抜け状態がちょっと、おかしかったんだよ」と言われた。会社と私を繋ぐ糸がこの瞬間にぷつりと切れた。他にも切れたものがあるかもしれないが、一番重要なのはこれだ。この瞬間に私は完全に部外者になった。夫の疲れ顔が何によるものかは分からなかった。ただ昔の、あの時のレイトショーの顔と同じ顔だったというだけ。あの時の私は自分の悲しみを処理するのを優先した。その件についてはそれ以上声を掛けることをせず、それが直接的な原因かは分からないが、ただでさえ少なかった会話が更に減っていった。

夫は私といることにもうメリットを感じていないのか。そんな諦めが、私を支配し出していた。初めて巡礼に行った時にかがんでおもちゃを拾った時に、電車のシートの奥にあったゴミ。ゴミは概念だからあれは正確に言えばゴミじゃなくてゴミと認知される空き缶だが、私は十把一絡げでゴミと称されてしまうあの空き缶の存在の悲しみが、今生まれて初めて理解出来る。

独身時代の夫と私は対等だと思っていた。もう辞めたから言えることだが、独身時代の私は夫以外の全ての人間を、内心、見下していた。そうしないと、舐められて潰されるからだ。見下す人間は本当は小心者でプライドを通して自分を守っている、哀れな人間というのが世間の通説だから、こんな考えは下らないと思うだろうか。でも私は、それこそ見下される側の理屈だろう、と思う。


目を瞑ったまま、大きなため息をついて寝返りを打つと、暗闇の中で声がした。

この期に及んでもまだ礼儀正しいのね、本当にあそこが好きだったのね、と慰めるような誰かの声。


 ‥‥‥まさか、あんな不潔な人達。


井の中の蛙。会社の人間はそんな奴だらけだった。理不尽で非効率なやり方に気付いているのに改めようとする人間は一人もおらず、お局に至っては現状を更に悪化させてそのバリケードの中を自分の居場所にしてしがみ付く始末。発想が貧乏くさい。ああはなりたくないと思って関わらずに仕事をしてきたら、なぜか仲間だと思われてべたべた世話を焼かれて毎日虫唾が走る思いだった。みんな会社が大嫌いなのに定時帰りはもっと悪という風潮が蔓延していた不思議。

言ってやれるもんならこう言ってやりたかった。


飲み会では上層部の悪口ばっか言ってるのにあんたらその上が喜ぶことばっかりしてたじゃん。


入社した時から何か空気がおかしいと思っていた。最初は自分がまだ学生気分が抜けなくて、社会人の常識を知らないからおかしく見えるのだと思っていた。でも謙虚を意識すればするほど、どう考えてもおかしいとしか思えないケースが積み重なっていった。新人の私の力量でどうにか出来るものでも無かったから、そこだけには気づかない振りをして生きてきた。だってあれは、上が蒔いた毒で、毒だって気づいた人間だけに作用する神経毒だったから。

恐らくあれには、けん制兼、裏切り者の炙り出し、としての意図がある。毒に気づくそぶりをしてもしなくても、結果は同じ。だからそこで勝負をすべきではない、と初めて部下が出来た頃には思うようになっていた。事実、感づいた部下にはこう言い聞かせてきた。そこで勝負をしても、こちらが苦しいだけで上はかすり傷ほどのダメージを受けない、だから止めろと。

夫は外の世界の人間で、自己の性格の中に毒の抗体に近いものを持っていたから、あの鬱屈した空気の中でも生きられていたのだと思う。性格を自分で腐らせなくても生きられていたのは羨ましかった。その意味でも、私が夫に惹かれ、夫が皆から愛されたのは、ある意味では人の防衛本能かも知れなかった。上層部でさえも、無いものを持っている夫のことを駒として扱いながら、一方ではある種のやましさを感じていたとしたら。でもその夫も、人なのなら、毒を毒と認知していて、寄生した情念に少しずつ理性を喰われていたことには変わりは無いはずだ。

こんなの大げさだろうか。じゃあ嘘だと思いたければ、勝手にそう思うがいい。

特にあのマーケのお局達は、まだ図太くあそこに居座っているんだろうか。だとしたらホラーだが、それに加えて、まだ性懲りもなく無抵抗な誰かを虐めているのだとしたら、こう言ってやりたい。


今は自覚症状が無いと思うけど、もうどこにも行き場がないからそこに留まり続けるしかないんだろうけど、あんた達、もうそこの空気を吸いすぎている。今のご時世、一生会社で飼われたいと思っても、会社の方がそうしたいと思わないわよ。近い将来、そこから離れる時に、別の形で、毒に慣れた自分のおぞましさに気づけるといいわね。

まああなたの人生だから好きにすればいいわ。

はっきり言えるのは、私はあなた達みたいな人間には、絶対なりたくない。


私は女王だった。

生物兵器としての毒がばら撒かれた、あの隔離世界で生きるためには、汚染された空間の意識的な封鎖が必要だと、何度目かの昇進を経た朝に思った。会社の中で自分の国を持とうと思った。治外法権が許される独立国。正確にはそれは透明な鎖国になったが、夫の協力もあって実現出来た。最初は小さな国だった。表向きは他と変わらない企画用のマーケチーム。でもその中は、外とは全然違う新世界。

私と似ていて、正確な意思疎通が図れるメンバーだけを集めた。合理主義の、物静かな人間ばかりのチームだった。その中で私は盾になってレベルの低いルールが私の国には蔓延しないように常に気を配った。辛くは無かった。それが権力を持つ人間の義務だと思っていたから。そこに体育会系の気持ちの悪い愛情は無かったと思う。あえて言うなら、意識していたのは、ドライな合理主義だった。それは、私が耐えてきた理不尽をチームのメンバーには味合わせはしないという思いに基づいていた。部活のしごきじゃあるまいし、私が味わった苦しみを彼らに追体験させる必要などないし、そんな義務もない。ただ口で共有すればそれで終わり。私の国ではもっとレベルの高いことで悩むようにさせるだけ。分からない人間や合わない人間は、別の道を提案する形で、切り捨てる。

上に登る度に、動ける範囲が広くなって、それに比例する形で領土も広くなっていった。上に登る度に皆の顔が良く見えるようになり、合点がいった。やっぱり上の連中は分かってやっていたんだと、私はこの時に確信した。

私の国の民は私も含めて、穏やかで、怒ることが無かった。日和見が多い日本人が大多数なのだから、ある意味当然でもあった。国の中では争いも無かった。本格的に争う前に呼んで二択を提示するからだ。このまま残るか、それとも去るか。仕事は元SEの部下に指示して極限まで自動化させていたし、皆の働きに見合った査定をして、頑張りは給与に反映させていた。浮いた時間に無理に部下を引き留めることもしなかった。後は個人のマインドの問題だ。要するに、個人差。ここよりもいい所があるなら勝手に出て行けばいい。いるだけ邪魔だから。

事実ゆりさんが上司で良かったです、と辞める時には後輩の女の子に泣かれた。うれしかったが、その子の性格から、他の先輩や上司にもそう言ってきたんだろうなと思った。その子の名前は、子育てのごたごたで記憶が上塗りされて、もう思い出せない。

私のささやかな王国。皆には誤解されていたかもしれないが、私はあの国に未練は無かったのだ。あの国に住んでいた部下も含めて。だってあの国は私の意地で成り立っていた自己満足の国だったから、私がいなくなったら分裂するか自然消滅するかのどちらかだと思っていた。夫が後を継ぐとも思っていなかった。夫は、率直に言うと、人の上に立つには穏やかすぎる。それに、私が夫の仕事を助けるために国を運営しているのだという気づきも無かったようだった。

でも一応辞める時に、次期国王に一つ年下の男性社員を指名した。元SEの彼だ。黒髪に黒縁眼鏡の、草食系男子を絵に描いたような子。毎日服を選ぶのが面倒なんです、と言っていつもスーツで出勤していた。物静かだけれど地頭が良くて、特に会話の時の言葉の選び方でそれが分かった。良く働いて、空気も読む子だった。でもマーケ用のコードを書きながら、眼鏡の奥ではじっと人間観察をしているような、野心家な所もあった。

好きにしてくれていいから、という感じで国を渡した。全く後悔はしていないが、私の国は今でも会社にあるのだろうか、とたまに思う。あの子も含めて、見せしめに殺されていないだろうか。ひょっとしたら上に寝返ってもっとひどいことになってるんじゃないかと思ったりもする。でもそう思う割に、腹心だった部下達の名前は、全然思い出せないのだ。

ただ国を作ったという事実だけが私の中にはある。だからあの国を渡した時点で私の中では滅んだんだな、と思うことにしている。これはかわいさ余って憎さ百倍というやつなんだろうか。自分の今の日常が余りに幼稚で醜いからか、心の底では滅んでいて欲しいと願うことすらある。要するに自分自身が女王でなくなった国のことなど早く忘れたいのだ。


私の王国はどこにある?

それは私の心の中にある。

私の心の中にあって、私は今でも、その王国を再建したいと思っている。

きっと思い描くだけで、いいと思う。

一度創ったことがあるから、やり方を応用すればいいだけだと思うから。


でも今はもうダメなのだ。もう輪郭を思い描くことすら出来ない。思い描けたとしても、すぐにあの偽天使に、跡形もなく壊される。

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