第6話

「素直じゃ生きられない」6


 俺は佐川さんと車で待っている。

 佐智子と母親は警察署で警察と児童相談所の職員と話をしている。


「真君は将来何になりたいの?」

佐川さんは優しく聞いてきた。

「将来ですか…」

「何かあるでしょ?」

「映画監督になりたかったです」

佐川さんは笑っている。

「今まさに映画の世界に入ってるね!この佐智子ちゃんとのことを台本にして映画撮りなよ!」

「え?」

「なれるよ!絶対にね!応援するからチャレンジしちゃいなよ!それから就職したらいいよ」

「マジっすか?」

「金もそうだけどさ!俺が働いて頑張るからさ!真君は佐智子ちゃんと二人でさ!幸せになりなよ!母ちゃんとの結婚を認めてくれたお礼だよ!息子だしね!」

佐川さんは俺の頭を撫でてくれた。この人見た目怖いけどめっちゃ良い人じゃんかよ。母ちゃんは幸せになれたんだなぁと思った。


 しばらくして佐智子と母親は車に戻ってきた。

「警察と児童相談所が連携して佐智子ちゃんの父親を調べるってさ佐智子ちゃんは弁護士入れて戦うって!ね!毅然とした佐智子ちゃんの対応は格好よかったよ!真はおつむが弱いけど素直で良い男だから頼むね!」

母親は何故か鼻水と涙を大量に流しながらワンワン泣いている。

「お母さん!ありがとうございます!」

後部座席で女二人で抱き合って泣いている。俺は笑いそうになりながら堪えている。

 静かに車を走らせながら佐川さんのサングラスからも涙がこぼれていて歯を食いしばっている。

 なんで皆して泣いているんだと俺だけが笑いを堪えていた。


 それから児童相談所とのやりとりを繰り返して佐智子は保護施設に入るという形を取ったが、実際は保護施設に近いアパートで俺と住むことを承認してくれた。保護責任者は母親と佐川さんがなってくれた。俺は近所の町工場で働き出して佐智子は主婦をしている。


 だが、家に帰ると佐智子の作る料理を食べながら俺の小説のダメだし大会になっている。



第一章 おわり

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