第一章ー3話  転移-1

「それじゃあ、朝の挨拶くらいでもしよ...」


 先生が喋り始めた、その時だった。


『対象者が全員揃いましたので、転送を開始します。』


 突然、頭の中に女の人の声が響いた。

 俺は驚き、周りを見てみると、皆も驚いている様子だった。

 そして、考える暇を与える間も無く、教室に異変が生じたのだ。

 床が、何やら見たことがある模様で、光り始めたのだ。


「おいっ!何だよこれ...⁉︎」


「えっ?何で床が光ってるの⁉︎」


 流石にこの異常現象の連続には、皆はパニックになっている。


「ヤバい...!龍斗ッ!早くこの部屋から出ないと!」


「待てよ翔琉ッ!何でここから出ないとダメなんだよ⁉︎」


 俺はこの光る模様を見て、前世で同じものを見たことに気が付いたのだ。

 急いで逃げるよう、隣にいた龍斗に訴えたが、龍斗は何が何なのか分かってはいない様子だった。

 しかし、この模様は、俺が前世で地球から異世界へと、召喚された時と同じ魔法陣だったのだ。


「クソッ...!」

 

 俺は皆の事を諦め、自分だけでも助かろうと、教室の出入り口扉に向かって走り出した。

 走り出すのと同時に、俺は前世から受け継いだ魔法とスキルを使う。

 魔法は〈身体強化(脚力)〉を使い、スキルは〈重力操作〉を使った。

 この二つを合わせる事により、俺への重力を軽減することで、体が軽くなるため、思いっきり駆け抜ける事ができる。

 俺の座席は窓側なので、廊下に出るには遠回りしないといけないが、これにより皆の頭上を通り越すことが、出来るようになった。


 ごめん皆。俺はあの世界とは縁を切ったんだ...!


 俺は心の中で、みんなに向かって言葉を投げかけた。

 いよいよ、扉に触れそうになった時、後ろへ振り向くと、皆がパニックになっている中で、呆然とした顔でこちらを見ている龍斗と目が合った。


 ッ...!


 その瞬間、今世では初めての友人であり、長い付き合いである龍斗を見捨てようとしている事への悲しみが、膨れ上がった。

 しかし、俺はその感情を押さえ込み、前を向いて扉を開けようとした。

 その時だった...。


 ドンッ!


「うわッ...!」


 俺が扉に触れた瞬間、目に見えない力によって、俺は後方へ吹き飛ばされた。

 そして、俺が床に落ちると同時に、光は一段と眩しく光り、遂には周囲が見えなくなる程になってしまった。


 トプン...


 それと同時に、体の重みが無くなり、水に沈むような感覚に襲われた。

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