第一章-2話  異変

 教室に入ると、俺が家から出るのが遅かったせいか、それなりに人が集まっていた。

 俺は3人で話しながら席に向かう途中、女子達が固まって、颯太に向かって熱い視線を送っている事に気付いた。


「行ってこい...」


 俺は女子達を憐れみながら、立ち止まり、颯太の背中を女子達に向かって押した。

 すると、当然ながら颯太は「えっ?」という顔をこちらに振り向きながらしたが、俺の魂胆を理解したようで、頷きながら、とても性的には受付られない笑みを浮かべて、自分から目標まで足速に歩いて行った。

 その後ろ姿は、モデルの様だった。

 隣を見てみると、龍斗が当然の如く引いていた。


「あんな奴置いて、早く座ろっか。」


 俺はさりげなく龍斗に言うと、先に自分の席に向かって歩いた。


「そうだな...」


 龍斗もその後に続いて歩いた。


* * *


 俺が席に座り、クラスの人も皆集まり、担任の先生が来るのを待っていた。

 だが俺は、ある違和感に気付いていた。

 

「なあ龍斗、先生っていつもならこの時間までには来ているよな?」


 俺は、担任の先生が休みの時でも、代わりの先生がこの時間までには来ていたので、不思議に思い、龍斗に聞いてみた。

 

「ん?ああ、そういえば、そうだったな。

 まぁ大丈夫でしょ。」


「それならいいけど...」


 龍斗はあまり気には留めてなかったので、大丈夫だろうと考えた。

 しかし、俺が前世で得た能力の一つである

〈未来視(的中率100%)〉を、いつもこういう場面で使って、直近の未来を見て、対策をしているのだが、今回に限っては〈未来視〉や他の似たスキルを使おうとしても、使う事ができないからだ。


  — 30分後 —


 結局、30分も経ったが、先生は誰も来ず、

5分前には、1限目の開始のチャイムが鳴ったのだが、担任に続き教科担任の先生まで来ないのだ。

 流石に、クラスの皆も異変に気付き始め、

ざわついている。


「なあ翔琉、やっぱりお前が言ってた通り、何かおかしいよな?」


 さっきまで平然としていた龍斗も、流石にこの異変に気付いたようで、少し心配に思っているようだ。


「やっぱ俺が言ってた通りだろ?俺のす..じゃなくて、直感がそう言ってるんだよ。」


「おいおい、こんな状況で直感って...」


 調子に乗って、スキルがあるという事を言いそうになったが、すぐに言い換えれたので、気付かれずにすんだ。

 その代わり、「直感」と言ったせいで呆られてしまった。

 その時だった...。 


 — ガラガラッ...


「いや〜、ごめんごめん、みんな待たせてごめんね〜。」


 急に教室の扉が開き、大遅刻なのにヘラヘラとしながら、担任の先生が入ってきた。


『『ハァッ⁈』』


 あまりにも空気が読めてない登場だったので、俺や龍斗のみならず、クラスメート全員がそう言ってしまった。


「えっ?いや...そんな風に言わなくても...」


 言うわ‼︎

 先生はこの反応には、流石に寂しそうだったが、これに対して皆は、内心、俺と同じことを思っただろう。

 



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