第一章ー4話  転移-2

「...」


「...ッ!」


 水に沈んだ感覚に浸っていると、急に地球の重力に変わり、周りから声が聞こえてくる事に気が付いた。

 俺は瞑っていた目を開くと、龍斗と他数名の男子が俺の周りを囲んでいる。


「おい翔琉!大丈夫か!」


 龍斗らが、俺の目が開いた事に気づき、切羽詰まった様子で俺に聞いてきた。


「う...うん。大丈夫だけど。何でそんな反応をするんだよ?」


 俺は突然の事だったので、訳がわからず、聞かれた事に答えつつ、龍斗達に何故そんな事を聞くのかを聞いた。

 

「何故ってそりゃ...、皆意識がある中で、お前だけ意識があるようには見えなかったからだよ。」


「気遣ってくれてありがたいけど、俺はただ、少し寝ていただけだよ。」


 どうやら、気遣ってくれたらしいが、俺は寝ていただけだと、苦笑しながら嘘をついた。

 そう言いながら、俺は起き上がり、周りを見渡してみると、本当に俺以外の人は皆、意識があるようだ。


「えっ...?」


 俺は周りを見渡していると、ある事に気がついた。

 何故なら、転移させられた場所が、前世では来たことがない場所で、辺りが白に染まった果てなき空間だったのだ。

 

「えっ?な...なぁ龍斗、ここどこだよ?」


「それは俺も聞きたいんだが?」


 俺は何がなんだか分からなくなり、何も考えずに龍斗に聞いたが、当然のように俺と同意見だった。

 一応この場に、誰が転移させられたのか周りを見渡すと、クラスの皆は全員居り、ついでに先生も居るようだ。


「ここに立ち止まるのもあれだから、少し移動してみる?」


「は?いや、流石にそれは...」


 俺は、来たことのない場所に居るにも関わらず、動揺ではなく、あの先に何があるのか知りたがる好奇心に駆られて、近くに居た男子達にそう提案してみた。

 しかし、彼らは俺みたいに興奮なんて当然しておらず、流石にこの状況下では動揺している。


「そうだぞ翔琉〜。急にこんな意味分からん場所に、放り込まれたんだぞ?少しは冷静になれよ〜。」


 俺達が沈黙を続けていると、後ろから女子を沢山連れた颯太が、俺を制止しに来た。


「冷静だわ!実際に行動するかは、皆で話し合って決めるんだよ!」


「今翔琉の話を聞いている人は皆、それには反対だと考えていると思うよ?」


「ッ...」


 颯太に説明を試みたが、正論で返されてしまい、言葉に詰まってしまった。


「い..いや、だけどさ...」


 その時だった-


『おやおや、私が離れていた間に面白い事が起きていますね。』


 俺が、もう少し粘ろうと口を開いた瞬間、ここに転移する際に頭の中に響いた声が、また頭の中に語りかけてきた。


「うわっ!何だあれ⁉︎」


 他の男子生徒が、何かに気付いたらしく、指を驚いたものに向かって指しながら叫んだ。


「なッ...⁉︎」


 その先には、真っ平の空間にとても大きな神殿が建っており、真ん中にある台座のような場所に、明らかに自分達よりも大きい人が座っていた。


「何だよ..あれ...」


 俺のみならず、クラスメイト全員があれを見て困惑している。


『“あれ”とはひどいですね。まぁそんな事よりもお伝えする事があるので、今そちらに移動しますね。』


 あの謎の存在がそう言い放つと、いつの間にか俺達の目の前に神殿ごと現れた。


「えっ⁈」


 俺は移動してきた存在の姿を見て驚いた。

 何故なら、前世で俺を異世界へと転移させた張本人。

 神だったのだ。


○○○

 お読み下さりありがとうございます。

 執筆者の天昌寺晶です。

 第一章はここで終わりです。

 続きとなる第二章は1月末投稿予定です。

 これからも読んで頂けると幸いです。

 またお会いしましょう!


             第一章end







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