第10話.入学式
入学試験から1ヶ月ほど経ち、今日は覇王学園の入学式である。
『やっと入学式かー。それにしてもほんとに首席になるとはな。』
刹那に学園から送られてきた書類には合格の通知と共に学年順位の通知も同封されていて、その内容は刹那は新入生200人中1位での合格ということだった。
この通知が入っているのは上位20名の生徒までであり、そこまで高くない順位で合格した生徒には同封されていない。
「にしても満点で主席って書いてあったけどあの程度の試験内容で満点取れないやつも結構いるもんだな」
そう刹那は今回の入学試験、いや覇王学園史上初の入学試験で満点を取ったのである。まあそんなこと刹那は梅雨知らずなのだが・・・
「でも、入学式は首席が挨拶しなきゃいけないのかー。めんどくさいから別のやつに回そうとしたら師匠に怒られたしな」
刹那は首席で合格した生徒が入学式で新入生代表として話さなければならないことを知ると、すぐに蒼狐のところへ行き、代打を頼んだのだが、
「これは覇王学園の伝統なのでどうにもならん!」
と一蹴されてしまったのである。
「まあ適当に済ませればいいか」
などと呟きながら入学式の会場に向かっていると、男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんで俺が首席じゃないんだ!」
刹那は気になってそちらに行ってみると蒼狐と身なりのいい服を着たいかにも位が高いですよと言わんばかりの風貌の男が喚いているのが見えた。
刹那は入学式までの時間潰しにそう子たちの話を聞くことにし、【センシス】を唱え、彼らの声が聞こえるようにした。
「学園長!なぜ僕が首席じゃない!そればかりかこの俺が4位だと!?」
「そのままの通りだよ。この学園は実力主義。お主の実力は4番目ということだな」
「そんなわけないだろ!僕が一位に決まっている!」
「いいや、試験は厳正な審査のもと、行われた。これが事実だ」
「だとしてもだ!普通は王族を主席にするのがこの世界の基本だろ?!」
「そんなくだらない基本がある世界に我は住んだ記憶はないな」
「な?!それになんだ!その口の聞き方は!この僕を誰だと思っている!」
「ほう。それはこちらのセリフなのだがな。我は学園長でお主はただの生徒なのだぞ?」
「ただの生徒だと?!僕はこの国の第二王子だぞ!」
「それがどうした?」
「な!お前など父上に頼んで・・・」
「頼んでどうするつもりだ?我よりも弱い奴らが我をどうするのだ?」
蒼狐がそう言った途端に男は黙り込んでしまう。
『なるほどな。よくあるやっかみか。まあめんどくさいからスルーするか。どうなろうと俺なら対処できるし。』
そんなことを考えながら刹那は入学式が行われる会場へと向かった。
「みなのもの。入学おめでとう。」
そんな言葉から始まる蒼狐の言葉から始まり、学園長の言葉が終わり次第、刹那の出番となる。
『マジでめんどくせえ』
そんなことを刹那はしかめっ面をして考えているが、いくらめんどくさいからってこればかりはどうしようもないのだ。
「学園長ありがとうございました。」
司会の教員のそんな言葉が聞こえたので刹那も名前がいつ呼ばれてもいいように準備をする。
「それでは、今年度の入学試験首席、宮本刹那。前へ」
そんなことを司会の教師がいうもんだから周りは僅かに騒がしくなっている。
「宮本刹那って誰だ?」
「今年は王女や王子が多く参加しているはずだぞ?」
「そんな名前聞いたことない」
「王族以外が首席になれるわけない」
などと好き勝手に騒いでいるが、
「静粛に」
という司会の一言で静かになった。
そして刹那は名前を呼ばれたため、壇上に立つ。
『へーこっからはこういう風に見えてるんだな』
そんなくだらないことを刹那は考えていた。
「では、宮本刹那。発言をどうぞ」
そんな司会の振りに対し、刹那は
『は?あいつ雑じゃね?というか何を話せばいいのかわからないのだが』
そう思いながら、司会の方を見て、刹那は納得した。
『なるほど。あいつのあの苦々しい顔は俺の主席に納得がいってないってことね』
そう司会の教員は刹那の主席入学に反対していた教員だった。
「宮本刹那。早くしなさい」
刹那が思考を巡らせていると急かす声が聞こえたのでとりあえず喋り出す。
「えー今年度入学試験を満点で合格した宮本刹那だ。」
この一言でまたも会場はざわつくが、それを司会が収める。その際、司会は刹那に強烈な視線を向けてきたが、刹那は無視った。
「試験の結果が本当なのか確かめたいのなら、俺に決闘でも挑んでくるといい。俺はいつでも相手をしてやる。」
そこまでいうと先程、蒼狐に抗議していたこの国の第二王子が声を荒げてきた。
「なんだ!その話し方は!平民風情が王族に対し、してやるだと?無礼だと思わないのか!?」
そんなことを言っているが、司会は止める様子がない。王族なので逆らえないのだろう。
『何が実力主義の学園だ。やっぱり権力には弱いんじゃねえか』
と考えつつ刹那はその男に
「ていうかお前誰だ?」
とこの場にいる誰もが凍りついてしまうような一言を放った。
「な!?僕はこの国の第二王子、スザクだぞ!?なぜ知らない」
「へー」
「その舐めた態度をやめろと言っている!」
そのスザクの一言に対し、刹那はため息を吐き、
「なぜ?」
と返した。これにはスザクも怒り浸透で
「貴様、厳罰に課されたいのか?!」
その態度に刹那は若干イラつきを覚え始め、スザクに対し、喧嘩を売ることにしたのだった。
「お前にそんな権利あると思ってんの?」
「僕のことをお前と呼ぶな!それに父上に頼めばお前を消すことができる!」
「へーこの学園は実力主義だから無駄だぞ?今お前は俺より実力が劣っているからお前は俺に対する発言権はない」
「そんなわけないだろう。それは王族のみのはずだ!」
「そうなのかい?学園長?」
とここまで静観していた学園長に話を向けてみると
「いいや、そんな決まりはないな。全ての学生が実力主義で測られる」
「だってよ」
「は?!いい加減にしろ!王族を敬うのは民の義務なんだ!」
もう言っていることがよくわからなくなってきている。
「俺はお前みたいなゴミを敬う気はない」
ここであえて刹那は喧嘩をふっかけた。
そしてこの発言によりさらに場に緊張が訪れる。入学式に参加している学生や教員までもその緊張感で動けないでいる。
「謝るなら今のうちだぞ?貴様の刑を少しは軽くしてやる。」
「話にならないな」
そう言い、刹那はスザクから顔を背けた。
その反応にスザクも限界を迎えたようで魔法を氷系の中級魔法を唱えた。
「んな?!こんなに人がいる場所で中級魔法を放つ気か?!」
と教員たちが焦っているが、標的の刹那は
「ゼロ」
とだけ呟いた。するとその途端スザクの元に集まっていた魔力が完全に消え去った。
「んな?!何が起こった?!」
当然、スザクは動揺しており、蒼狐と刹那以外のこの場にいるものたちは何が起こったのかすら理解していない。そんな状況で刹那はいつも通り飄々と
「あの程度の魔法で俺を傷つけることはできないが、めんどくさいことになりそうだから消させてもらった。」
とさも当然のように言った。
「魔法を消すだと?!そんなこと不可能だ?!出鱈目を言うな!」
そう言いながらスザクはもう一度魔法を発動させようとするが、今度は魔力を集めることすらできない。
「なぜだ?!なぜ発動できない?!」
当然、スザクはさらに動揺している。
「当たり前だ。お前の魔力量を今日1日0に固定させてもらった。つまりお前は今日魔法を使えない」
この発言にはこの場にいる誰もが衝撃を受ける。そんな魔法聞いたことないしもしそんな魔法があれば勝ち目など到底ないからだ。
「ふざけるな!どういう仕掛けか知らんがそんなことできるわけない!」
「はあ。。馬鹿はコレだから困る。」
「何?!」
「目の前で事実として起こってるんだから認めろよ」
「そのような魔法があるのだとしたらなぜ貴様は戦場に立たない?!その力があれば、我が国は必ず勝てるのだぞ?!」
「面倒だから」
「は?」
「だから面倒。だって俺国に興味ないし」
とさらって言ってのける刹那に会場の皆は憤りを覚える。
「お前が戦場にいれば死者が多く出ることもなかった!」
「私の父さんだって!」
などなど刹那へ向けてのヤジが飛び交う。
「だからそれは俺に関係あるのか?どこで誰が死のうがそれはそいつが弱いせいだ。他人のせいにするなよ。」
そう言ってサラッとヤジを流し切った。
「さてスザク、まだ言いたいことはあるか?」
「貴様を軍法会議にかけ、処刑してやる。」
スザクはそう憎しみがこもった目で言ったのだった。
「そうか俺のところに来たやつは全員皆殺しにするから覚悟しておけと伝えておいてくれ」
そう言い刹那は壇上から降りたのだった。色々な視線に見守られながら。
場は静まり返っているが、蒼狐が咳払いをすると司会が
「それでは入学式を以上で終わります。このあとは各クラスに移動をしてください」
そう締めて、波乱の入学式は幕を閉じたのだった
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