第7話.模擬戦

先程の試験で第一試験会場に大きなクレーターができてしまったため、試験官たちは試験をどう続行するか話し合っている。そして、そんなクレーターを作った本人は

『早く試験終わんねーかな〜』

と他人事のように考えていた。その隣にはフレイアが何か言いたげな目で刹那を見ており、周りの受験生も畏怖の目を向けていると言うカオスな状況になっていた。

しばらく待っていると試験官が、

「今修繕する魔法を使えるものを呼んでくるから待っていてくれ」

と試験場を出て行こうとした。

「いや、その必要はないですよ」

そんな試験官に対し、刹那は声をかけた。

「だが、このままだと試験続行できないぞ?」

「ええ、そうですね。俺が直すので大丈夫です」

「は?君が?あれほどの高威力の魔法を撃てるのに攻撃魔法以外も使えるのか?」

「ええ、全然できます」

そう言いながら刹那はクレーターの前まで行くと。

『【レディトス】』

と心の中で唱えた。

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レディトス

刹那のオリジナル魔法。物質の時間を巻き戻すことができる。ただし魔力関連には一切干渉できない。

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するとみるみる試験場が修復され、さっきの破損は一切なかったかのように戻ってしまった。

「これでいいですか?」

と刹那が涼しい顔で聞くと

「あ、ああ。完璧だが。こんなに完璧な修復魔法は見たことないが、これは?」

「オリジナル魔法です」

そう答えると試験官も押し黙ってしまったため、考えるのを放棄したようだ。

「さっさと次の試験に行きませんか?」

「あ、ああ。そうさせてもらうよ」

試験官はそういうともう諦めたような顔で試験を再開することにした。


刹那が戻るとまたも受験生たちやフレイアが驚いている。

『今度は俺から声をかけるか』

「フレイア、どうしたんだ?」

その言葉にはっとしたフレイアは刹那に対し、

「どうしたじゃないわよ。何あの魔法!王国の魔道士でもひび割れとかは残るのに!」

王国の魔導士とは世界から集めた有数の技術を持つものたちのことだ。それなのに刹那は

「じゃあそいつらの腕が悪いんだろ」

そう返した。

それを盗み聞きしていた受験生たちは自分たちが将来なるかもしれない職業を馬鹿にされて憤っているが、さすが覇王学園の受験者といったところかこちらとの戦力差を理解しているため、何かを言ってくることはなかった。

そんな中、フレイアは、

「そう言うこと言ってると夜道で刺されるわよ」

といい、こちらへ質問するのを諦めたようだ。


「それでは実技試験最後の模擬戦を開始する!」

フレイアとの会話を終わらせ、待機していると、試験官の合図が来た。

「そして、今回は模擬戦のために特別なお方を呼んでいる。皆失礼がないように!」

そんな合図とともに、試験場の扉が開かれ、白い剣を持った男性が入ってきた。

その途端受験生たちがざわつく。

「な、なああれって」

「あ、ああ」

「や、やっぱりそうだよな」

などと話している。

『なるほど。この国最強の男で王の側近ヒナギクか』

そう試験会場に現れたのはまさかのこの国で最強と謳われる男だった。


『おそらく師匠が俺の相手を他の試験官にさせると退職しかねないから呼んだんだろうな』

刹那のこの予想通りで、ヒナギクは蒼狐によって模擬戦の相手として呼ばれている。

そんなざわついた環境の中、試験官が

「静かにするように!今から君たちには先程の4つから5つの列に分かれてもらう。そして、先程の試験官たち、またはヒナギク様と模擬戦を行なってもらう。結果はどうなったとしても、見ているのはないようなので、全力でやるように!」

そんな掛け声の後に今まで黙っていたヒナギクが


「私も全力で行くので覚悟するように」

と脅すように言った。その言葉を革切りにして、受験生たちはヒナギク以外の試験官の元へと行った。刹那を除いて。

「ほう、君は相手が私でいいのかい?」

そんな刹那にヒナギクが声をかけると

「ええ、少し試したいことがありますので」

といい黙り込んだ。

『俺の方が強いと思うけど、国で最強とやらがどの程度の実力なのか見とかないとな。』

そんなことを刹那は考えていた。ヒナギクは刹那に対し、自分の力を過信してるタイプだな。と心の中で思ったのだが、数分後にこの予想は覆されることになる。

そんなやりとりをフレイアや他の受験生が遠くから見ていた。


皆が別れ終わったのを見ると、試験官は

「それではただいまより試験の説明を行う。あちらに置いてある模擬戦用の木で作られた武器を使い、試験官と戦ってもらう。魔法の使用も自由だ。基本的にはこの単純なルールだが、何か質問がある者はいるか?」

その言葉に反応する受験生はいない。それを確認すると、

「それでは模擬戦を開始する。それぞれ武器を持ったら試験官の前に立つように」

その言葉とともに受験生たちは武器を取りに行った。

そして刹那は木剣を手にヒナギクの前まで戻った。

「それでは各自1人ずつ名前を呼ばれたものから試験を開始する!」

そう試験官からアイズがあるとヒナギクは

「では君の名前は何かな?」

と質問をしてきた。

それに刹那は

「宮本刹那と申します」

と答える。


するとヒナギクは

「それでは宮本刹那、どこからでもかかってくるといい」

と刹那に対して言い放った。

『まずは様子見としてそれなりの速度で切り込んでみるか』

そう考えるが早いか、刹那はほとんど一瞬にしてヒナギクの前まで距離を詰め、木剣をヒナギクに当てるため振った。

ヒナギクは一瞬驚いたものの、刹那の攻撃を両腕で持った木剣で受け止める。しかし、刹那の一撃は片腕なのに重すぎたのか苦悶の表情を浮かべ、なんとか攻撃を斜めにいなした。


『国で一番強いやつってこの程度なの?』

と刹那が考えていると、

「いや、なかなかやるな。あの速度で切り込んでいるのに、あそこまで重い剣を触れるとは」

「そりゃどうも」

「ではこちらも本気で行かせてもらうぞ!」

その言葉と同時にさっきの刹那以上の速度で刹那に切り込む。その攻撃を刹那は難なく片腕で持った剣で受け止め、いなし、

『こいつと戦っても面白くない』

と思ったと同時にヒナギクの横腹に自分の剣で斬りつけた。

木剣なので体が真っ二つになることはないが、すごい勢いで吹っ飛んでいってしまった。

「あ?この程度であんな飛ぶの?弱くね?」

そんな誰にも届かない呟きだけが試験会場に残ったのだった。

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