第33話 聖乳剣

『恥ずかしいけど、あたし、翔にひどいことばかりしてたから……あたしのおっぱいで喜んでくれるなら………………好きにしていいよ』


 おっぱいの声が僕を止める。


 おっぱいに双空の本音がダダ漏れする。

 なら、今の声は、どの双空の本音なのだろうか?


 今の彼女を支配している痴女双空?

 それとも、普段の塩双空?

 純粋に僕を思ってくれている点から察して、塩対応の本音に近い気もする。


 ただでさえ、二重人格的な状態。そこに、おっぱいの本音も加わって、頭が混乱する。


 それに、本人が許可しているとはいえ、恥ずかしがっている子に手を出すのはためらわれる。

 しばらく固まっていると。


「翔、焦らしプレイなの? それとも、勇気がないの?」


 痴女双空に思いっきり笑われた。


「うるさい。おまえだって、ホントは恥ずかしがってるくせに」

「へっ? なに言ってんの⁉ あたしはねえ、翔とエッチするためだけに生まれてきたんだよ。ごちそうを目の前にして、我慢できるかっての」


 痴女双空はさも当然と言わんばかりに、グイグイ来る。


『そなた、なにをためらっておる。早う乳を揉みしだけ!』


 さらに、乳神が脳に直接呼びかけてくる。


『そなた、双空嬢が好きで、救いたいんじゃろ』


(そうだったな)


 覚悟を決める。


「痴女双空は変態だからな。焦らしプレイは喜ぶと思って」

「あたし、もう……らめぇぇぇっっ! 翔の……ほしいよぉぉぉぉぉっっ❤❤❤❤❤❤」

「……」

「どう? 興奮した?」


 メチャクチャ気分が高まったので、勢いを利用し。

 下からすくい上げるようにして。


 ――ふにゅ。


 手のひらに豊かな膨らみを感じる。

 ブラジャー越しに触っているので、全重力が乗っているわけではないけれど、それでも質感はたっぷり。


 自分の意思で、おっぱいに触れる日が来るとは。


「うぉぉっっ! 柔らけぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 おっぱい童貞を卒業した喜び。


『おい、なにをしておる? ただ触っただけでは意味がないのじゃ。なんのために、我自らテクを伝授したと思うておる』


 またしても、乳神に叱咤された。ロリ巨乳に怒られるプレイも乙です。


「翔の指、太くて、温かくて…………きもちいいにょ。もっとほしい」


 痴女双空は琥珀色の瞳をとろけさせる。

 完全にねだっている。防御に回ったとたんに、落ちるとはチョロい。


「許可は下りたし、全力で気持ちよくさせるからな」

「うん、ずっと我慢したんだから、気持ちよくさせてね❤」

「……聖乳剣一の型、双山脈動そうざんみゃくどう


 僕は下乳を持ったまま、円を描く。

 双丘の頂は上下左右に位置を変える。さながら、山が動いているかのよう。

 ゆえに、双山脈動と呼ぶ。


 ただ胸を揉んでいるだけ。そう思うかもしれない。

 だが、僕の指には、神の加護がかけられている。

 乳神御自ら伝授遊ばされた、神の指。

 おっぱいを支配する力を得たのだ。

 その破壊力たるや。


「ふぁぁんんんんんんんっっ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤」


 砂糖よりも甘い嬌声が、狭い蔵に木霊する。


 痴女双空の瞳はどこか遠いところを見ていて、現実を認識していないようだった。

 やがて、痴女双空は腰砕けになり、床に座り込む。


 僕は彼女の後ろに回り込むと、後ろから揉みしだく。


「聖乳剣二の型、聖乳爆裂波せいにゅうばくれつは!」

「はっ! んくぅぅ…………しゅごい……しょ、しょこぉぉっっっっっっ‼」


 痴女双空は息を荒くして、愉悦に満ちた声を発する。


「もっと……もっと、ちょうだい」

「我慢しないで、イっていいんだぞ」

「もう、らめぇ……イクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ひときわ激しい嬌声とともに、痴女双空の首がカクッとする。

 ビクンビクンと体が震えていた。


「イったか」


 僕は彼女の胸から手を離すと、合掌をする。


「痴女双空16歳。乳イキで逝くとは、見事な最後であった」


 神妙な気分でいたら。


「翔、ホントにエッチなんだからぁ」


 聞き覚えのある声がした。


「そ、双空なのか?」

「当たり前でしょ」


 ぶっきらぼうな言い方が愛おしくて。

 後ろから抱きしめる。


「ちょっと、なにしてんの?」

「再会のハグだよ」

「ハグって……さっきまで胸を揉んでたくせに」

「そ、それは事情があってだな」


 乳神に授けられた秘策。それは胸を揉むこと。

 乳神の加護を得た僕が胸を揉めば、双空を昇天させられる。意識を失うほどの絶頂に達すれば、痴女双空の支配力が弱まる。

 あわよくば、塩双空に体の制御が戻るかもしれない。

 そうロリ巨乳は言っていた。


 乳神が立てた仮説に、僕は乗ったわけだ。


「じ、事情って言うけど、情事がしたかったんでしょ?」

「つうか、おまえもノリノリだったんだからな」

「べ、べつに」


 双空は目を泳がせると。


『だって、せっかく勝負下着を選んだんだもん。翔に愛してほしかったんだからね』


 塩対応の裏で、本音をダダ漏れさせていた。


 彼女とは10年以上の付き合いになる。

 そのうちの1ヶ月半だけ、おっぱいの声が聞こえていたにすぎない。

 なのに、妙に懐かしくて、おぱ声の存在が当たり前のように思えてくる。


 泣きそうになったので、誤魔化してみる。


「僕の超絶テクでイったのは、誰だっけ?」

「変態、もう知らない」


 双空が僕の胸をペチペチ叩いてくる。

 力も弱いので、痛いどころか気持ちいい。


「っていうか、おまえ、さっきまでの記憶あったのか?」

「な、ないもん」


 キョロキョロしている。明らかにウソだ。

 事後の雰囲気だが、まだ終わってない。むしろ、前戯でイカれてしまったし。


 冗談はさておき。


 塩双空が戻ってきたからといって、ハッピーエンドではない。

 痴女双空の存在を否定して。

 今までみたいに本音を抑圧していたら……?


 だから。


「双空、おまえ、僕のことが好きで、エッチをしたいんだろ?」


 僕は真正面から彼女の心に問いかけた。

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