85限目 亜理紗の勉強②

 リョウは立ち上がると腰をおさえて延びた。


「ふぅ、ローテーブルで勉強するものじゃありませんね」


(それは同感だ)


 レイラは腰を支えながらがると座りなおした。亜理紗だけは平気な顔をしていた。


「では、頂きましょうか。亜理紗も好きな物をどうぞ」


 レイラがそう言うと、亜理紗は、「頂きます」と言って食べ始めた。それを確認してからリョウとレイラは挨拶をして食事に手をつけた。


「レイラ様たちはいつもこの部屋を使っているのですか?」

「頻繁には使用しませんが、いつでも使える状況にはなっていますわ」

「そう」


 亜理紗は短く返事をすると、サンドウィッチを一口食べた。

 リョウはにこりと笑い亜理紗をみた。


「勉強でしたら、いつでも見ますよ」

「……え?」


 亜理紗はまた紅茶を口にいれると、目の前の2人を睨みつけた。

 リョウとレイラがお顔を見合わせて首を傾げた。


「どうして、亜理紗に勉強を教えてくれるのですか?」

「亜理紗の成績をあげる為ですわ」

「……なんでですの」


 亜理紗は落ち込み小さな声で言った。レイラは微笑み優しさ表情で亜理紗を見ていた。


「私たちは主従関係にありますもの」

「亜理紗は目障りじゃないのですか?」

「ご自分の事、目障りだと思っていらしゃるのですの?」


 レイラが首を曲げると、亜理紗は下を向いてモジモジした。


「そうですわ。だって査問会に掛けられたのですよ。亜理紗は査問会に初めて参加しましたの。つまり3年間はなかったということ……邪魔者じゃない」


 亜理紗は泣きそうな声を出すと、レイラは自分の前で手を合わせて困った顔をした。


「問題とされていますのは、亜理紗の存在ではなく行(おこな)いですわよ」

「……」

「亜理紗は何がしたのですの?」

「何がって……」


 レイラの言葉に亜理紗は目を泳がせてた。

 リョウはそんな2人を横目に、紅茶を飲みサンドウィッチを食べていた。


「では、言い方を変えますわね。まず、なぜ中庭を占拠したのです?」

「占拠なんて……。亜理紗は皆に使うななんて言ってないですわ」


(桜花会の人間がいれば、黒服は遠慮すんだよ。それはわかんねぇのか)


「そうですの。では、中庭にいたのはなぜです?」

「それは……、亜理紗が扇子を持っている事を皆に知ってもらうためですわ」

「そうですね。知ってもらってどうするのですか?」

「知ってもらえば、亜理紗が桜花会で力を持っているってわかるから、亜理紗を馬鹿にする人間がいなくなると思ったのですが……」


(ようは、認めてもらいたいんだよな)


 レイラは、亜理紗の普段の態度が亜理紗の母に似ていると感じた。


(あのお母さんに常に、せめられてたんだろうな)


「それでしたら、私(わたくし)と一緒にいれば問題ないですわ」

「え……」


 レイラの言葉に亜理紗は怪訝な顔をした。


「ですから、私(わたくし)が亜理紗を誰にも馬鹿にはさせませんわ。勉強も教えますので次回のテストは上位に入れますわよ」

「……」

「そうそう、以前の特待Aとの関係は一部拝見したしましたが、現在の方はどうですの?」

「……勉強、教えてくれますが……」


 亜理紗が言いづらそうに口の中でモゴモゴしてはっきりとしない。レイラはそれに軽く頷て手を自分の顎に持ってきた。


「わからないけど、プライドが邪魔して質問できないとかですか? それで、すでについていけなくなってるとかですか?」

「……」


 図星の様で、頭を下げて視線をそらした。


(あー、亜理紗の実力を確認せずに上辺だけ適当に教えているのか)


「正解ですのね。では全て私(わたくし)に任せてください」

「……でも、テストで満点じゃないですわよね」


 前回のテストが満点ではないことを言われてレイラは苦笑いをした。


「ご存知と思いますが、学園のテストで満点は相当難しいのですよ。1割ほど授業で説明してない応用問題が出されますの。それにお兄様もお手伝いしてくれますわ」


 ずっと、黙っていたリョウの方を見ると彼は仕方なく頷いた。


「私もお手伝いしますよ」


 亜理紗はリョウとレイラのことをじっと見た。


「……」

「亜理紗、私(わたくし)とお兄様と仲良くなり学力も上がったら亜理紗のお母様はどう思うのでしょうか。それに私(わたくし)は学園でも人気ありますのよ。その私の右腕となれば……」


 その瞬間、亜理紗は目を輝かせた。


「そうですわね。流石、レイラ様です」


(このスタンスの方が亜理紗は素直だな)


「では、毎日放課後は桜花会室で勉強しますわ。都合が悪い日は言いなさい」

「はい」


 亜理紗の返事にレイラは満足そうに頷いた。そして、リョウの方を見ると、彼は困ったような顔して頬をかいた。


「お手伝いは時間がある時ですよ」

「ありがとうございます」

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