77限目 桜花会の黒歴史①

 憲貞の“中村幸弘”という言葉にレイラは目を大きくした。しかし、“知らない”と首を横に振った。


(ヤツとの関係を知られるのは面倒だ)


 憲貞はレイラの返答に頷いてから説明を始めた。


「そうか。中村製薬会社の嫡男であり先程いた中村彩花の兄である。兄が桜花会であるにも関わら妹が特待をとっている理由については様々な噂があるが真相はわからない」

「妹と仲が良いなら知っているじゃないの?」

「いいえ」


 香織に質問にレイラは即座に否定した。更に聞こうとしたが香織を憲貞がとめたため、口を閉じた。


「香織の言う事は気にしなくて良い。彼らの家庭事情なんてどうでもいい話だ。先に進める」


 憲貞に睨まれて香織は悪びれる事なく「はーい」と軽く返事をすると黙った。


「彼は桜花会の会長だった。歴代で最も不名誉な会長だと言われている。当時は生徒会と言う組織はなかった」

「つまり、彼に誰も逆らえなかったと言う事ですか?」

「そうだ。もともと、桜華学園は生徒の主体性を重んじるから行事だけではなく規則に至るまで桜花会が中心となり行なっていた。だから、今よりも桜花会の権力は強かった」

「それは大変ですね。今は行事の運営は全て生徒会ですわよね。規則も桜花会が提案しても生徒会の賛成を得ないといけませんわ」

「そうなったのがこの時だ」


 憲貞は悲しい顔をしてゆっくりと言った。それから、憲貞は中村幸宏が会長であった時の彼の行動を説明した。

 内容は、意見が合わない人間に対して威圧的な態度をとる事から始まり、桜花会の人間を退会させたり、更には退学に追い込んだ生徒もいた。


 レイラはそれを聞いて顔を青くした。


「それでは生徒がいなくなってしまいますわよね」

「そうだね。だから最終的には学園側が動いた。その前に不満を持った学生が組織を作った。その学生が特待生だった。当時から特待制度があり、待遇も今とそれほど変わらず多額の支援金が出ていた。だから、彼らは桜花会長の横暴で退学になりたくなかった」

「なるほど、それが生徒会も元となったのですわね。それで、当時の中村会長が不信任案を出されたのですの」

「そうだ。当時はそういった制度はなかったのだが……全生徒5割以上の署名を集め学園側に提出した。そこで特待生による生徒会ができて、桜花会から権限を奪ったのだがこのままでは桜花会の存在があやうくなってしまうから……」


 そこまでで、憲貞は言葉を止めてニヤリと笑い香織の方を見た。彼女はため息をついた。


「そこまで話したなら、全て自分で話せばいいじゃないか」

「事実だが言いづらい」

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