第21話 窮地

「入っていったわ……やっぱりここが湖賊団のアジト……」


 何の手がかりもなく、ロンドを攫った湖賊たちを探しにいった、レンティではあるが、偶然にも湖賊と思わしき男を発見していた。


 彼女は身のこなしは素早い。

 その上、小柄なので、物陰に隠れたりしやすい体格である。


 こそこそと湖賊たちの後をつけて、アジトのある場所までたどり着くことに成功した。


 二人の男がアジトに入っていく。


 レンティも周囲の様子を窺いながら、アジトへと潜入した。


 すると、


「おい、こいつどうする?」

「そこそこ筋力あるし、五体も満足。殺すのは勿体無いし、奴隷商にでも売るかぁ」


 湖賊たちの話し声が聞こえてきた。


「っ!!」


 レンティは息を呑んだ。


 彼の父、ロンドが鎖で両手両足を縛られた上、鉄格子に入れられている。


 ロンドは何度か殴られたのか、体にあざをたくさんつけている。


 今では逆らう気力もないようで、俯いていた。


「父さん!!」


 レンティはロンドの様子に我慢できず、叫んでしまった。


 湖賊達はレンティの存在に気づく。


「なんだぁ?」

「こいつの子供か?」

「付けられやがったな。まあ、でも今回は結果オーライだ」


 湖族達は、特に慌てる様子はなく、立ち上がりレンティに近づいていくる。


「お、お前ら!! 父さんを解放しろ!!」

「はははは、威勢の良い姉ちゃんだな」


 湖賊は必死な様子のレンティを見て、笑いを上げた。


「レ、レンティ!! なぜ来た!!」


 先ほどまで俯いていたロンドは顔をあげ、目を丸くして叫ぶ。


「なあ、こいつ売れると思うか?」

「んー。ちょっと顔がガキくせーけど、美人の部類だし胸がでかいし、案外高値で売れんじゃねーの。まあ、俺の趣味じゃないがね」

「お、俺はあんな感じの女めっちゃ好みだ。な、なあ味見してもいいか?」

「おいおい、子供趣味かお前はぁ」

「ははははは」


 湖賊たちは、下品なことを言い合って笑う。


「レンティ! 逃げろ!! 俺のことは放っておけ!!」


 ロンドは必死に叫ぶが、レンティはその言葉を聞き入れることはできなかった。


 レンティは服の下にナイフを隠し持っていた。


 それを抜き、湖賊に斬りかかる。


 レンティは、それなりに訓練を組んでいる女だったので、決して弱くはない。


 男の首の心臓を突き刺すため、素早く懐に潜り込む。


 湖賊の男は油断しており、懐に入り込まれてしまった。

 あっさりと心臓を刺される。


「な……」


 驚愕に目を見開き、口から血を噴き出して倒れる。


「お、おいやられたのか」

「あのアマ……」


 笑っていた湖賊達は、仲間を殺され怒りの形相を浮かべ出す。


「おい、売るのはなしだ。犯しまくって殺してやる」

「だな」


 湖賊は、それぞれ武器を構えて、レンティに向かう。


 レンティはナイフを構えて、相手を突き殺すタイミングを見計らうが、相手が多数となると、一度成功しても、ほかの湖賊からやられてしまう。


 ジリジリと後退するしかなくなる。


 湖賊の男が矢を放ち、それがレンティの肩に命中する。


 痛みで思わずナイフを落とした。


 その隙を突き、湖賊の男達がレンティを捕らえる。


「よし、捕まえた!!」

「仲間を殺したのをたっぷり後悔させたやるぜ!!」


 湖賊たちは、レンティの服を脱がそうとする。


「やめろ!! やめろぉぉぉ!!」


 ロンドの悲痛な叫び声が響く。


 レンティはもがいて逃れようとするが、強い力で腕や足を掴まれて、振り解くことはできない。


(誰か……誰か助けて……!)


 そう心の中で叫んだ瞬間、


「そこまでだ!!」


 アジトに男の叫び声が響いた。



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