第22話 戦闘

 兵を引き連れてアジトに突入したら、凄い場面だった。


 レンティが湖賊共に、今にも犯されそうになっていた。


 一人でアジトを探しに行ったきり、戻って来ないとは聞いていたので、どうしているか心配だったが、彼女もアジトの場所を突き止めていたのか。


 とにかく助けなくては。


「な、なんだこいつら?」

「武装してやがる」

「僕はハクシュトアの領主だ! 今すぐその子を解放しろ!」

「領主? ハクシュトアの?」


 僕たちの登場に少しだけビビっていた湖賊達だが、ハクシュトアの領主と聞くと、大声で笑い始めた。


「あの人がいねぇクソ領地の領主か! どうせ数は大した事ねぇ! ビビるこたねぇぞ!」

「ハハハ! 来たこと後悔させてやる!」


 ハクシュトアの領主と分かると、馬鹿にし始めた。どうも舐めてるみたいだな。


 ファリアナに兵を率いて、突撃して貰おうと思ったら、気付いたら居なかった。


 いつのまのか、レンティを捕らえている湖賊たちに接近している。


 そして、瞬く間に剣を振り、数秒のうちに、レンティを捕らえていた湖賊達を斬り殺した。血飛沫が上がる。


「逃げなさい」


 ファリアナはそう言った。


 レンティは一瞬惚けた表情になるが、すぐに我に返って立ち上がり、走り出した。


 僕はファリアナが突撃したのを見て、真横にいたルートに指示を送る。


「ハンドレット・アイスアローを使ってください」


 中級の氷属性の魔法だ。


 百本の氷の矢を作成し、それを使用者の狙った場所に打ち込める魔法である。中級魔法に分類される。

 矢は一本一本はさほど強くはないが、百本作れるので、戦闘では役に立つ。


「分かった。ハンドレット・アイスアロー」


 ルートは僕の指示通り魔法を使用した。


 彼の周囲に氷の矢が百本出現する。


「ル、ルート!? お前それ!?」

「魔法!?」


 彼に友達である、バイアーやアンドリューが驚く。


「魔法使えるようになったって言っただろ」

「本当のことだと思うわけねぇーだろ!?」

「マ、マジだったんかよ。おいおいヤベェーな」


 今、話している場合じゃない。


 敵は今ファリアナの攻撃で、混乱している。


 今のうちに氷の矢を次々に撃ち込めば、さらに混乱は深まるだろう。


 寄せ集めの湖賊だと、もはや統率は取れなくなる。


 そこで一気に攻撃を仕掛ければ、勝てるはず。


「こ、これどうすりゃあいいんだ?」

「撃つ場所を決めて、そこに矢を放つよう念じてください!」

「こ、こうか?」


 ルートは矢を放つよう念じたようで、一本放たれた。


 ハズレてしまったが、いきなりの魔法攻撃に湖賊たちが騒ぎ始める。


「ま、魔法だと!?」

「馬鹿な! 魔法を使う奴は、王国の精鋭部隊にしかいねぇーって話だぞ!?」


 ルートは続けて放つ。


 飲み込みがいいのか、数回放つと、連射出来るようになっていた。


 流石に何発も放つと当たる者も出てくる。


 氷の矢が、湖賊の男に足に直撃する。


 すると、みるみると体が凍り始め、矢が当たった男は完全に凍りつき、動かなくなった。


 氷の矢は、当たりさえすれば、当たったものを氷漬けにするという、効果があった。


 掠るくらいなら大丈夫だが、刺さったらその時点で終わりである。


 あまりの光景に、逃げ出す湖賊が現れた。


「逃したらまた悪さをするでしょう。仕留めてください」


 僕も指示に従い、兵士たちが動き出す。

 とても素早い動きだった。

 身体能力を強化しているので、当然である。


 ルートの氷の矢が切れた。

 実際に当たったのは数十人だったが、恐怖で逃げ出した者が多かったので、効果はそれ以上だった。


 今度は普通の矢を撃たせる。


 アンドリューを始め、矢が達人級に上手いものが、十人いる。


 全く外さず、確実に仕留めていった。


 破れかぶれになった数人の湖賊たちが、突撃してくる。


 それをファナリアやバイアーなどの、接近戦が得意な者が、斬り殺していく。


「降参だぁー」

「殺さないでくれー」


 勝てないと悟った湖賊が、白旗を挙げた。


 僕たちの勝利が決定した。

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