第20話 湖賊退治
「父さんが湖賊に!?」
レンティは、本当か確かめるため、険しい表情を浮かべて聞き返した。
「あ、ああ……ロンドと一緒に漁に出たんだが……運悪く湖族に見つかっちまい……奴だけが捕まっちまった……」
「そ、そんな……」
すぐには信じられないことだったが、男の表情が真実であることを物語っていた。
「どこで捕まったの!?」
「湖の東側だ。まあ、連中はすでにアジトに戻っているだろうがな」
ロンドはもうすでに殺されたのかもしれない。
もしくは今まさに殺されそうになっている可能性も。
そう考えるとレンティはいてもたってもいられなくなった。
レンティは意を決して、家を飛び出した。
「おいレンティ待て!」
男は止めようとするが、小柄ですばしっこいレンティは、するりと男の手を回避した。
そして、湖賊のアジトに心当たりがあるわけでもないのに、湖に向かって走り出した。
○
「何だって!?」
僕は領民から報告を受けて驚いた。
湖族にロンドが攫われ、さらに娘のレンティが救助のため飛び出していったらしい。
湖賊退治を考えている矢先の事件だ。
まだきちんと討伐隊の編成はできてはいない。
戦闘系スキルを極めた領民たちは、成長魔法で増やしてはいるが、戦いには連携など実力以外の者も重要だ。
その辺、ファリアナにお願いしていたのだが、まだ十分ではないだろう。
でもこうなったら躊躇している場合じゃない。
湖賊を討伐して、ロンドを救出しなくては。助けに行ったレンティが、もし捕まったのなら彼女も一緒に救出しないといけない。
とにかく僕は急いでファリアナを呼び寄せた。
「それは緊急事態ですね。今すぐ戦えるものを集めて、救助に向かいましょう」
あくまで冷静な表情を変えずに、ファリアナはそう言った。
こういう時は、いつも以上に心強く感じる。
僕は戦闘力を上げた領民たちに、集まるようお願いした。
ロンドやレンティの危機と聞いて、黙っている者はおらず、皆が集まってきた。
「ロンドさんが攫われたってのは本当か?」
ルートがそういった。
時間帯的に、暗くなり始めた頃であるので、酒場として儲け時ではあるが、話を聞いて来てくれた。
「本当です。至急助けに行きたいのですが……ロンドさんはアジトに攫われた可能性が高く、そのアジトの場所が不明です」
「なるほど……アジトを探さないといけないのか……まあ、湖族のアジトは湖の近くにあるだろうがな……」
「船の上で生活しているということはありませんか?」
「船の上で過ごす期間は長いだろうが、陸にも拠点は間違いなくある」
湖賊に僕より詳しいルートはそう説明した。
「俺が探してくる」
そう言ったのは、ハクシュトアの若者イギールである。
彼は元々身体能力が高かった。
しかし、戦うのは嫌いだと言ったので、足を走行のスキルを上げたのだ。
走行を上げたおかげで、彼は非常に早く走ることができる。
ついでに長距離走という技能も上げたので、長い距離を早く走ることが可能になっていた。
確かに彼ならば、探すのには向いているだろう。
「分かりました。イギールさんお願いします」
僕がお願いすると、イギールは物凄い速度で走り出し、アジトを探しに行った。
イギール一人に任せておくのも何なので、ほかにも何人かに捜索を任せた。
見つかったらすぐにアジトに向かえるように、戦いに必要な人材は捜索には向かわせなかった。
そして、数時間後、よもふけて来た時、イギールが戻ってきた。
恐らく長距離を走ったのだろうが、息はまるで切らしていない。
とてつもない体力だ。
「湖賊団のアジトを見つけた。軽く潜入して、ロンドさんの姿も確認した。助け出すことはできなかったが」
「……! ならばすぐに出撃しましょう!」
夜であるが、そうも言ってられない。
手遅れになったらこうかいするだけではすまない。
僕は兵士たちを引き連れて、イギールの案内に従い、湖賊団のアジトへと向かった。
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