第10話 今後の方針
夜。
ファリアナには、具体的にどうやって領民の支持を得ていくのか考えるのは、明日にしましょう、と言われたので、大人しく僕はベッドに入り、眠りにつこうとしていた。
だが、これからやっていけるのかという不安が大きくて、中々眠れない。
全く歓迎されてなかった。
正直、上手くやれるか不安だ。
嘘を吐きながら、領主をやる必要もあるが、ボロが出ないか不安だし……
バレてしまわないだろうか。僕の正体が。
とにかく不安でいっぱいだった。
今は悩まず、早く眠って、体を休めた方がいい。
そう思ったが、中々自分の指示に体が従ってくれない。
いろいろなことを考えしまう。
そういえば……何でシンシアは僕を領主にしたんだろう。
成長魔法の力を利用したいなら、領主にしなくても、そばに居させて使わせればいい。
なのに何故領主に?
領地を与えることで、僕の信頼を勝ち取るためかな。
確かに僕は裏切られたばかりなので、強引に手伝えと言われても、頷かなかったとは思うけど。
でも、使わなければ殺す、って脅されたら、使うと思うけどな……
そういう方法は取りたくなかったのかな?
もしかしたら、シンシアは結構優しい人なのかもしれない。
徐々に眠気を感じだし、僕は大きなあくびを一回した。
その後は、あまり何も考えることなく、眠りについた。
○
翌日。
「起きてください」
眠っていると、そう声が聞こえてきた。
ファリアナの声である。
僕は目を開けると、ファリアナの顔が目の前にあった。
「うわっ!?」
いきなりのことでびっくりした僕は、ベッドから転がり落ちた。
バクバクバクバクと心臓が音を立てる。
「起きましたか?」
「も、もっと心臓に優しい起こし方でお願い」
「承知しました」
僕はゆっくり起き上がり、深呼吸をする。
「さて、食事を取った後、今後について話し合いましょう」
「食事か……ん? なんかいい匂いが」
「朝食はお作りしました」
「え? ファリアナさんが?」
「はい」
そういえば、サーチで見た時、料理技能がそこそこ高かったような。料理できるんだなこの人。
机に向かうと、鶏肉と野菜スープ、サラダ、スクランブルエッグ、パンと、美味しそうな朝食が並んでいた。
「こ、これ食べていいの?」
「はい、構いませんよ」
「じゃ、じゃあ、いただきます」
遠慮なく僕はファリアナの作った料理を食べた。
全ての料理が味付けもちょうど良く、非常に美味しかった。
こんなにいい料理が作れるんなら、いいお嫁さんになれるんじゃないか?
……変なことを考えてしまった。
でも、正直顔は綺麗だし、それに結構胸も大きい……ファリアナはモテるんじゃないだろうか。
僕はファリアナの顔を見ていると、
「あの何か?」
見ていることを気づかれて、指摘された。
「あ、いや、何でもないよ。あははー」
「そうですか。しかし、あまり顔を見つめられると、照れるのでご遠慮いただきたい」
「え? 照れる?」
一切照れていないようだったが。
顔が赤くなったりもしてないし。
「照れてたの今?」
「はい」
「でも、照れているように見えないっていうか」
「一般的に赤面をしたりするようですが、私はいたしません。しかし、照れてはいます」
淡々とファリアナは自分の感情を説明した。
もしかして、ほかの時も無表情に見えて、意外と心の中は動いているのかな。表情に全然出ないだけで。
「さて本題に移りましょう。どうやって領民の信頼を勝ち取るか、その方法を考えます」
「……えーと……どうすればいいんだろう」
昨日の領民の僕に対する冷ややかな態度を見ると、ちょっとやそっとで信頼なんて勝ち取れないと思ってしまう。
「全員にいきなり信頼されようと思っても、中々上手くはいきません。まずは一人に信頼されることから、始めるべきです」
「一人からか……うん、悪くないと思う……成長魔法を使って、才能を開花させたら、僕の能力をわかってもらえるよね」
「そのことですが、ライル様が成長魔法を使っているということはお隠しになってください。まだ、この魔法の存在は公になってはいけません」
「え? 隠して使わないといけないの? 出来るの?」
「可能です。ライル様には、人の才能を見ることのできる、特殊な眼力がある、という風に説明するのです。そして、すぐに魔法で能力を上げずに、練習を一緒にしながら、魔法で能力をあげれば、ライル様のアドバイスで能力が開花したと思い、信頼を得ることができるでしょう」
「な、なるほど……」
結構隠さないといけないことがあって、割と辛い。あんまり嘘はつきたくないタイプだし。
でも、確かに彼女のいう通りにすれば、魔法が使えると知られずに、自分の能力を証明できる。
僕は念じるだけで魔法を使えるから、呪文からバレる心配もないしな。
「では早速、誰の信頼を勝ち取るか、領民たちに話しかけにいきましょう。きちんと話に応じた領民に、成長魔法を使うのです」
僕の話をきちんと聞いてくれる人じゃないと、ファリアナが提案した方法は使えない。
一人くらいは話を聞いてくれる人はいるだろうと、僕は前向きに考えた。
僕は早速家を出て、領民たちに話かけに行った。
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