オカルト研究部(仮)Ⅰ
「結構良い部屋じゃん」
放課後、新入部員であるユキを連れて部室へとやって来た。
キョロキョロと興味深げに部屋の中を見て回る姿は猫を連想させた。
思わず吹き出してしまう。ユキに睨まれた。何かを察したらしい。
「でも、同好会ですらないんだろ? なんで部室はあるんだよ。勝手に使ってるのか?」
ユキの当然の疑問。それに対してアンナは俺の時と同様…。
「世の中コネよ」
「大人って汚いッ!」
反応が全く同じであった。ちょっと恥ずかしい。
「はあ、世の中不公平だぜ。うちももうちょーっとだけで良いから金持ちだったらなあ」
口をとがらせるユキ。
アンナは愛想笑いを浮かべ、
「あら、うちの子になる? 良いわよ。ちょうど妹が欲しかったし」
「うえ!? じょ、冗談でも変なこと言うなよな! せめて私を姉にしろ!」
「有希、お姉ちゃん? ……ありね」
その可能性は考えていなかったわと満足げなアンナ。
まさか適当な返しに乗ってこられると思っていなかったユキは顔をこわばらせる。
「海斗!」
「おう」
「久遠にお姉ちゃんって呼ばれるの違和感むっちゃ凄い!」
「だろうな!」
姉っぽいランキング(俺調べ)では遥についで堂々の二位だからな。
「あと有希って呼ばれるのもあれだ!」
「それは良くね?」
「そうよそうよ」
「くう!」
何故かユキが目を固く瞑り苦悶の表情を浮かべる。
「久遠が可愛い! おかしい!」
「おかしいのはお前だよ」
「お前って呼ぶな!」
「ご、ごめん」
だって変なことを語気強めに言うから。
アンナにも大うけだぞ。
「お前は久遠を知らないからそんな平然としてられるんだ!」
「お前?」
「ごめん!」
よろしい。君が決めた規則だ。今後は厳しくチェックさせてもらう。
「久遠は、もっと、こう……くそっ! そういうのじゃないだろ!?」
「はあ、さいですか。――とおっしゃってますが」
「私に言われても」
そうだよね。全面的にユキがおかしいもの。
しかし、ユキは俺たちの反応に納得できないのか地団駄をふむ。
「おかしいのはお前らなんだよ! 私じゃない!」
「お前ら?」
「ごめんなさい!」
自分の首をしめてないか? ユキ結構口悪いし。
「直せって言われてるから丁度良いんだよ」
「そういえばそうだっけ」
おしとやかにしなさいとかなんとか。
口調はともかくおしとやかは無理じゃないかなあ。
「おしとやかな、皆木さん? ……解釈違いだわ」
解釈違いを起こす人まで出てきてしまった。
「でも、それはそれでありね」
ありらしいです。
思えばユキのリアクションも解釈違い故のものなのだろう。
「あー! もう疲れた!」
騒ぐのに疲れたユキはソファーに腰を下ろす。
そしてすぐに立ち上がる。
「このソファー沈む!」
「沈む?」
「見ろ!」
そう言ってもう一度、今度はゆっくりと座る。確かに沈み込んではいるが、そう珍しいほどのものではない。
ユキは軽そうなのでそのためだろうか。
「尻にフィットするし、背もたれも……良い感じ!」
「お、おう」
とりあえず気に入ったらしい。目が輝いているし。
ユキの反応もあったので改めてソファーを見る。前回は座らなかったからな。
審美眼などないが、確かにお高そうに感じる。
「アンナ」
「うちで余らせていたものよ。埃を被らせても仕方がないからね。海斗も使ってあげて」
「うひょー!」
ユキは絶賛お楽しみ中なためアンナの説明を聞いていなかったようだ。
立派なお屋敷に住んでいるだから当然だが、やはりお金持ちなんだな。
まあ、コネで部室ゲットできる時点でわかってたけど。
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