第20話
こちらは魔術士5人で、うち2人怪我人。
あっちは戦士1人、僧侶1人、盗賊1人、魔術士1人だ。
亡くなったのが2人の戦士だから、バランスの取れた構成だったんだね。
死んだ仲間もそのままにはしておけないし、私達は消耗してた。
蟻の増援が来るかもだからゆっくりは出来ないけど、歩き出す気力も無く座り込んでしまった。
迷宮出てそのまま来てるから魔力も殆ど残ってない。
撃ててあと1発だろう。
これでまた襲われたら超ヤバい。
誰も口を開かない。
重い空気が流れていた。
「音がする。あいつらが来るよ!」
盗賊の女の子が小声で注意を促す。
さすが盗賊。
殆ど回復してない体を急いで動かす。
「回り込まれてる! こっちしか逃げ道が無いよ! 着いてきて」
私達は盗賊を先頭にして急いで移動する。
街に向かいたいけど、まずは蟻に見つからないようにしなきゃ。
なので一旦、森の奥に向かう。
森の奥は魔物の領域。
蟻から逃げられても他の魔物に襲われる可能性もある。
魔物を感知出来る盗賊に任せるしかない。
「ひとまず、大丈夫。近くに魔物の気配は感じないよ」
街からは離れてしまったが、蟻からは逃げられた。
少し開けた場所で、休憩する。
皆んな体力は残ってない。
気力だけで動いているような状態だ。
座り込んで体力の回復に努める。
そこに僧侶の女の子がやってきた。
「巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」
「これ、少ないけど食べて」
堅いパンと塩漬肉を少ないながらも分けてくれた。
5人分だから、少しでも大変だろう。
今の状況では食料とっても貴重だし。
「良いの? あの魔術士に文句言われるんじゃない?」
「良いのよ。リーダーの彼が持っていけって言ったのだから」
食べながら私達は少し話した。
彼女の名はユナと言うらしい。
レベル2の僧侶だ。
リーダーがあの、いけすかない魔術士の男でレベル3。
ガラルと言うらしい。
高圧的で、自分よりレベルの低い冒険者を常に見下しているらしい。
盗賊の女の子もレベル2。
カリンと名乗っているが、恐らく偽名だろうって。
生き残った戦士の男はロメル。
神経質で疑り深く、あまり話した事も無いらしい。
ユナは、自分達が周囲を警戒するから少し休んでいてと言いに来たみたいだ。
正直助かる。
体も痛いし、バテバテだし。
体が休息を求めてた。
ユナも魔力を使い果たしていたので、休憩しているように言われたらしい。
「何であんな魔術士と組んでるの?」
「訓練所を卒業して、ギルドにパーティー申請してら紹介されたの」
「レベル1だし、何も分からなかったし。でも、レベル2まで面倒見てくれたのは確かだしね。悪い人じゃないのよ」
ユナは良い子だなぁ。
多分、自分を基準にして考えてるから、他人も本当に悪い人は居ないって思ってるんだろう。
でも。
悪い人って居ると思う。
そして、私は嫌な予感がしてきた。
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