第19話

「ミヨーー!!!」


ミヨの腕に噛み付いた巨大蟻。

恐らく噛み切られ…

あ、付いてる!

これは、魔法防御だ。

ミヨったら、ちゃんと使いこなしてる。

私なんて、ふぁいあーぼーるしか練習してないって言うのに。

でも、かなりの怪我には違いない。


「ふぁいあーぼーる!」


「魔力球」×3


蟻を倒した。


「ミヨ! 怪我!」


私は折れた肋骨の痛みに顔を顰めながらもミヨに駆け寄った。

腕を抑えて蹲る、ミヨ。

急いでポーションを出して、腕にかける。

半分かけて、半分飲ます。

薬草の葉で傷を覆ってあげる。


「ルミありがとう。…あなたもポーションを飲んで」


自分のリュックを指して、回復するように目で訴える。

ポーション高いから、一個ずつしか持ってないからね。

お言葉に甘えて、私もポーションを頂いた。


倒れた仲間は、もう息が無かった。

深くは知らなくても、長い事一緒に迷宮に潜った仲間だ。

皆んな俯いている。

言葉も出てこない。


爆音が聞こえた。

これって。

レベル3で教えてもらう範囲攻撃魔法?

前衛の戦士が柔らかいお腹を斬りつけて、トドメを刺す。


戦闘が終わった。

あちらの僧侶が泣きながら仲間に回復魔法をかけているが、魔法使いに止められた。


「無駄に魔力を使うな」


僧侶の女性は、キッと魔術士を睨みつけるが諦めたように座り込んだ。

2人の戦士が寝かされている。

遠目に見ても、致命傷を受けていた。


1人の少女は座りこんでいる。

負傷しているらしいが、回復魔法をかけて貰って処置済みのようだ。


魔術士の男がこちらを見た。


「チッ。同業者が来て助かったと思えば、こんな素人魔術士集団とはな」


な!?

成り行きだったとは言え、私達は犠牲まで出して手を貸した。

それを…

私は睨みつけた。

ぶん殴ってやろうと近づこうとした所で。


バチン!


僧侶の女性がビンタした。


「なんて事を… この人達は私達を助ける為に危険を冒して戦ってくれたのですよ! それを…」


魔術士はフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。


「あの。助けてくれてありがとうございます。怪我してる方がいらっしゃいますね。回復魔法をかけます」


私は怒りがまだ治らなかったので魔術士を睨みつけながらも回復魔法を受けた。

私もミヨも幾分は楽になった。

お姉ちゃんの回復魔法とはレベルが違うみたいだけど、それでも楽になった。


「ありがとう…」


私とミヨはお礼を言った。

でも、死んだ仲間の事を考えると複雑だった。


「お一人…亡くなってしまわれたんですね…。私達の為に本当に申し訳ありませんでした」


頭を深々と下げてきた。

冒険者が戦って死ぬのはどんな場合でも自己責任だ。

だから、仕方のない事…なのだ。


それでも謝ってくれた。

この人は悪い人では無いようだ。

悔しい気持ち、悲しい気持ち、色んな気持ちがごちゃ混ぜだけど。

まだ冒険中なんだ。

冷静にならなきゃ。


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