第18話

悲鳴を聞いてミヨが走り出した。

さすが良い人!

他の皆んなも後に続く。

私も空気読める人だからね。

ちゃんと付いていく。

でも、面倒事な予感しかしない私はふぁいあーぼーるの準備をしておく。


それ程離れていない場所だった。

ひとつのパーティーが巨大蟻と戦ってる。

巨大蟻は迷宮地下二階に出る魔物だ。

今の私達なら、やってやれない事はない。

ないんだけど…

数が多い。

10匹以上は居る。


「助けて!」


僧侶らしき女性が叫んだ。

周りを囲まれているから、前衛も後衛もない。

必死に攻撃を躱している。

あんまり長くは保ちそうもないよね。


「ふぁいあーぼーる」


とりあえず、僧侶の人が戦ってる巨大蟻に向かってぶっ放す。

火は嫌いみたいだ。

動きを止めた。

でも、大して効いているようには見えなかった。

さすが2階の魔物。

でも、動きが止まった隙にミヨや他の人も魔力球を放つ。


お!

倒した。

私のふぁいあーぼーると魔力球×5を当てれば倒せると。

多分、鈍器の方が効くんだろうな。


とりあえず、包囲に穴が空いた。


「そこから逃げて!」


私は叫んだ。

だって、殲滅は無理そうだもの。


「怪我人が居て動けない!」


向こうの魔術士が叫び返してきた。

そっかー

どうしよう。


蟻もこっちに気が付き向かってくる。分散させたのは良いんだけどね。

私達は魔術士。

接近戦は超弱い。

しかも思ったより素早い。


もう1発くらいいけるか?


「ふぁいあーぼーる」


「魔力球」×5


なんとかもう1匹倒したけど。

それでもまだ3匹が向かってくる。

あっちのパーティーには7匹かな?

でも、包囲が解かれたので、前衛、後衛に分かれて体制を整えててる。


私とミヨは前衛。

あー、ヤバいヤバい。

このまま逃げちゃいたい。


ガチガチと歯を鳴らしてるよ。

あれをまともに受けたら、杖も噛み砕かれちゃうかも。

私の体なんて真っ二つだね。

噛み付いてこようとする頭をぶっ叩いて、向きをずらしながら身を躱す。

何度か必死で避けていると。

後衛からの魔力球が飛んできた。

3発命中。

うわ、死んでない。

でもボロボロだ。

集中して私も魔法を使う。


「ふぁいあーぼーる」


よし!

倒した。


私はすぐに隣のミヨを援護する。

ミヨも懸命に避けている。

横から杖を突き入れて、蟻の気を逸らす。

その時、後ろから体当たりをされて、私は吹っ飛んだ。


「ルミ!!」


ミヨの声が聞こえる。

どうやら、前衛を受け持っていたもう1人がやられたらしい。

相手にしていた蟻が私を標的にしたんだね。

う、痛い。

肋骨折れたかも。

痛いよー。


でも、私に体当たりかました後に魔力球を喰らって蟻もボロボロ。

逃げていく。

残り1匹。

ミヨが前衛してる。

うー、ミヨ。

気をつけて!


私も上半身を起こす。

刺すような痛みが走る。


「痛ーい痛い!」


こんちくしょうめ

「ふぁいあーぼーる!」


よっしゃ。

当ててやった。

少し動きが止まった。

ミヨが少しでも楽になれば。


援護の魔力球も、もう少しだ。

それで終わる筈。


あと少しだった。

でも、ミヨも疲れがあったんだろう。

避けきれなかった。


ミヨの腕に巨大蟻が噛み付いた。




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