第7話
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久しぶりの再会を、ラーメン屋で交わした後、それからと言うものの、咲彩と祥太は、そこそこ学校と会社が近い事もあり、時々タイミングが合った時は、極たまだが、時々昼食を食べに行くようになり、莉子は莉子で、祥太の紹介で、祥太の会社の1年先輩と付き合う事になった。
どうやら、先回のラーメン屋で、莉子の一目惚れみたいだった。
サークルの先輩でもある優との事は、結局は友人止まりで、この春から社会人になる優が久しぶりに以前交際していた年上の彼女に連絡を取ったところ、会ってくれると言って、それからいい雰囲気になった。
莉子は失恋してしまったが、優はやはりどうしても、元カノとの相性がいいらしく、今年から同じ社会人として、お互いを理解して行こうという事で、元サヤと言う事になったらしい。
*
そう言う咲彩と祥太は、今、ファミレスでお互いに、カツ丼を食べながら話しをしている。
「祥太さん、何か私達付き合っているみたいに見えますね。 傍から見たら」
「ホントだね。 良くご飯にも一緒に行くし。でも、何か知らないけれど、咲彩さんと一緒に居ると、現場でのストレスが消化して行くんだよな。 ありがたや~」
「わたしは処方箋でも、医者でもないですからぁ~」
普段は口数の少ない祥太だが、咲彩と居る時は、何故か家族同様に会話をする事が出来て、居心地の良い関係だ。
「でも、あの時の事故から、じきに3年経ってるんだと思うと、早いものね」
「あの時はオレも、ビックリしたけど、良かった事に、傷の痕跡が殆ど分からなくなって、本当に良かったと思っているんだ」
「私も、退院してすぐの状態を見て、コレって結構痕が残りそうって、落ち込みましたもん」
「だよな。 若い女の子だけに、オレ、その事が気になり、悔やんでも仕方ないのか? なんて思ってしまって。本人の希望なら、美容整形も行ってもらう気でいたんだ」
「そこまで心配してもらって、ありがとう、祥太さん。 そういう所が、ウチの両親が気に入っているところなんだ」
「でも、治療後の最後の電話が終わった時は、少し寂しかったな....」
「祥太さん、あの時は彼女が居たんでしょ?」
「はは........」
気まずい雰囲気になる祥太だが、正直に答えた。
「あの事故の時って、実は、彼女と別れてまだ一ヶ月くらいだったのもあって、やっと気分が落ち着いて来た時だったんだ。そうして外も見ずに、油断してトラックのドアを開けた瞬間に、あの事故が起きてしまったと言う事だったんだ」
「じゃあ、あれから今まで、彼女はいなかったの?」
「う~~ん....、何だろな。 欲しいとは思っていたんだけれど、何だか気が進まなかったんだ........、あ!」
最後の祥太の声に、咲彩が驚いて、祥太を見つめる。
「どうしたの?」
「オレなんか思い出してしまった」
「何を?」
祥太は思い出したのは、あの最後のお見舞い中、咲彩の傷の痕が残る様なら、一生かけて祥太が咲彩の面倒を見るという事だった。
思い出してしまった祥太は、滅多にない事に、赤面してしまった。
咲彩は祥太の面持ちを見て、始めて見るその赤面顔に、不可思議な思考に捕らわれた。
「何で祥太さん、赤面しているの?」
この問いに、珍しく答え辛い事を悟った咲彩。
祥太の性格は要らない事は言わない、だが、相手の気持ちを考慮し、大切な事はハッキリと言う性格なので、隠しもせずに、咲彩の瞳を見つめ、その思いを告げた。
「咲彩さんのその傷の痕が、目立つように残ってしまうのなら、それは俺の責任だ。 だから....、だから、一生を掛けて、オレが咲彩さんの面倒を見て、責任をとる、と、あの時オレは決意したという事なんだ」
それを聞いて、咲彩は躊躇してしまった。
「祥太さん。 そんなに私に対して責任を感じていてくれてたんですね。嬉しいです。 でも、私の為に、自分の人生を生贄いけにえの様に送らないでください。私が悲しくなります」
「違う、違う。 そうじゃないんだ。 オレの言い方が人生を犠牲にする様な言い方に、聞こえてしまったみたいだけど、オレしっかりと、咲彩さんの事好きなんだから........、あ!」
「え?!!」
言った。
言ってしまった。
祥太の秘めた思いを、とうとう咲彩の目の前で、カツ丼の丼の前で、色気も無く、雰囲気も無く、ロマンなんて欠片も無い状態で、自ら暴露してしまった。
暴露してしまった。
暴露して....。
咲彩を見ると、瞬きも無く、ただ固まっている。
「................」
大凡おおよそ20~30秒くらいだろうか、咲彩が固まっている状態に、どうしてもリアクションが欲しい祥太は、右手を出し軽く頬に当てがった。
(うわ! 柔らかい)
そう思う祥太に、気が付いた咲彩が、驚いて表情を赤面した。しかも咲彩は、その祥太の手を、その上から自分の手で、覆ってきたのだった。
「祥太さん。 なんか....、なんかこれ....、と、とってもあったかい気持ちになる」
一瞬、振り払われると思った祥太は、そのまま咲彩の頬を、優しくさすった。
そして、次に咲彩が口にした一言は。
「ホントの事言うと、自分が知らないうちに、私も祥太さんの事、好きになってた....みたい....」
滅多にすることのない、赤面を、今日はもう複数回起こしている。 そんな自分の表情に気が付いた事もあり、それがまた赤面に拍車を掛けていた。
(まさか私の人生で、こんな事態が起こるなんて)
と思う咲彩だった。
△
それから祥太と咲彩は正式に付き合い出し、MRコーポレーションの
社員からは。
『ウチの社員から女子大生の彼女が、二組も出来るなんて、羨ましい』
と、他の独身社員からは、羨ましがられ、揶揄されている。
咲彩は、祥太と交際し始めた事を両親に話した時、母親からは....。
『最近になり、いろいろ怪しいと思ったら、やっぱりね。しかも、あの祥太さんとはねぇ....、でも、何となく咲彩に付き合ってくれる人は、世界中で、祥太さんだけしか無いと思っていたけどね』
と言っている。本人に対してはとっても失礼だ。
また、父親は。
『咲彩には、まあ、あの男しか付き合ってもらえないだろうな。うむ、賛成だ』
(わたしを何だと思ってるんだ、両親は....)
ちょっと複雑な両意見だった。
最近知った事なのだが、実は祥太の出身地は県外で、道のりは約2時間弱だ。 今は会社の近くでアパートを借りて、一人暮らしをしている。
なので、基本は自炊だが、現場が忙しく、疲れた時には、カップ麺とおにぎり、もしくは、スーパーの総菜コーナーの弁当、と言いう事も少なくない。
それを知った両親、特に母親は。
『まあ、それは健康面で心配だわ。現場での業務なんでしょ? だったら、たまにはウチにご飯、呼んできなさい。でなけりゃ、咲彩、あなたがご飯作りに行きなさい』
そう言っている。
咲彩も、性格は男前だが、しっかりと母親に家事を叩きこまれたので、今は普通に家族の夕飯を作る日もある腕前だ。 なので、遠慮する祥太を母親からの電話で押し切り、祥太の都合のつくときに、咲彩をアパートに向かわせ、夕飯を作り、一緒に食べると言う、押しかけ彼女(祥太にしては、嬉し過ぎる事)と言う事態が発生した。
そんなアパートからの帰り、咲彩はいつも祥太の車で送ってもらっているのだが、咲彩の就活の事が、この4年生の6月になっても、一向に進んでいないという事に、不安を感じていた。
咲彩は、商学を専攻しているため、経営学も重複している授業内容と言う事もあり、希望は一般企業の事務職を探している。
そんな折、祥太の勤める会社で、通常は現場従業員の採用をしているのだが、急遽、事務員も若干名だが、募集したいとう、噂を聞いた。
ある日、現場での休憩中に、工事部長がやって来て、休憩中の作業員達と今後の現場での工程を話し合っている時、最後の方で。
「君の交際している大学生だが、この近くの学生なんだってな」
この言葉に祥太は、まさか、現役女子大生との交際が禁止と言う事なのか、不安になって来た。
部長は続けて。
「来年度からの事なんだが、今若干名だが、事務職を探していてな、その大学には確か、商学部と経営学部があったと思うが、思わしい人物は居ないものかなと思っていて、君の交際相手が、そっちの学部で、もしまだ内定が決まっていなかったらと思ってな」
これはラッキーである。
そう思った祥太は、咲彩が 経営学部であった事に、これはチャンスと思い、工事部長に、返答をした。
「えっと、彼女は経営学部の4回生で、いまだに就活中なんですが....」
「ほほう、それは丁度良い。 それじゃあ、その彼女さんに聞いておいてくれないか? もし詳しく知りたいと思ってくれるなら、パンフレットか、HPでも良いから、一度見てくれないかな」
「はい、伝えておきます。 部長ありがとうございます」
「はは、いいから。 ま、彼女が一緒の会社なんて、面白いな。でも、ウチは社内恋愛には、社長からも寛大な考えなんで、そこの所も、伝えておいてくれ」
「はい、重ね重ねありがとうございます」
「取りあえず、返事は来週の月曜日に、聞かせてくれ。話はそれからだ」
「分かりました」
「じゃあ頼んだぞ」
そう言って、部長は次の現場に向かって行った。
同僚たちからは、良かったと言ってもらえたのだが、実は、祥太の彼女が見たいだけと言う、興味本位な事が本音だと祥太は感じた。
(こ、コイツらぁ~)
□
この小説をお読み下さっている方々、ありがとうございます。
内容も佳境に入って来て、咲彩の恋愛事情も、どうやら矛先が決まって来たみたいです。
私の小説は、ハッピーエンドが基本なので、最後までお付き合いして頂けると大変嬉しいです。
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