第3話
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さて、咲彩と沙耶の〈莉子と優をくっ付けろ作戦〉が、密かに開始した。
あれから十日余りが過ぎ、明後日から、月一のサークル活動だ。 最近は結構遠方だったのが、今回は意外に地元が取材出来てないという、灯台下暗し的な意味での、超ローカル活動になった。
所謂、市内での活動になったのだ。
先日の優の問題も、この機会に、少しでも何とかいい方向に解決していきたいと、咲彩と沙耶の サヤサヤコンビ が動き始める事となる。
◇
「おーい!集合だぞー」
優の威勢の良い号令がかかる。
いつもの広めのコンビニエンスストアの駐車場で、待ち合わせるのが、サークルメンバーの集合場所だ。
今回の参加人数は、男子4人と女子5人の合計が9人と、今まででは一番少人数だった。 だが、その少ない参加人員が、サヤサヤコンビにとっては都合の良い事である。
全員を集めて、駐車場の片隅で、説明を始めたサークルリーダーの優。
「今回は、市内にある高架幹線道路にある、道の駅 をサーチングします。皆さんも地元なので良く知っているとは思いますが、通常寄る時は、多分トイレ休憩か、ハウス内にあるコンビニで、飲食物などを購入するだけの用事で済ましていると思います。だけど、今一度、産直売り場にも視野を広げて、地元の物産を見直そうと言うのが、今回の目的です。 なので、近いですが、皆さんで何か探していきましょう。よろしくお願いします」
「はい、ではそれぞれの車に搭乗して、出発していきます」
続いて声を掛けたのは、サブリーダーの 香川 茜 だ。
各人は、あらかじめ渡しておいた、予定表の通りに、次々に車に乗って出発した。
大学生なので、車を所有しているメンバーはほぼ居ないので、親から借りた乗用車・軽乗用車がメインとなる。
全員、高校時代に運転免許は取得しているので、交代運転も出来る。
そして、今回のこの活動には、ある二人を除いては、みんな、ある事案に協力してもらっていると言う事を知らせてあるのだった。
△
さすがに到着は早かった。
所要時間15分で、目的地の市内にある 道の駅 に着いた。だが、駐車場内では、建設業者が入り、小規模ながら、工事をしていた。
「先月の2時間半の片道と比べると、近すぎて、拍子抜けしてしまいそう」
メンバーの男子がこう言うと、また別の女子が、つられて言う。
「ホントね。 時々来るから、来慣れちゃってるって感じよね」
「でも、今まで気が付かなかった事を、改めて探してみましょうよ」
と、咲彩たち以外のもう一人の女子の一年生のメンバーが皆に言った。
「そうかもな。 意外とあるかもだぞ? じゃあ、取りあえず、1時間後に集合な。それと、あそこの工事現場には気を付けて。じゃあ、一時かいさーん」
優が号令を掛け、最初は大まかに二つのグループになり、広大な施設に入って行った。
だが、すでにココで、仕掛けは始まっていた。
優ともう一人の男子に沙耶と咲彩に莉子のグループと、茜ともう一人の女子、それと男子二人の、2グループに最初は別れて、駐車場から施設に入ると、コンビニが入っており、それを通り越すと、産直場がつながっていた。
朝と言うのもあり、朝採れの新鮮な野菜中心に、陳列されている。 結構コレを目的に来店する人が多い。
2グループで色々探索しているうちに、優が居る方の男子が沙耶に向かって....。
「鈴川さん、俺あっちが気になるんで、行ってみませんか?」
と、男子が聞いてきたので、沙耶が。
「お、いいねぇ。 私もあそこ、さっきから気になっていたんだ、咲彩ちゃん私達行ってみるから、じゃあね」
「分かった、じゃあ後でね」
以外に分かりが良いこのやり取りに、さして不審な事は無かったと思う、咲彩たちであった。
残った優と莉子それに咲彩は、何か新たな発見は無いかと、店内を見て歩く。 すると、莉子が、何かを発見した。
「咲彩。コレって、今まで見たことのない商品だよ、あったんだー、私の知らない地産の商品が」
そう言って、900ml入りのガラス瓶に入っていたのは、地産果物をジュース化したものだった。
「へえ、時々食べているこの地方特産の果物が、ジュースになっているなんて、知らなかったなー。コレはチェックだな、莉子」
「そうだね」
莉子と咲彩の会話を聞きながら、優は感心していた。
「僕も全く知らなかった。 やはり、地産農家の人達は、日々色んな商品を考えているんだな、これは良い発見だ」
「先輩、コレ写真撮っていいか、店の人に聞いてきますね」
そう言って、咲彩は店員の居る所へ聞きに行ってしまった。
残された優と莉子は、急に二人になった事に気付き、意識してしまうとともに、言い訳をし始めた。
「な、なんか、二人になっちゃったな....」
「そうですね....」
言葉にすると、さらに意識してしまう二人。
莉子は優の失恋を少しでも癒すために、言葉を掛けてみる。
「先輩って、彼女居たんですね」
「........」
「ごめんなさい。 思い出すような事言って」
「もういいよ、過ぎた事だし、もう忘れようと今はなるべく思い出さないように、勉学とサークルに気合を込めているんだ」
俯き気味に言葉を放つ優に、莉子はやはり相当根が深い失恋だと、今の優の一言で、悟った。
「ちょっとあっちのフードコートで、休憩しないか?」
「はい」
そう言って、二人はフードコートに向かい、テーブル席に座った。
他人の目から見たら、カップルに見えているだろう。
何か気付いた優が、莉子に向かって問いかけた。
「もしかして、今日の活動って、参加しているみんなが、僕に気を使っているように見えて仕方ないんだが、何か隠している事は無いかな? 莉子ちゃん」
バレていた。
さすが、リーダーを務めるだけの事はある。 それだけの技量があるという事は、人を見る目も確かなんだろうと、莉子は思った。 なので、正直に今回のこの活動内での優に対する、皆からの気づかいを、全部話した。
△ △
緊急集合になり、フードコートに今回のサークル参加者全員が集まっている。だが、優の声が高い。
「あのなぁ、僕に気を使ってくれるのは嬉しんだけど、無理矢理だろ? 皆、そう思わないか?」
少し立腹な優である。
ミッションがバレて、全員集合と言う事になり、只今はこう言う状況だ。 何処と無く、優以外は気まずい雰囲気だ。
特に莉子は、優に想いを寄せているという事もあり、その事がバレて、今この席に居ること自体に、途轍とてつも無く、周りとは違った意味も含めての、気まずさがあった。
「....で、どうすんの? この空気」
まだ少々の立腹状態の優に、誰も言葉が出ないと思ったが、その何ともい気まずい雰囲気を、茜が突破口を開いた。
「あのね優。 皆が優の事に気を病んでて、何とかしたいと思う気持ちから、今回のこの作戦を考えたの」
「でもそれは、僕の気持ちは置き去りにしたままじゃないのか?」
「あのね、これ始めから、莉子があなたの事に、好意を持っているって言った方が良かったの?」
(うわ!! 先輩。 こんなにハッキリ言うなんて、莉子が真っ赤になってますよ)
と、茜の意見に咲彩は思った。 モチロン、茜の言葉に、莉子の面持ちは、赤くなっている。
「でも、やっと最近気持ちの整理がついて来て、何とか次に進もうと、やっきになっている時に........」
「........うん?? ちょっと、今の言い方。 優、もしかしてだけど、好きになりかけている女の子が居るの?」
茜の言葉に少しの動揺を見せた。 その所作を見逃さなかった茜は、さらに追及する。
「この中に居るの? 優」
「........」
「どうやら図星だったようね」
「ちょっと待ってくれよ。 僕だって別れてもう半月になるが、そんなにすぐに次なんて、気持ちが追い付かない」
「でも、気になる女の子はいるんでしょ?....。ま、いいか、何となく私は分かったから」
「「「❕」」」
今ココに居る全員が、茜の言葉に興味を抱いた。 野次馬的な立ち位置になっている。
ここで咲彩が、言い辛そうに、言葉を放つ。
「あのう....」
「なに? 咲彩ちゃん」
茜が咲彩に次ぎを促す様に、言う。
「先輩が思っている女の子って言うのは、この中で、誰が対象なんでしょうか?」
この言葉に、待ってましたと茜は思った。 そして、名前を告げる。
「あなたよ、咲彩ちゃん」
この席に居る全員が固まった。
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