第2話
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最初は如何わしい勧誘だと思ったのだが、実は色んなサービスエリア・道の駅 などを探索し、地産の物・美味しい物などを紹介して、SNSでの公表などをして、自分たちが楽しむサークルだった。
それからは、月一度で、あらかじめ計画した所に行き、そこで観光、食事、土産物を堪能し、写真・動画に収めた後に編集し、ウエブ上で公開した。
毎回のサークル活動は遠出の時でも基本日帰りプランなので、観光などを考えると、片道3時間までが、移動エリアと大体決めていた。
それでも、咲彩たちも回数を重ねる度に、周りと打ち解けていき、数回重ねる頃には、いつも行くメンバーとは、サークル以外でも、ご飯を一緒になる程、仲良くなっていった。
そのようなサークル活動を半年ほどした頃、莉子から相談を受けた。
「咲彩。 実は先日から優先輩が、妙に落胆している姿を見るんだけど、何か知ってる?」
最近などと言っても、先回のサークル活動が終わってから、半月ほど経っているので、全くそれ以外の優との接点など殆ど無い咲彩は、優がそんなに落ち込んでいる事など、知る由もなかった。
「全く分からない。って言うか、活動以外、優先輩とは殆ど会わないから、分からないな」
「そう....」
なにか、気分がすぐれない莉子だが、何かあったのだろうか? と思う、咲彩だった。
△
その日の学食で、莉子と咲彩、それに最近、気の良く合う一年先輩の、沙耶との3人で昼食を摂っていた。
その時に、沙耶が優の近況について語った。
「最近なんだけど、優先輩って彼女と別れたらしいよ。 そんで、只今絶賛落胆中だってさ」
この情報に、即! 莉子が食いついた。
「え! 先輩彼女が居たんですか?」
「あれ? 知らなかったの? 2年前からの付き合いで、二歳年上よ。 今は社会人一年生かな」
「へえ、そうなんだ」
咲彩が返事をするが、莉子は少しショックを受けていた。
「元々同じサークル活動仲間で、出会って、彼が1年、彼女が3年の時から付き合い始めたんだ」
そう言う事を全く知っていなかった二人は、活動以外は全く接点が無いのに、納得した。
そこで、咲彩は、優が分かれた原因が何か知っているか、さらに聞いてみた。
「立ち入ったはなしですが、どんな理由で別れたんですか?」
「食いついてきたね.....、まあいいわ、私の知っている限りで話すわ」
優とその先輩との出会いは、サークルでの新入生歓迎コンパ(新勧コンパ)であった。
ほぼ優の一目ぼれで、アタックし続けた後、先輩から折れての交際開始だった。
双方は良型のカップルで、傍から見ると、全く理想で似合いのカップルだった。
在学中はほぼ一緒に居る二人。 何処から見ても他が羨む二人だったので、周りも公認だったという事もあり、他から変に扱われることも無かった。
なので、在学中からその先輩が卒業してからも、交際は続くものだと思っていたのだが、彼女が社会人になってから、会える時間が少なくなり、彼女の方も、忙しくなる業務で、夜の帰りが遅くなることが多くなった。
そうなると、会える時間は週末のみとなる訳だが、そこから二人のすれ違いが始まった。
在学中はほぼ毎日会っていた二人だったが、週一だけの交際ともなると、メッセージも業務中はほぼ出来なくなった彼女に、優が不満を抱くようになってきて、週末会っても優からの文句ばかりで、彼女がそんな彼に対して、日々の疲れもあり、段々と気持ちが冷めていくのに気が付いた。
そんな彼女は、段々と優に対して愛情が冷めていき、つい先日、別れを切り出して、ほぼ二年の恋愛が、先日終わったとの事だった。
△
「なるほど、そんな事があったんですね」
「そうなんだ~....」
咲彩と莉子が話を聞いて、ゾッコンだった彼女からの別れを切り出されて、辛い思いをしたのだと、優に同情した。 だが、莉子は何故かその後に、涙腺が緩み、涙が流れてくるのに自分が気が付いた。
「な、なんで泣いてるんだ、莉子」
「ちょっと泣かないでくれよ、莉子」
咲彩と沙耶が、驚いて、宥める。
「どうしたんだ?莉子。何があった? 何か、気になる内容があったのか? 今の沙耶ちゃんの話に」
咲彩は沙耶の事を〈沙耶ちゃん〉と呼ぶ。 呼び方が似ているので、親しくなり、咲彩ちゃん、沙耶ちゃんとお互いが呼んでいる。
そう言ってると、とうとう大声で、莉子が泣き出してしまった。
「うわぁーん!!........」
コレには二人ともビックリし、たじろいでしまった。
だが、その号泣している莉子の理由が分かってしまった咲彩は、泣いている莉子が、治まるのを待って、聞いてみたい事があった。
「もしかして莉子、優先輩の事が好きなのか?」
泣き顔なのに、突然の咲彩からの図星に、莉子が無言になった。
「........」
「あー、やっぱなー....、そう言う事みたいだね、沙耶ちゃん」
「はっはーん、何となく話の流れで、そうじゃないかとは思ったんだが、今ので決定だな」
「だね」
「ぐ!....」
莉子は何も言えなかった。
「莉子、先輩を狙うなら今だが、さすがに傷心中だからな、時期を待て莉子」
「そうだな、沙耶ちゃんの言う通り、今はまだ早いな、でも、私は応援するからな、莉子、頑張んなよ」
「う、うん....」
「私からも、何か手伝えることがあったら、言ってくれ」
「ありがとう先輩」
こうして、莉子の恋愛作戦が水面下で始まった。
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