〜小山若犬丸の乱〜 束の間の平穏。3

それから目まぐるしく色んな事が過ぎて行った。




先ず、私と斑鳩は夫婦となった。




私は斑鳩と夫婦になれて、この私の中に斑鳩との子供を宿し、本当に幸せだった。





それから今までは別々の部屋だったのが、一緒になった。



まあ、夫婦だから当たり前だけど。




でも慣れるまでは緊張してたなぁ。





そして臨月になり、無事に子供が産まれた。





産まれた子は男の子だった。






私や斑鳩、花月、そして藤井さんや藤井さんの家中の人々皆に祝福されて産まれたその子の名前は、宮犬丸みやいぬまると名付けた。




宮の字は、神社を意味する。



私が破邪の剣の舞姫となり、斑鳩や花月と出会うきっかけになった場所、須賀神社に因んだ。





後から聞いたが、この時代は死産や流産、産まれて直ぐに亡くなったり、幼児の頃に無くなる子供が多いらしい。




だけど、私達の宮犬丸はそんな心配を他所に、元気に育ってくれた。





そして、私はこの時代は親が子供を育てずに乳母うばと言う人が育てる事も知った。






だけど私と斑鳩は自分達で育てる事にした。





斑鳩が私の時代の話しを聞いて、彼も納得してくれたのだ。





月日の流れは早いもので、宮犬丸はすくすくと成長した。





そして私達は、その後にもう一人の子宝にも恵まれた。





宮犬丸に弟が出来た。





名前は久犬丸ひさいぬまると名付けた。




久の字は、永久にと言う意味が有る。



永久に平和な人生を歩んで欲しいと思い名付けた。







それから、あっという間に月日が経ち、宮犬丸は6歳、久犬丸は2歳となった、ある正月の事……。










『宮犬丸〜〜??』




私は久犬丸を抱きかかえながら、宮犬丸を探していた。





本当に腕白で困る。





でも元気が良いのは嬉しい。






『宮犬丸〜〜?

何処にいるの〜〜??』




暫く廊下を歩いていると、庭の方から宮犬丸と花月の声が聞こえた。






『たぁ〜〜っ!!』



『はは、中々良い太刀筋になって来たわね!

アンタは将来良い武将になれるわよ!』



『本当!? 花月おばさんっ!』



『だからアンタさぁ〜〜、そのおばさんは余計なの!』



『いしししし。』



『宮っ!

アンタ、わざと言ってんでしょ!

ったく、誰に似たんだか。』





意地悪く笑う宮犬丸。




全くもう!




本当に腕白で悪戯っ子で手が焼ける。





『宮犬丸っ!

花月に失礼でしょ!

いつもそうやって稽古の相手して貰ってるのに!』



『あっ!

母上! 久犬丸!』



『アンタの子供は母親に似て腕白この上無いね!』



『もう、私はそんなに腕白じゃ無いわよ。』



『母上、花月から聞きましたよ!

母上は父上以上の剣の使い手だと!』



『もう花月ったら……。

変な事唆さないでよ。

宮犬丸がその気になっちゃうでしょ?』



『母上っ!

どうか私に稽古を!』




頭を下げた後に、力強い眼差しで私を見つめる。




本当、この真っ直ぐな瞳は斑鳩そっくりね。






『おお〜〜、宮犬丸。

母上に稽古して貰えるのか!

良かったな! だが母上は強いぞぉ〜〜!』




『あっ! 父上!!』



『そうだ、団子を持って来たぞ!

その前に皆で食べよう。

でもまだ久犬丸には大き過ぎて食べられんのぉ〜〜。

ほれほれ、この父が小さくちぎってやろう。』



『お団子〜〜っ!』



『ははは。良し! 宮犬丸こっちに来い!

早ようサクラも花月もこっちに。』



『あなた! 久犬丸が団子を喉に詰まらせたらどうするの!?』



『そ、そうか。

ならば代わりの物を……。』



『はは!

アンタもだいぶ母親らしくなって来たね!』



『もう、からかわないでよ、花月〜〜。』



『母上も花月も早く!

お団子無くなっちゃうよ!』



『あっ! ずるいっ!

宮っ! アンタ、アタシの分まで食べないでよ!』



『宮犬丸! 花月の分まで食べないのっ!

それに、食べ過ぎたらお腹壊すわよ!』




『んぐんぐ……!』




『あーーっ!

アタシの団子がぁ!

アンタ、後で徹底的にその根性叩き直してやるわよ!』



『出来るもんならやってみなよーー!』



『もう宮犬丸っ!』



『はあ、父親からも何とか言っとくれよ。

ったく、斑鳩とサクラを足して二で割るとこう言う子が産まれるのね。』



『本当よっ!

……って、花月ってばぁ。』



『だ、誰か何か久犬丸が食べられそうな物を!』



『駄目だこりゃ……。全然話しを聞いて無いよ。』



『もう、あなた!

私が何か取って来るから久犬丸を抱いてて!』






相変わらず、こんなやり取りの毎日が続いていた。





ここ数年で皆んなすっかり穏やかになった。





どこかピリピリした雰囲気が無くなったから。





この大切な人達との団欒の時間。





本当に掛け替えの無い宝物。





これが私が守りたいもの。





そして叶うのなら、いつまでもこの時間が続いて欲しい。





だけど、歴史を知っている私には、いつまでもこんな日々が続かない事は分かっていた……。





でも、また戦乱が起きようとも、私はこの破邪の剣の力でこの日々を必ず取り戻す。








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