〜小山若犬丸の乱〜 祇園の城を目指して。8

私達が入ると直ぐに、本丸の中は直ぐに乱戦になった。



次から次へと襲い掛かる敵。



何処に大将がいるの!?





『サ、サクラっ! 後ろっ!!』



『えっ!?』



『貰ったぁ〜〜!!』


後ろを振り向くと、敵が私に斬り掛かって突進して来ていた!



『し、しまった!!』



何とかかわしたが脚を斬られた!




『ぐっ……!』



こ、これではいつもの様に動けない!



『背後からとは卑怯な……。

それでも武士なの!?』



『何とでも言え! ここは戦場だっ!!

油断したお前が愚かなんだよ!!』



確かにこいつの言う通りだ。


私は返す言葉が無かった。



『お前が破邪の剣の舞姫とか言う小娘だな?

ふざけた真似をしおってーーっ!!

しかし、命は取るなとの命だからな、殺さぬ程度に苦痛に悶える程度に切り刻んでやるっ!!』




格好からしてこいつが大将に間違い無い。



鎧が豪華だから一目で分かった。




『お前が見かけによらずに剣と体術の達人と言う事は分かっておる。

だが、不意を突かれて脚に傷を負ったな。

これで俊敏な動きは最早出来まい!!

おいっ! 者共ぉ〜〜!』




しまった! 囲まれたっ!!



不味い!



脚を斬られた上に、この人数を一度に相手。




その時、閃光が無数に走った!



その瞬間、敵が何人も崩れ落ちて行く。



『サクラ! アンタはあの卑怯な大将を! ここはアタシに任せなっ!』




『花月!』



相変わらず強い!!



『アンタなら、その怪我でもそんな奴に負ける訳は無いよ! さあ、早い所片付けよう!』



『う、うんっ!』




花月からは私の傷口が見える角度では無い。


それに敵を倒す事に必死で、気が付いていなかった様だが、実は私は結構な深傷を負っていた。



腱までは斬られていないが、右の脹脛がぱっくりと割れて激痛が走り、とめどもなく血が流れている。



立っているのもやっとだった。



でも今、花月が私を助けようとして敵への気が散ると、今度は花月が危ない。




何としても私がこいつを倒さないと!




『お……おのれ!

ゆ、許さんぞ!!』



『さ、さあ、勝負よ!!』



『でやぁ〜〜!!』



何とかかわしたが、やはり脚が思う様に動かない!



徐々に間合いを詰められる!



『最早これまでの様だな、小娘っ!』



私の戦い方は、間合いを取って自身の速さで敵の間合いに瞬時に飛び込んで体術を駆使して剣を振るう。



速さを失った以上、力任せに行きたいが私は非力な女で、相手は屈強な身体をした男。



数段力が強いのは分かってる。




ど、どうすれば……!




『死ねぇぇっ!!』



敵の大将が斬撃を繰り出すが、私は何とか破邪の剣で受け止める!



だが、余りの力に弾き飛ばされて倒れ込んでしまった!



そして左足までも斬られてしまった。



これで両足が斬られた。




『さ、サクラっ!!』


花月は、少し離れた所で敵と戦いながら、私の姿を見て駆け付け様とした。




『ま、まさかアンタ、思った以上の深傷を負ってたのかいっ!?

待ってな! 今助けに行く!!』



『私に構わず、花月は自分の眼の前の敵に集中して!

今、私に気を取られていると花月が危ないっ!!』




敵の大将は、絶対に勝てると自信に満ちた顔で、ゆっくりと私に近付いて来る。




……油断している。




相手を良く見るんだ!




そういう状況こそ、必ず隙何処かに隙が生まれる筈!





『ははは! これで終わりだな! 小娘!!』




『……。』



私は破邪の剣を杖代わりに、ヨロヨロと何とか立ち上がる。




『ん? 観念したのか??

ならば大人しく剣を捨てろ!!

お前を捕らえられれば、公方様にたんまりと恩賞が頂ける。

そして小山の奴等の士気も下がって全員討ち取るなど容易い事……。

どうやらお前達は少数での奇襲の様だからなぁ!!』




気が付かれた!!



ここで、こいつを倒さないと私達は負けてしまう!




同様して全身の毛穴が開くのが分かる。



落ち着くのよ! 如月サクラ!




『捨てぬか。

ならば、その腕の一本貰い受けるぞっ!!』



敵の大将は絶対の勝利を確信しているのか、隙だらけの上段から太刀を振り下ろす!




私は冷静に一点を狙って破邪の剣で受け止めた。




『なっ……!』



敵の大将は崩れ堕ちて行った。



相手は何が起きたのか理解出来ない様だった。





『な、ぜ……。』




敵の太刀は根元から真っ二つに折れ、首からは真っ赤な血を吹き出して絶命した。




『はあ……はあ、はあ。』




あ、危なかった。




気が付いて良かった……。





そう、敵の斬撃を破邪の剣で受け止めた時、敵の大将の太刀に致命的な破損が出来てた。



日本刀は斬れ味は抜群だが、そのお陰で構造的に刀身が欠けやすく、そこに薄らとヒビが入る事が有る。



その一点に衝撃を受けると酷く脆い。




私はそれを見逃さなかった。




そして敵は勝てると思って油断した為に、破損に気が付かなかった。



もし、気が付いて脇差しに持ち変えられてたら、どうなっていたのかは分からない。




それと普通の太刀とはまるで違う、破邪の剣の強度に助けられた。




『ありがとう、破邪の剣。』




その時、本丸の門が開いた。



『かかれぇぇぇーーーーっ!!』



斑鳩の掛け声と共に、味方が一斉に押し寄せて来た。



敵は大混乱に陥り、逃げ惑う者、降参する者、斬られる者、様々だった。



良かった。



私達は勝ったんだ。



私は痛みで立っていられなくなって、その場に崩れ落ちてしまった。




『サクラーーっ!!

だ、大丈夫かいっ!?』




『花月も無事で良かった。』



『こんな深手を負ってたなんて……。

アタシが早く気が付いていれば。』



抱き締めながら今にも泣き出しそうな眼で私を見つめた。




『うん、今回は危なかったわ。

でも何とか大丈夫よ……。』



『ったく、アンタ無茶し過ぎよ!』



『ごめんね……。』




そう言って花月におんぶして貰って、後方へと避難した。



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