第57話 発達持ちのたっくんに愛央ができること

愛央のお兄ちゃん、たっくんこと琴乃匠。完璧そうに見えて、実は発達障害(自閉症・ADHD)の患者さん。一生付き合っていかなきゃいけないから、とても大変なの。そんなたっくんにこの前こんなことを聞かれた。


たく「愛央に聞きたいことがあるんだけどさ」

あお「なぁに?」

たく「俺がもしな、例えばほんとにストレスで耐えられなくなったらどうしてくれるのかなって」

あお「うーん・・・」


愛央はすぐに答えられなかった。たっくんは常日頃かなりのストレスを抱えているのに、耐えきれなくなったらどうしてくれるのって・・・正直愛央は考え込んじゃった。数分後、たっくんがなにか言った。


たく「わかんねぇよな。いきなり言われても」

あお「たっくん・・・あのね?」

たく「なに」

あお「愛央はいつものたっくんが好き!」

たく「は?」

あお「ご飯作ってくれるし、何より大変なのに愛央とあいちゃんのこと影から支えてるじゃん!」

たく「そうなの?」

あお「たっくんだからできないこともあるよね」

たく「いっぱいな」

あお「そこを愛央がカバーして、逆に愛央ができないことをたっくんがやってくれるだけでいいよ」

たく「わかった」


愛央は考え込んじゃった。これでいいのかなって。でも、チアをしながら時々心の奥底でたっくんを助けてあげたいとは思ってたから・・・。


それから3日後、いつものようにたっくんがバイトを終えて帰ってきた。でもその顔はしんどそうだったの。ほんとに大丈夫なのかなって愛央は心配していた。けどその時私は思い出したの。たっくんが以前言ってたことを。


たく「愛央?」

あお「なぁに?」

たく「愛央にとって、大切な人って誰?」

あお「愛央は・・・たっくんとあいちゃんかな」

たく「多分そうだと思った。じゃあもしな、俺がしんどそうだったりしたとき、愛央はどうしたい?」

あお「助けてあげたいし、手伝いたい」

たく「なるほどね。じゃあさ今度うちに職場体験みたいに来るかい?」

あお「えっ?」

たく「店長に言われたんよ。愛央が最近来なくなったからあじしたんかなと。んで家で俺のこと待ってますよって言ったらな、今度いつでもいいから職場体験学習でうちににさんちおいでよ。だから掛け合ってくれるか?だって」


このことを愛央は思い出したの。そしてたっくんに聞いてみたんだ。


あお「たっくーん」

たく「なに?」

あお「愛央、職場体験学習やりたい」

たく「あー昔言ってたな。やる?」

あお「うん!」

たく「じゃあ明日店長に聞いてくるから、とりあえず待ってね」


翌日。たっくんは普通に帰ってきた。どうだったのかな。やっぱりだめかな?


たく「よっ。ただいま」

あお「おかえりっ!どうだった?」

たく「普通にオッケーサイン出たわ」

あお「ってことは・・・」

たく「次の出勤のとき愛央もあいちゃんもおいでだって」

あお「えっ!?あいちゃんも!?」

たく「3人でいたらどうなるのか楽しみだからって」

あお「愛央もたっくんと働けるのすごい楽しみ!」


翌朝、たっくんとふたりでたっくんのバイト先へ行った。すっごい緊張したけど、店長さんが優しく教えてくれたの。


店長「じゃあまずレジのやり方は知ってるかな?」

あお「たっくんから教わりました!」

たく「俺教えた記憶ねぇぞ」

あお「たっくんが家で練習してるの見てたもん」

店長「そっかぁ。匠くんもすごいねぇ」

たく「あー思い出した。あれっしょ。俺が札数える練習してたときのやつ」

あお「うん!わたし、たっくんの隣のレジがいいです!」

たく「俺今日1レジだから、愛央2レジ!?」

店長「2レジの人午前中はいないからいいよ」

あお「やったぁ!ありがとうございます!」

たく「大変だべぇ」

あお「だいじょーぶ!」

たく「あ、店長。もう開店の時間ですよね?」

店長「お、そうだね。じゃあレジについて」

たく「はい」

あお「4時間頑張ろっ!」


そして開店。たっくんの捌きはさすがのもの。愛央も負けじと頑張るけど、失敗しすぎてる。でも、たっくんは忙しい中愛央に教えてくれたの。


あお「たっくん、これいつ終わるの・・・?」

たく「焦らずゆっくりでいい。急かす客もいるけど、そんときは俺が対応する」


それから4時間後の13時。たっくんとふたりでバイトを終えると家に帰ってこれた。初めてお仕事ってのやったんだけどやっぱり大変なんだね。


たく「先失礼しまーす!」

あお「お、お先に失礼します!」

たく「んーな緊張せんでええって。ほれ飯食いに行くべ」


愛央はたっくんに甘えてばかりだったの。結局たっくんってすごいのね。


あお「たっくーん。ご飯何食べる?」

たく「食いすぎると爆死して腹が破産するからこれだけでいいや」

あお「愛央もこれでいいかなぁ」

たく「んじゃこれにしよ。ねぇどうだった。やってみて」

あお「大変だけど・・・たっくんが頑張る理由、分かったかも」

たく「そっか。じゃあさ、家帰ったらたくさんぎゅーってしてもいいし、好きなチアでも踊っていいよ。ツインテ作ってあげるし。珍しく・・・愛央に助けてもらった」

あお「今ぎゅ~するっ!(´。>ω<)ぎゅー♡たっくんのおかげでいい経験になったの!」

たく「そらぁそらぁよかった」

あお「頑張ったね!たっくん!」


愛央は少しでいいからたっくんの助けになれたと思う。たっくんが助かったから。たっくん、ファイトだよっ。

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