光の柱
幽霊画や百鬼夜行などの絵があるように、日本にはむかしから幽霊や妖怪などと呼ばれている不思議なモノ、「
ヒトに個性があるように、
ヒトは生活を守るため
邪悪な
封印後、
時は過ぎゆき、恐ろしかった
早朝に起きた東京地震は、
ずっと暗闇に閉じこめられていた
封から飛び出して
禍々しい妖気を放つが美しく光る柱。近くに立ち、遠くにも立つ。東京に現れただけでなく、すぐに隣県にも立ち、さらに隣県へと、波紋のように広がっていく。
何本もの光の柱の出現に調和が崩れたことを悟った
山の
人里から少し離れた場所に立つこの寺は敷地が広い。後ろには山がそびえ、寺の周りは古木が囲んでいる。瓦を乗せた木造の建物がいくつもあり、
空から現れた鳥は流れるように寺の境内を進み、迷うことなく目的地を目指す。開け放された大きな窓から建物へ入り、廊下を横切って
飛びこんできたモノは真っ黒な全身から
動かなくなった鳥は端からじわじわと色が変わっていく。黒色が灰色へ、さらに薄くなって白へと変わる。並行して形が崩れていき、鳥からしわのよった紙片に戻っていく。徐々に白い和紙へ変わるなか、墨の残る部分に「鳥」の文字が書かれていたが、残っていた墨もしばらくすると薄れて白紙になった。和紙に戻ると音が鳴った。
『 封が解かれた
飛び立つ 』
音がなくなると静けさが戻った。窓から冬の風が通って室内を冷やしていくが、寒さを和らげるように太陽はやさしく照っている。畳に落ちた和紙の近くには人影があり、一連を静観していた。
舞いこんだ鳥のようなモノは『式神』で、異能をもつ者が
総代の視線の先――遠くの空に影が見えて、だんだんと近づいてくる。影がはっきりすると鳥の形をしており、また式神が部屋に舞いこんだ。式神は次々と飛んできてコトバを届ける。
最後の式神のコトバを確認した総代は、スマートフォンを手に取ると電話をした。短い通話を終えると浮かない顔で畳に視線を落とした。室内には無数の和紙が散らばっている。しばらく見つめていたが、おもむろに手をかざした。
総代が目を閉じると部屋の空気が変わった。ぴんと張り詰めていき、落ちている和紙が小刻みに動き始める。あちこちで畳とこすれる音が鳴り、紙の小さなふるえは大きな動きに変わった。和紙は規則正しく折られていき、再び鳥の形をした式神に戻った。
鳥の式神はゆっくりと翼を動かした。一羽だけでなく、すべての式神が翼を羽ばたかせ始め、ふわりふわりと浮いていく。式神は空中をゆらゆらと舞って安定しない。何度か左右に揺れていたが、ぴたりと動きが止まると、窓からいきおいよく外へ飛んでいった。
式神を見送る総代の表情は憂えている。先ほどの電話相手は政府機関、鳥が飛んでいく先は式神を送った異能者たち、青龍寺の総代が彼らに伝えた内容は――
『 日本各地に封じられていた
古の
乱世がくる 準備せよ 』
都内にある家の一室で、通話を切ったばかりのスマートフォンがテーブルの上で振動している。コールし続けるスマホを無視して、大きなあくびをした。
(今朝の地震で古の
青龍寺総本家の総代から連絡を受けた大柄な男は、ぼりぼりと頭をかきながら出かける準備を始めた。
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