第21話
おばあさんが、王様に駆け寄って言いました。
兄上、お久しぶりです。
ローチェ、おまえはローチェなのか?
すまなかった。心配をかけたな。
王様はそう言うと、おばあさんを抱きしめました。
王様の体がやさしく光り、二人を包みました。
やがて光が消えると、そこには先ほどと同じ美しいローチェの姿がありました。
私の力を分けたから、これで大丈夫のはずだ。
兄上、ありがとうございました。
ところで、兄上のおかげで表世界と裏世界との境界が破裂することなくおさまりました。
境界面の裂け目も、1年もたてば元に戻るでしょう。
見上げると黒雲はすっかり消え失せて、青空が広がっています。
これで我らも安心して、世界の裏側にある、おばけの国に行けるな。
ローチェと二人でうなずきあうおばけの王様を見ながら、ヨシオ君がおずおずと言いました。
あの~、僕たちはどうすればいいのでしょうか?
王様は言いました。
我らについて、おばけの国に行ってもいいし、おまえたちの家まで送ってもいいぞ。
ただ、おばけたちは人間に愛想を尽かしているからな。
そんなところに、人間が二人行っても、つらい思いをするかもしれんな。
でも僕の家といっても、10年間も行方不明になっていたのを、みんなにどう説明すればいいのでしょうか?
そのことなら、心配はいらぬ。我の力で関係者全員に偽せ物の記憶を植えつけることができるぞ。
そうだな。おまえは行方不明になったのではなく、あの日突然重い病気にかかってしまい、遠くの町にある病院に入院したのだ。
そして、やっと病が癒えて、今日退院できたのだ。
それなら、みんな納得すると思います。
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