第19話


ヨシオ君はなおちゃんを抱きしめると、キスをしました。

すべては10年前になおちゃんの命を助けたい一心で、おばけのたまごの言うとおりに、なおちゃんにキスをしたことから始まったんです。

なおちゃんもヨシオ君を抱きしめながら言いました。

ヨシオ君に命を助けてもらったから、私はヨシオ君のことを待ち続けていられたのよ。

そして、いたずらっぽく笑いながら言いました。

よく覚えていないけど、あれが初キスだったのね。ちょっと残念ね。

ヨシオ君が赤くなって言いました。

僕だって初めてだったよ。あの時はなおちゃんを助けるのに必死だったから。

なおちゃんとヨシオ君が言いました。

王様。こんな私たちをどう思いますか?

おばけのたまごがなくても、世界中で私たちみたいなことは起こっていると思いますよ。

この世の中も捨てたものではないとは思いませんか?

おばけの王様は、なおちゃんたちを見て、微笑みながら言いました。

そうだな。世の中は捨てたものではなさそうだ。

少なくとも、今すぐに滅ぼしていいとは思えないな。

そ、それじゃあ。

うむ、我もそろそろ立ち直らなければいかんな。

ローチェよ。長らく待たせてすまなかった。不甲斐ない兄で、申し訳ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る