第9話

それから3日ほどたって、なおちゃんたちはおばあさんに会いに行きました。

この間は悪かったね。

さてと、これから肝腎な話しをするからね。

ちょっと長くなるからね。

おばあさんは、そう言うとため息をつきました。

今日はおばけの国とおばけの王様の話をしようかね。

今からはるか昔に、ある高い山のふもとの深い森に、おばけの国があった。

そこは大きな木が生い茂る森で、地表は根が絡み合い、とても人が歩くことはできなかった。

でも、おばけたちは飛べるので、住むのに問題はなかった。

そこで、おばけたちはその森におばけの国を作って、みんなで住んでいたんだよ。

それでもいくつかの人間の町や村とは、少しずつ交流するようになった。

だけどね。おばけたちはお人好しで疑うことを知らなかった。

だからね、人間は少しずつおばけたちを馬鹿にして、利用することしか考えないようになったのさ。

そして、とうとうおばけの王様の妹を言葉巧みにだまして、おばけの国の外に連れ出して、攫ってしまったんだよ。

おばけの王様はそれは心配して、近隣の町や村に遣いを出して問い合わせた。

けれども、人間たちは知らぬ存ぜぬで、まともに取りあおうとはしなかった。

そこで、おばけの王様は、お忍びで自分で調べだしたのさ。

そしてさんざん苦労して、とうとうある屋敷の地下室で、妹を見つけだした。

妹はさんざん痛めつけられた、ボロボロの変わり果てた姿になっていた。

おばけの王様は妹を抱きかかえて、泣きながら聞いたんだよ。

何でこんなにひどいことができるんだ?

我々が何をしたというのか?

すると、周りにいた人間たちは、おばけの王様をあざ笑って言いました。

おばけなんて人間じゃないからな。

弱くて人間じゃない奴らなんて、何をしてもいいんだよ。

おばけの王様の心の中で、何かが切れたんだよ。。

おばけの王様が正体を表すと同時に、一つの町が灰になってしまった。

生き物の姿は、何一つ残っていなかったんだよ。

でもそれだけではなかった。

怒り狂ったおばけの王様は、敵を探して7日7晩おばけの国の周りをさまよい歩いた。

そして人間を見つけると、たちどころに焼きつくしたので、おばけの国の周りに人間はほとんどいなくなってしまった。

こうして、人間の地図からおばけの国は消えたんだよ。

そしてわずかに生き残った人々は、おばけの恐ろしさを語り伝えたので、おばけたちにちょっかいを出そうとする者もいなくなったのさ。

おばあさんが一息つくと、なおちゃんが震える声で言いました。涙がこぼれています。

どうして、そんなにひどいことができるの?

おばあさんが言いました。

人間てぇのはね。自分たちと違っているものを排除しようとしたがるものなんだよ。

まして、それが自分たちよりも弱かったら、こんなふうに暴走することもあるんだよ。

歴史を調べてごらん。こんな話しは山ほど出てくるよ。

そして、おばけたちは人間にすっかり愛想を尽かしてしまい、どこか人間のいないところへ移り住もうとしていた。

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