第4話
それ以来、なおちゃんはちょっぴり変わった子になりました。
なおちゃんたちの年頃なら、アイドルに関心を持ってもおかしくはありません。
でも、なおちゃんはそんな女の子たちの話の輪には、決して入ろうとはしませんでした。
女の子たちがなおちゃんを誘うと、なおちゃんは決まって好きな人がいるからと言うのでした。でも、それが誰かを言うことはありませんでした。
みんな年頃になってくると、男の子から告白されるようになりました。
でも、なおちゃんはいくら告白されても首を縦に振りません。
私には好きな人がいるから、そう言って断ってしまいます。
ところが、それでもあきらめない男の子がいました。名前をマサオ君と言います。
マサオ君は10年間、毎年欠かさずに告白してきました。
事故から10年も経てば、みんな大人にさしかかってきます。
なおちゃんも、みんなが振り返るようなすてきな女の子になりました。
でも、なおちゃんの返事は変わりません。
私には好きな人がいるから。
いつもなら、マサオ君もその答えを聞いて引き下がるのですが、今回は違いました。
おまえの好きな人ってのは、ヨシオだろ。
もう10年も行方不明じゃないか。
なおちゃんは誰にも内緒にしていたはずの名前を口に出されて青ざめました。
マサオ君はなおもたたみかけます。
もう10年も音沙汰がないんだ。もうヨシオはとっくに死んでいるよ。
あんな奴に義理立てしても仕方ないだろ。
それより俺と遊びに行こうぜ。
ヨシオのことなんか、忘れさせてやるよ。
なおちゃんは泣きながら、耳をふさいで言いました。
そんなことない。ヨシオ君は生きているもの。私には分かるもの。
マサオ君はそんななおちゃんにいらついたのか、強引になおちゃんの腕をつかみました。
帰ってこないヨシオのことなんか放っておいて、俺と遊びに行こうぜ。
その時です。誰かの足音がしたと思ったら、マサオ君のほほを思いっきりひっぱたきました。
それはヨシオ君の姉のマリでした。
マリはなおちゃんを後ろにかばうと言いました。
あんた、何やってるのよ?
そりゃあ私もこの子には言いたいことがあるわよ。
でも無理矢理はだめでしょう。
なおちゃんも私も、あんたのことが大っ嫌いになったわよ。もう顔を見るのもいや。
さっさと行かないと、警察に通報するわよ。
マサオ君はマリの剣幕にたじろぐと、あわてて逃げていきました。
マリは逃げていくマサオ君の背中を睨んでいましたが、やがてため息をつくと言いました。
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