第24話 冒険者ランクと魔法収納・前編
『こんにちわ、リロアです。
いろいろバタバタしたけど、とりあえず夜雲の冒険者登録試験(?)は合格ってことで、ギルドカードの発行してもらえるみたい。
これでまずは
まぁ、この報告をするって言ってたら、先にドタバタが始まってしまって、えらく時間がかかってしまったわけですが・・・。
とりあえずまずは、回収したギルドカードからお返ししていくべきですかね』
◆1 冒険者ランク
夜雲のギルドカードの発行は従来の機器は使えないので、応接室で対応することになった。
朝にフローラの報告がてら、
ユッカがカップを片付け、レーナが夜雲達に席を進めて手続きが始まった。
リロアが並行して報告も行いたい旨を伝えたので、レーナが夜雲の冒険者登録の手続きをする横でユッカがリロアの対応を行うこととなった。
その時何度か応接室の前を通りかかった
「随分と色々なことを根ほり葉ほりと聞かれたものでござる」
さすがの夜雲も少しくたびれたように言葉を吐いた。
「街の人からの依頼で、お金を稼ぐという仕組みである以上、冒険者の方にも情報を担保に信用を得ていただかなければ成り立たないようにしているんです。冒険者がならず者の集団なんて言われていたのは昔の話にするためにも。」
レーナはあちこちと書類に目を落としながら、夜雲の疑問に答えを返した。
「冒険者達の権利獲得のため、残された子供たちの補償のため、街の困りごとの解決のため、適正な相場での冒険者の派遣の仲介。国がやってくれないことを冒険者達が集まって自発的にやり始めたことが大きくなり、それが今の冒険者
そこまで言うとレーナは書類に落としていた視線を外して、夜雲をまっすぐ見据えると
「小次郎さんにもそのあたり十分理解していただいたうえで、規律ある行動していただけたらと思います。」
と、凛とした声で言った。
「し、承知したでござる。」
後ろめたいことはないはずだが、その視線の強さに夜雲はすこしたじろぐ。
レーナは、その返事を聞いてから一拍置き。
「特に小次郎さんの場合は事情があるとは言え、ギルドカードが通常の物とは異なっているんです。いくら
「肝に銘じよう」
その返事を聞くとレーナはニコリと表情を崩して微笑む。
そして、夜雲の目の前に一枚のカードを差し出した。
「これがあなたのギルドカードです。いくら
「
「
「拙者の
「F
簡単に説明すると・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
●冒険者
Aランク・・・数多くの
Bランク・・・十分な経験と実績を積み、戦闘力としてもオーガ等大型モンスターとの戦闘にも対応できる実力を持っている。ベテランと言われる冒険者達だが、このクラスへの昇格は状況判断力のある・なしが、大きな判断基準とされている。
冒険者として、冷静に撤退時期を見極められるか、いわばリーダーとしての資質を求められる
Cランク・・・一人前の冒険者言われるランク。基本的に標準的なものであれば
冒険者として負傷の際の治療費の一部負担や、
Dランク・・・半人前ランク。冒険者登録をして、比較的簡単な
Eランク・・・駆け出しと呼ばれるランク。冒険者登録をしてから半年以上たてば、ここへ自動的に昇格する。ランクこそ上だが、
Fランク・・・冒険者登録した際に一番最初に与えられる冒険者
Gランク・・・特別
そのため冒険者以外でもギルドカードの所持を推奨して住民サービスと紐づけるなどの施策を行う国や地域が多い。いうなれば、冒険者以外の一般人が持つために存在する
Sランク・・・特別
冒険者の地位向上のため、その心構えや立ち振る舞いなど対外的な印象にも注力する
実際S
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・・・とまぁ、小次郎さんの場合も、今は冒険者として一番下のランクになりますが、Bランク以上冒険者が指導役として随伴同行してくれたり、駆け出しを狙った決闘を吹っ掛けられた時の助っ人の派遣、生存術等の訓練費用の割引など、この期間しか受けられないサービスプログラムがあります。あとは基本的には3ヵ月から半年生き残ることが出来たら、自動的に
「3ヵ月は、昇格出来ないという事でござるか」
「わざと高難度の
「なるほど・・・でござる」
逆を言えば、半年で落第点を言い渡される冒険者がいるということである。
なおGランクからFランクへの昇格は、BからA以上の高い壁があると言われ、これを乗り越えたものは、Sランクになったものより少ない。
夜雲は机の上に差し出された自分のギルドカードに目を落とす。
「先にリロア殿から見せてもらった物とは、幾分違うようでござるが」
夜雲が差し出されたカードを手に取って見つめる。色々細かく情報が刻まれているようだ。何が書かれているかは、さっぱりわかないが、以前にリロアに見せてもらったものは何も書かれていなかったはずだ。
「現在、多くの地域で使われているギルドカードは、持ち主本人の魔力を込めることで、その情報が開示されるものになっています。これは偽造や他人のカードを使ったなりすましを防ぐための措置でもあります。しかし、小次郎さんはその魔力の少なさから、ギルドカードに記載された情報を呼び出すための魔力を込めることが出来ません。ですので最初から最低限の情報が記載されたものをお渡しする事になります」
「今のギルドカードになる以前は、みんなそうだったと聞いたことがあります」
夜雲の隣に座っていたフローラが言う。彼女も当然ギルドカードを持っているが、やはりこの役雲のギルドカードは珍しいと思うようだ。
「以前はそうでしたね。ギルドカードも色々進化しているんですよ。これは見た目こそ昔の物ですが、現行のシステムに対応してますから、多くの
「あっ、私からの昨日の謝礼の分は・・・」
「この場で、預け入れの処理をすることも出来ますが、どうされますか?」
フローラとレーナの視線が夜雲に注がれる。
しかし夜雲は何を言っているのか理解が出来ていないようで、また隣に座っているリロアに視線を送った。
「お金を
リロアはユッカとのやり取りのなか求められた書類にサインをしながら、視線を返すこともせず答えた。
「どうせ、探索先のダンジョンではお金なんて何の意味もないものですから、同じ重さの水を持っていく方がよほどいいです。途中で行商人と行違ったりすることもあるので、多少の路銀は持っておくべきかと思いますが」
フローラが自身の経験から悟ったようなアドバイスを次いで話す。
「金は天下のまわりもの。言う通りなのでござろう。しかし拙者は、この世相に疎い。幾分かの路銀を手元にいただき、のこりはこのカウドなるものの中に入れていただくことは出来るのでござるか」
「ええ、もちろん。フローラさんもそれでよろしいですよね」
「私は、恩人に御礼が出来れば。どのように使っていただいても構いません」
「フローラ殿、心遣い感謝いたす、ありがたく頂戴するでござる」
自分の横に座るフローラに、両手を膝に置き頭を下げる夜雲。簡易的な形の礼ではあったが、ピシッと下げられた頭はしっかりと3秒間深いところで止まっていた。
「い、いえ・・・私はむしろ助けていただいた身。
フローラも一瞬たじろいだが、しっかりとした返礼をする。見た目の若さに似つかわしくないような堂に入った所作だ。名家「
夜雲は、フローラの言葉のあともゆっくりとひとつ数えてから頭をあげた。
「では10日ほどの宿への滞在費と、10日ほどの探索に必要な水・食糧を買い込めるだけのお金をお渡しして、残りはこちらでお預かりしておきます。もし別で入用になりましたら、いつでもカウンターでお声をおかけくださいね」
レーナがササッと書類に文字を書き込む。
「しかし、余分な路銀を持ち歩かなくてもいいのであるなら、それはありがたい仕組みでござる。しかしリロア殿のあれ、何と言ったでござろう、
レーナ、フローラ、ユッカ。三人がギョッとして驚きの表情を見せる、一瞬、周囲の空気が氷ついた。
リロアは一つ書類にサインを書き終えると、ペンを置いて夜雲に向き直った。
そして一つ呼吸をおいて話し始めた。
・・・続く
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