第13話 真の悪役(仮)育成日記(3)SideA※
この世界には魔法があり、同時に呪いもある。
それを未熟な魔術師が使うと、反動で命を落としたり、自然災害を起こしかねない。
なので、魔術師たちが集まる魔術協会は、呪いのことを公言しない。
というのも全て繰り返しで得た知識だ。
創造主であるロゼがペラペラと喋ってくれた。
ちなみにロゼの魔力は異常だが、呪いの使い方は知らないようだ。
俺は何度も繰り返しているうちに、王宮図書館の最奥にあった魔術本から、呪いの使い方を知った。
呪いは様々だ。
【侵食】相手をじわじわ苦しめる病のような呪い。
【即死】その場で息息絶える。防御値の高い人物に使うと弾かれてしまう恐れがあり。
【服従】相手の意志を関係なく従えること。
一例としてはこんな感じだ。小物の呪いから、禁術まで様々なものがある。
俺はヴィンセントを拘束して、屋敷の地下に引き摺っていった。
ヴィンセントの瞳は終始震えていた。
相当
◆
「さすが悪の組織の地下。拷問道具がいっぱいっすね」
俺はそう言いながら、ヴィンセントを椅子に座らせた。
椅子の腕置きには、銅でできた拘束具がついている。もちろんそれで両腕は使えないようにしている。足元には鎖。簡単に逃さないように。
「……なにを、するつもりだ」
赤い血色の瞳が俺をにらみつける。
「いやぁ、色々ありまして、貴方の位置を譲ってもらいたいんっすよ」
「……これでも俺は闇の住人だ。簡単に口を割ると思うか?」
仮にもプライドはあるらしい。それとも見通しが甘いだけなのか。
――じゃあ、しか無いよな。
「本当は魔法を使って苦しめるって手もあるんだけど、魔力がない人間でも行える手軽な方法でいってみましょうか。」
俺はある機械を取り出す。
「あくまで俺はこの組織が欲しいだけっす。それには貴方の知識もいるし、従者たち、暗殺者たちが何処にいるかどうかも確認しないといけない」
俺はヴィンセントの手元にある機械を取り付けた。
「――は?」
驚いた表情でこちらを見るヴィンセント。
もちろんこの屋敷は彼のものだ。だから彼が道具を把握していないわけがない。
「それじゃ、情報を吐くまで、サクッと爪を剥いていきましょうか」
爪を1枚、2枚、3枚ほど剥いだところでも口を割らない。
もう日が沈みかけている。ロゼの元に戻らないといけない。
まだ情報は吐かない。流石に一日の拷問じゃ、まだ生ぬるいか。
彼の拘束は解かず、そのまま少し頭を上に上げてもらう。
足元には大きめの桶を用意する。
……どこ出身の拷問かは忘れたけれど、この拷問は単純なものだ。ただ、かなりきついらしい。
水滴を額に垂らす、それだけだ。
それだけだ。ぴちゃりと鳴る音、軽い刺激でも、無限に行えば地獄になる。
あ、ちなみに舌は切ないように、口枷はつけている。
「これで明日の朝まで持つかなぁ~」
そろそろ日が暮れる。
お嬢のもとに戻らないといけない。
◆
屋敷に戻ると、ロゼは上機嫌だった。
どうやら大好きなシュークリームを料理長に作ってもらったらしい。
身なりも整っているから、脱走等はしてないだろう。
「あー、でも妃教育ってめんどくさいわ!
「本を頭に乗っけるやつですかい?」
「そんなレベルじゃないわ。あの教育者は鬼……鬼よ……!」
ロゼの顔は真っ青だった。相当スパルタだったようだ。
「で、アッシュは昼から何処に?」
「実はですね……旦那様が熊肉を食べたいと言ってきたので、熊を狩ってきやした」
「うそつき! 今日は魚の日だったわ! もう、アッシュってば、いつも私のことばっか、いじめて……」
「お嬢が照れるから悪いんですぜ」
「う~~~~~~~~! ばかばか、ばかうんちむし!」
おそらくロゼの中で一番悪い言葉が出てきたけど可愛いもんだ。
「でも、妃教育ってどうにかならないかしら。文献に目を通したり、マナーに気遣ったり、あーめんどくさーい」
お嬢が机の上に突っ伏す。
「大丈夫ですぜ、お嬢。もう少しの辛抱っすよ」
「そうよね! お妃様にはヒロインがなってくれますもの!」
ピカピカと目を輝かせるロゼ。
俺の手は汚れているけれど、彼女にはいつまでも笑顔で居てほしい。
だから俺は努力を惜しまない。
――ロゼを誰にも渡さないために。
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