第51話 (ライルハート視点)
最後にもう一度アイリスの頭を優しく撫でる。
それから振り返った俺の目に入ってきたのは、笑みを浮かべるアレスルージュの姿だった。
「そこまで、我が娘のことを気にかけてくれるとは、義理の父として嬉しい限りだ」
今までの状況を忘れたように、高圧的な態度で話しかけてくるアレスルージュ。
その態度は、何よりも雄弁にアレスルージュの考えを物語っていた。
アイリスを助ける、それは自分が助かること、そうアレスルージュは考えているのだろう。
だが、それはアレスルージュの勘違いでしかなかった。
そのことを教えるために、俺は一枚の紙を取り出し、アレスルージュへと投げつけた。
一瞬、アレスルージュの顔に疑問が浮かぶが、抵抗することなくその紙を拾う。
そして次の瞬間、アレスルージュの顔は驚愕に染まることとなった。
「なっ!?」
驚愕に染まったその顔は、少しづつ血の気が引いていく。
それに紙片の意味を理解したと判断し、俺は紙片。
──アレスルージュが今まで起こしてきた不正や、起こそうとしてきた事件を事細かに書き記したその紙を指差して口を開く。
「気に入ってもらえたか?そこまで調べるのは、中々俺でも厳しかったぞ。それだけあれば、確実にお前をこの立場から引きずり落とせるよな?」
いや、その立場から引きずり落とすだけでは済まないだろう。
これが、ほかの貴族達に広まれば、彼らは一致団結して公爵家を、アレスルージュを殺しにかかる。
それだけの情報が、その紙片には書き示されていた。
「……私を、助けるつもりはないと言いたいのか?」
アレスルージュは、その紙片を目にしてようやく俺の意思を理解した。
アレスルージュの言葉を肯定し、俺は笑った。
「準備に数年かけたが、ようやくこの時が来た。前と同じと思うな。もう絶対に見逃しはしない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます