第25話

「……はあ」


令息達に囲まれ、テラスの方へと連れてこられた私は、人知れず嘆息を漏らした。

令息達は、逃がさないようにとするためか、私を囲んでいる。

今からでは、ここから助けを呼ぼうとしても無駄でしかないだろう。


にもかかわらず、私の顔にはまるで焦りはなかった。


何せ、令息達がなぜ自分をここまで連れてきたのか、その全てを私は理解していたのだから。


「……夜会に姿を見せなかったのは、私を連れ去ってから出るためということしから」


私は、自分に向かって令息達が何か言うその前に、口を開いた。


「アリミナに何を言われたか知りませんが、やめておいた方が良いですよ。今ならすべて不問にしますから」


「っ!」


隠せない動揺を浮かべる令息達の姿、それが暗に私の言葉が図星であることを知らしめていた。

おそらく、この令息達は義妹に私と恋人関係にあった騒げ、とでも言われていているのだろう。

そう当たりをつけて、私は呆れを覚える。

そんなことをしても、無駄でしかないのにと。


「な、なんのことか………」


しかし、そんなことを知らない令息達は、明らかにもうそれどころではない状況にも関わらず、まだ引き下がろうとはしなかった。

それに、明らかに人選ミスをしたアリミナにも呆れを覚えながら、私は口を開いた。


「この先、まだアリミナに固執するなら、貴方達に待っているのは破滅ですよ」


「………え?」


私の言葉に、その顔を驚愕に染める令息達を見ながら、私は言葉を続ける。


「本当にサーレリア様を婚約破棄したことを、貴方のお父上が許したとでも思っているのですか?連絡がないのは、貴方の決定に文句が無いからではありませんよ。……貴方を切り捨てる準備を進めていると思いますよ」


「───っ!」


一人の令息の顔色が変わったのは、次の瞬間のことだった。

自分が誰であるか分かっていなければ口に出来ない情報が私の言葉に入っているのに気づいたのだろう。


今まで余裕があった令息達の顔が強ばったのはその瞬間だった。

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