第24話 (ライルハート視点)

「……何のようだ?」


このタイミングで現れたアリミナに対し、俺は警戒を抱かずにはいられなかった。

だが、そんな俺の視線に対しアリミナは欠片の動揺も見せなかった。


「ライルハート様、そんな邪険にされるのはあんまりですわ。私はただ、未来に家族になるかたと親しくしたいと思っているだけですのに」


異常とも思える程の魅力を醸し出しながら、アリミナは笑う。

本気で、俺の言葉を心外だと思っていると言いたげに。

それは、通常の男性であればアリミナの虜になってもおかしくないような魅力で……だが、アイリスを探すことを優先した俺は、アリミナとの会話は無駄だと判断し、流すことにした。


「そうか。わかった。もう十分だ」


「……え?」


アリミナが呆然と声を上げるのが分かるが、それを無視してアイリスの行方を探す。

心臓が早鐘を打つのがわかる。

アイリスは確かにただの令嬢とは違い、対応力もある人間だ。


……しかし、公爵家の存在を知るからこそ俺は安堵を抱くことが出来なかった。


だからこそ、俺は激しい怒りを抱いて──アリミナが口を開いたのはそのときだった。


「あ、あら、あんなところにお姉さまと令息方姿が。……まさか、お姉様が不貞を働いていたなんて!」


「っ!」


その声に反応し、俺はアリミナの視線の先、丁度踊り場から覗けるテラスへと目をやる。


そこには、令息達に囲まれたアイリスの姿があった。


ここからでは、その場所を上手く伺うことなんて出来ないが、令息達とアイリスが逢い引きしているようにも見える。


「……はあ」


けれど、その光景を見て俺が何か勘違いすることはなかった。

明らかに異常な状況にもかかわらず、アイリスがなぜおとなしく着いていったか、そこまで理解して思わず頭を抱えたくなる。


「………お節介焼きめ」


アリミナが、もたれ掛かろうとしてくるのが、そのときすでに俺はアリミナの存在を頭から締め出していた。


「ライルハート様、姉が申し訳ありません。こんなこと私も……」


「邪魔だ。後にしてくれ」


それだけ告げ、俺はアイリスのところへと歩き出した。

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