第18話 (ライルハート視点)
一瞬、兄貴の言葉に俺は動きを止める。
だが、直ぐに俺は兄貴の言葉を否定した。
「いや、それはあり得ない」
兄貴の気持ちは俺にも理解できた。
というか、俺もアリミナが誘惑している可能性は一度は考えたのたから。
それでも、最終的に俺は、あり得ないと判断した。
何故なら、今俺を誘惑するのは愚行中の愚行でしかないからだ。
「こんな状況で、アイリスの婚約者を奪おうとする訳が無いだろう」
平民であるアリミナは、公爵家の人間でありながら、決してその地位は高くない。
そんな彼女が、今もこうして貴族社会に身を置いているのは、全てアイリスのお陰なのだ。
そんな状況で、姉の婚約者を奪うなど、どれだけ愚かな人間でも考えないだろう。
「……まあ、たしかに」
同じ考えに至ったのか、兄貴も頷く。
その様子を見ながら、俺は改めて自分に言い聞かす。
やはり、あの時感じた違和感は気のせいに違いない。
幾ら、アリミナでもこれ以上愚かなことはしないはずだと。
俺と同じ考えに至った兄貴の姿を見て、その思いを俺は改めて強くする。
「それに、例えアリミナが俺を狙っていたとしても、特に問題はないからな」
「………え?」
疑問を顔に浮かべる兄貴、それを見ながら俺は笑ってみせる。
「──その場合はただ、あのアリミナを俺が潰せばいいいだけなんだから」
「っ!」
まるでこともなげに、そう告げた俺を見て兄貴の顔に驚愕が走る。
だが、その言葉は俺にとって本当にその程度のことだ。
──いつか公爵家を潰すために、準備を整えてきた俺にとっては。
「だから別に今すぐ、真意を探るつもりはない」
そう、もしアリミナが何かを狙っているのだとすれば、その時動けばいい。
それでまるで問題はないのだ。
それに、そもそもアリミナの行動は無意味でしかない。
「何せ、アイリスが俺を見限るならともかく、俺がアイリス以外の人間に目を向ける可能せなんて皆無なのだからな」
そう呟き、俺は小さく笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます