第15話

「ふへへ……」


それから数分後、自室に舞い戻った私は緩みきった顔で、毛布を抱えてベッドに座っていた。


我ながら、今の自分は絶対に情けない顔をしているだろうな、とそう分かる。

絶対に、ライルハート様には見せられないような顔だ。


だが、それを理解しても私が緩んだ顔を引き締めることはできなった。


それ程に、リサから聞かされた話は私にとって嬉しいものだった。


「まさか、ライルハート様がそんなに私のことをよく言っていてくれたなんて……」


そう呟いた私は、小さく悲鳴を漏らして毛布をぎゅっと抱き締める。

子供っぽいと思わないでもないが、こうでもしないと消化出来ないほどの嬉しさを私は覚えていて……そんな私を正気に戻したのは、扉の外から聞こえたアリーナの声だった。


「あ、アイリス様、よろしいでしょうか?」


「っ!り、リサ、どうしたの?」


なんとかリサに返事をするもの、今までの自分の騒ぎが聞かれなかもしれない、そう考えて私の顔は羞恥で一気に赤く染まった。

せめて、もう少し声を潜めていれば。

そんな後悔が、私の頭を支配する。


しかし、次の瞬間リサが告げた言葉に、私の頭から羞恥が消え去ることとなった。


「ライルハート様から、お手紙を頂きました」


「え?」


一瞬私は驚きを隠せず、惚けた声を上げてしまった。

丁度リサから話を聞いた直後に来た手紙。

今の私は、その手紙にどこか期待のようなものを抱かずにはいられなくて……


けれど、その私の想像に反して手紙の中に書かれていたのは、当たり障りのないことだけだった。


「むぅ……」


自分の妄想が上手くいかなかっただけ、それを理解しながらも私は思わず小さく不満の声を漏らさずにはいられなかった。

普段通りの手紙であることに不満を抱くことがおかしいと理解しながらも、期待を抱いてしまったからこそ割り切ることができない。


私が、あることを思いついたのはその時だった。


「ふふふ」


思いつきを実行すべく私は、直ぐに返信の手紙を書き始める。

私の顔には、隠す気の無い悪どい笑みが浮かんでいた……。

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