第11話 (アルフォード視点)
「ああ!その気持ちはよく分かる!アイリスはお節介焼きはたしかに異常だよな。本当にどれだけらそれだけ他人を省みる暇があれば、自分を見直せと思ったことか……」
「………え?」
態度を激変させた俺に、アリミナが混乱していることが伝わってくる。
だが、その変化も気にせず、俺は満面の笑みを浮かべる。
それも仕方ないことだろう。
俺は今まで、貴族達の目を欺くために敢えて道化を振る舞っている。
それを後悔したことはないが、そのせいで俺は同年代の貴族と会話する機会が激減しているのだ。
だから、アリミナは俺にとって初めての同士だった。
──そう、アイリスのお節介について話せる同士。
今はもう、俺はアリミナに対して警戒をしていなかった。
確かに、アリミナの態度はあからさまにアイリスに虐められているとアピールしているようにも感じられる。
しかし、お節介と一言で俺はそれが勘違いだと理解していた。
何せ、アリミナお節介と言う言葉を告げたということは、アイリスの行動を知っているということなのだから。
だから俺は、何も気にすることなく初めてできた同士へと、アイリスへの想いを語る。
「本当に、アイリスはどうしようもないお節介焼きだ。だが、それがいい」
「え、ええ、そうですわね」
時々、貴族社会で俺がアイリスを嫌っているのではないか、そんな噂が出る時がある。
だが、それは全て出鱈目でしかない。
……にもかかわらず、貴族との交流を避けているせいで間違いだと主張することもできない。
唯一アイリスのことを話せるのは、俺の部下だけなのだが、そいつもこの頃俺が話そうとした瞬間逃げ出そうとする始末。
それらさまざまな要因のせいで、俺の中にはかなりの鬱憤が溜まっていて、それが今話せる相手を得たことで爆発していた。
だから、その時の俺は気づいていなかった。
……話を進めるごとに、アリミナの顔がどんどん悲痛なものとなっていくことに。
「そういえば、この頃アイリスがダイエットしているらしいんだが、そんなに気にする体型ではないと思わないか?……あ、アイリスは結構今のままでいいと思うんだが」
「えーと、その、そ、そうかもしれないですね……」
最終的に俺がアリミナを解放したのは、それから数十分後。
屋敷の使用人に叩きだされるまで、アリミナは俺の惚気とも雑談とも取れる会話を聞かされ続けた……。
◇◆◇
「うん、今日はなかなかない良い日だったな」
アイリスの屋敷から帰った後も、話し相手を見つけた俺の機嫌は良かった。
だが一つ、俺には心残りが存在していた。
「……結局アイリスとは会えなかったな」
それは、アイリスの存在。
かなりの時間玄関にいたはずなのだが、結局アイリスが来ることはなかったのだ。
そのことは、心の中にしこりとして残っていて、だから俺はあることを決めた。
「……手紙でも出すか」
幸い、あと少しで社交界がある。
それの打ち合わせとすれば、手紙を出しても不審がられることはないだろう。
「手紙とともに贈り物をしても良いしな」
そう判断した俺は、すぐに行動し始めていた。
手紙を受け取ってもらえた時のアイリスの反応を想像し、笑うその時の俺は、未だアリミナをただの話し相手としか考えていなかった……。
◇◇◇
次回、全く相手されなかったアリミナ目線です。
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