(4)

 一方、急に暴れ出した、おっさんの方は……もう1人のおっさんの一喝で……あれ?

 さっきは急に暴れ出したと思ったら、今度は急に倒れ……。

「ええええ? あれ? どうなって……えっと……? ち……ちがうッ‼ 私じゃないッ‼」

 確かに変だ。

 「昔は羽振りが良かったが、今は零落おちぶれてる」系のおっさんが使ったのは……でも……。

「待ちなさい」

 また、誰か出て来……おい……何だ、この「気」は……。

 同業だから判る……。こいつは……「魔法使い」……それも……「気」の量だけなら、俺の元の組織の首領さえ上回る……おい、危険なヤツは居ない筈じゃ……いや、こいつはヒーロー側なのか?

「いくら人を助ける為とは言え……『精神操作』を使うのは感心しませんね……」

 おい……何だよ?……俺より一〇以上若そうなのに……この……とんでもない「気」の量は……?

 とんでもない才能の持ち主だったか……とんでもない努力をしてきたか……さもなくば……。

「な……何だと? ほう……君にも判るのかね?」

 そうだ……このおっさんは、確かにさっき「精神操作」を使った。

 おそらくは、いわゆる「超能力者」。特定の「魔法」を修行なしに使える連中の1人だろう……。

 生まれ付きか修行かは別にして原理は同じ「力」「能力」なので、「魔法使い」は「超能力」を検知する事が出来る。例え、自分の専門とは違う系統のモノでも、「超能力」の発動に伴なう「気」「霊力」は感知可能だ。

 でも、おかしい。

 こいつが、今、使った「精神操作」は、微弱なモノ。せいぜい「相手の気分や感情を少し変える」程度で……気を失なわせるのは無理だ。

「その通りだ。君の能力なら……他に手段も有った筈だ」

 急に口を出してきた同業者魔法使いの「気」が、どんどん高まる。

 まるで凍り付いたかのように張り詰めた空気……。

「違う……予想外の事だ。私は……悪くない」

 再びおっさんが「精神操作」を発動。しかし……「魔法使い」と「超能力者」では、「力」「能力」の原理は似たようなモノでも、技術に関しては一般的に「魔法使い」の方が上。

 つまり、「精神操作」系の「超能力者」では「魔法使い」を「精神操作」するのは困難だ。まして、この、とんでもない「気」の量の……。

「そ……そうですね……。貴方の言う通りだって気がしてきました。ともかく、この人の手当を……」

 はぁ?

 どうなってる?

 俺には、あのおっさんの「精神操作」は効いてない……事前に気配を察知して自分の心を防御したからだ……のに、俺より遥かに力が上の、こいつには「精神操作」が効いてる?

「あ……ちょっと待って下さい」

 その時、別の男がやって来て……倒れたおっさんの上着からピルケースと正体不明の注射器を取り出し……。

「あ……あれ……」

「はい、甘いモノでも食べて、しばらく安静にしてて下さい」

「は……はい……」

 男が薬と水を飲ませ、注射を打って十数秒で、おっさんは意識を取り戻した。

「あ……あの……何をやったんですか?」

 俺は、念の為、その男に聞いた。

「ああ、即効性の血圧降下剤とブドウ糖の錠剤です」

「はぁ?」

「あの人、時々ああなるんで、もし、その場に居合わせたら、誰かを呼ぶか処置をして下さい」

 いや……待て……どうなって……。そう言や、海に飛び込んだ若造はどうなっ……。

 おい、本当にどうなってる?

 潜水服を着たヤツ2人が……あの若造を……

 ベタ過ぎるにも程が有る……。

 なんて。

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