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 心にあった悪意は少しずつ小さくなってきていたが、まだ不安定なままだった。苛立ちやすい頭になっていた。これはいつまで続くだろう。自分は浮き沈みが激しく、また、沈みが長いタイプだと思う。もう暫くはこのままな気がする。




 ラケットを忘れた話は、今では、顧問や他の誰ももう問題にしていない。ただ一人、俺だけが引き摺っている。自分についての印象的なことはなかなか消えないものだ。それぞれにそういう何かはある。そしてそれは他人には分からない。




 逆に、自分の姿は自分が一番分からない。だから、それについて人が思っていることがズレていることがある。明るく振る舞っているつもりでも、別の姿が見えているかもしれない。




 例えば俺は、とりあえず自信だけは持って試合に臨むようにしている。でも、そう見られていない。よく悲愴感という言葉を使われる。何が理由なのか答えは出ず、どう居れば良いのか余計分からなくなる。




 この前あったテストもあまり良くなかった。なんだか小さな辛いことが積み重なっている。そして、一つも解消できないまま、明日になる。部屋の机のように散らかっていく。どれから捨てればいいのか見たくもないから、要らないと分かっているものも一向に片付かないのだ。




 俺一人ではどうにもできない、気がする。

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