仕事の時間
「この仕事の目的は大きく分けて2つある。1つ目は組織の規模を探ること。
二つ目は組織の最終的な目的を暴き、これからも続くと予想される研究所の連続破壊を止める手がかりを掴むことだ。
依頼者からは“あのよく分からん組織を解体してくれ!!”なんて無理難題を押し付けられそうになったがそこはうまくごまかしといたから安心してくれ。」
「よかったぁ、最近は探偵を何でも屋と勘違いしている人も多いから荒事になるような依頼してくる人多いんだよね。」
「何言ってんのよあんたは、いざ依頼になったら能力の副作用かなんだか知らないけど自分から荒事にしようとするじゃない、、、
それにねぇ、依頼を取ってくるのはいっつもドールよ、贅沢言わないの!」
「僕はドールが苦手な肉弾戦ができることを買われていつも一緒に仕事に行ってるんだ。
知恵のドールに力の僕、いい相棒だと思わないかい?
なぁドール。」
「まあ確かにポデルの力を買っているのは確かだな。」
「なによ、私のほうがドールの役に立てるんだから!そんな親し気にしないでっ!」
「マニプラールは相変わらずだなあ、別に僕はドールを独占しようとしているわけじゃないのに。そんなに必死だとこの前相談してくれたことがば、、、」
「……っ! 黙りなさい!!!」
「何のことだ、私が仲間に能力を使わないことは知っているだろう?
教えてくれてもいいじゃないか。」
半分ホントで半分嘘だ。
私は自分の仲間に能力を使わない。
自分の心の中身を覗かれたりかき回されたりするのは
気持ちの良いことではないだろうから。
しかしマニが焦っている理由は見当がつく。
彼女は恐らく私に恋をしている。
それこそどこぞの鈍感主人公でもない限り気付く。
だが私にはその気持ちには応えられない。それはきっと間違った感情だから。
思い返せば10年くらい前だったか、丁度能力開発が始まったころ、
当時18歳だった私は新米探偵として走り回っていた。
そして依頼を遂行していた時、拾ったのが当時6歳だったマニだった。
それ以来うちで育ててきた。異性との出会いも少なかった。
自分を育ててくれたのだから多少の感謝の念を抱くのは理解できる。
しかしそれは“恋”ではない。
だから私は気付かないふりをする。
それがきっと正しいから。
「ド、ドール、何でもないの。」
「そうか。」
「(バレるところだったじゃない!)」
「(悪かったよ、、、)」
「さて、目的は共有できたしそろそろ実地調査といこうか。
今回調査するのは郊外にある廃ビルだ。
不審な人影を見かけたという情報が入ってる。
それにその地域の金の流れに不自然な点もいくつかあることを調査済みだ。
重要な拠点の可能性もあるから気を引き締めて臨んでほしい。」
「わかってるわよ。」
「ほんとか?マニプラール。いつも危なっかしいんだよなぁ。」
「あんたにだけは言われたくないわ!」
------そんな話をしていた3時間後、
「うげぇ、、、こんなとこに入るのぉ?」
「仕事なんだから我慢しろ」
「だってぇ、、、」
今回の調査対象は今にも崩れそうな高層ビル、所々ツタが生い茂っており、いかにもな雰囲気を醸し出している。
表門は厳重に封鎖されていたため私たちはビルの周りを探っていると裏口と思われる古い扉を発見した。
「ポデル、頼めるか?」
「おう、“Fuerza” ふんっ」
(メキッ、メキメキッ、バキッ…… キィー、、、)
ポデルには自身の筋力を飛躍的に向上させる能力がある。
そのおかげでこうやって劣化した扉程度なら無理やり開けることもできる。
重機などでこじ開けるより静かだし、周囲に住んでいる人にも怪しまれずらい。
まあ副作用のような物はあるのだが、、、
「助かる。それでは内部調査と行こうか。」
内部もさすが廃ビルといった面持ちで明かりはなく、鬱蒼としたツタだけが内壁を飾り立てている。
やけに反響する自らの足音は不安という感情を膨れ上がらせるには十分すぎた。
「うぅ…っ」
「どうした?マニプラール。いつも五月蠅いおしゃべり虫が今日はお留守か?」
「黙りなさいよぉ、、、」
(シュル、シュルシュル、)
「ひっ、何っ⁉」
「……このビルの住人さんのお出ましのようだ。」
館内放送のような合成音声がフロアに反響するとともにツタが人の形を成していく。
「やあ、侵入者諸君、なんでここがわかったかは分からないけど、
これ以上奥に行かせる訳にはいかないんだヨ。」
次の瞬間人の形をしたツタの塊はドリルのような腕を複数生成し、空気を切り裂きながら
向かってくる。そのスピードは危機を感じ、どうにかしなければならないと行動を起こすには十分猶予があったが周りに遮蔽物の無い廃ビルでは到底防げるものでは無いと思われた。
が、しかし私は一歩たりとも動くことは無かった。
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