第918話 3層目も派手な鳥が出迎えてくれる件
2層の続きだが、ワイバーンの出現した巨大施設は何事もなく通過出来た。荒野みたいなセットを組んであったのに、その後は何も無かったのはやや肩透かし。
その後の岩だらけのエリアでは、再びやさぐれ顔のペンギン獣人が群れでの出迎え。壮絶な殴り合いを制して、そのエリアも無事に通過する事が出来た。
その次のエリアの奥にに階層主が待ち構えていて、それは一際巨大なワイバーンだった。ソイツは飛行しておらず、地上のゲートを守るような仕草。
尻尾もぬらりと毒液を帯びていて、筋肉質な体躯は地上でのド突き合いも手強そう。炎でも吐くんじゃないかと思ったが、やって来たのは単純な咬み付き攻撃だった。
それと同時に尻尾の毒攻撃も厄介で、この巨体に好きに暴れ回られるとハスキー達でも
それでも来栖家の前衛ズは、
そこに風を
そして、いつの間にか毒の尻尾もレイジーに斬り刻まれて、巨大ワイバーンの攻撃手段は徐々に封じ込まれて行く。暴れ回る敵だが、姫香の一撃が右翼に入って来栖家チームが一気に勝勢に。
後はそのまま階層主を討伐に至って、見事に魔石(中)と次の層のゲート権利をゲット。巨体の主は、ワイバーン肉と分厚い皮もドロップしてくれた。
さすが階層主と、素直に喜ぶ子供たちは元気にそれらを回収して行く。それから休憩を挟んで、今は3層へと辿り着いた所。そこも同じく、ガラスだかビニールだかの張られた広い建物エリアであった。
「おんなじエリアの繰り返しだね、ハスキー達ももう慣れて進み始めちゃってるよ。出て来る敵はどんなかな、こっちも同じ感じだと楽が出来るね」
「またワイバーンが出て来たら、倒すのは一苦労だけどね。やっぱり飛行タイプは、ハスキー達もなかなか手出しできないから要注意だよねっ。
そんな訳で、香多奈も空中のチェックは怠るんじゃないわよ」
「パッと見た感じじゃ、そこまで大きくない建物だしワイバーンは出ないかな? でも他の鳥型のモンスターが襲って来るかもだから、確かに空の警護も必要だよね。
後は、さっき引っ掛かった植物型モンスターの待ち伏せとかもねっ」
そう締めくくる長女に、そうだねと姫香も気を引き締め直して中衛へと戻って行く。それに追従するルルンバちゃんは、しっかり敵の接近を感知するぞとこちらも気合充分。
そんなAIロボの考える事が、何故か家族の香多奈以外にも最近は分かるようになって来た。妙な感覚ではあるが、
何しろハスキー達やミケのご機嫌や体調は、飼い主だけあって家族の面々は大抵分かるのだ。その延長だと考えれば、会話が出来ないAIロボだって心が通じ合えても不思議ではない。
そんな一行は、3層目となったこのエリアも順調に探索を進めて行く。今回はどうやら、植物と鳥類の混合型エリアから始まったようだ。
ウッドゴーレムやペリカン型の鳥モンスターの襲撃を、苦も無く
ペリカン鳥モンスターはなかなか立派なサイズで、ハスキー達程度ならその
中衛の姫香も、ハスキー達に気を付けてと警告を飛ばしながらの攻撃参加。と言うか、一番気を付けるべきなのは明らかに茶々萌コンビだろう。
それに気付いた時には、その技は既に発動した後だった。後衛からもエエッと言う驚き声、そしてのど袋に綺麗に収納される茶々丸と萌のコンビであった。
「大変っ、アイツ飛び去ろうとしているよっ、姫香お姉ちゃんっ! 連れ去られたら、探すの大変だから戻っておいで、茶々丸に萌っ!」
「うわあっ、凄い良く伸びる袋だねぇ……あれって嘴の一部じゃなくて、実はペリカンの皮膚だって知ってた、香多奈ちゃん?
あれは魚を捕るための網の役目を果たしてるんだって!」
「おっと、さすがに理不尽に捕えられたら2匹とも暴れるよなぁ……香多奈、心配しなくても茶々萌コンビは、ちゃんと自力で脱出できそうだよ。
それより、追加で球根モンスターが地面から出て来たぞ、みんなっ!」
そんな訳で、心配されていたチビッ子コンビは自力での脱出を果たした事で家族に無視される悲しい運命に。今やチームの注目は、土から這い出して奇襲して来た球根モンスターに向いてるのだから仕方がない。
萌の槍で袋を破って脱出した両者は、茶々丸の
その辺は、全く懲りない性格が上手く作用していて良い感じ。フォローに入ろうとしていたルルンバちゃんだが、両者の無事を確認してウッドゴーレムの討伐へと反転して行くり。
何しろ、すぐ近くの木立から敵のお替わりが激しくやって来ているのだ。そのウッドゴーレムには蔦型モンスターが巻き付いており、何と二部位で襲い掛かって来る。
それでも5分後には、その勢いもようやく落ち着いてくれた。とは言え、追加のウッドゴーレムは1ダース、奇襲の球根モンスターも同じ位で凄い波ではあった。
それを乗り切った一行は、ようやく終わったかとホッと一息ついてお互いの無事を確認し合う。後衛陣も球根モンスターの奇襲に
そう言う意味では、ルルンバちゃんの《並列思考》も
そんな派手な襲撃を切り抜けて、休憩と怪我チェックを終えて来栖家チームは再び探索を再開する。袋に収納された茶々萌コンビだが、呆れた事に怪我もなくピンピンしていた。
そして次の建物は、大きな岩も転がる荒野のようなエリア構成。ここはペンギン獣人が出そうだねとの、末妹の言葉を聞きつけたかのように出現するやさぐれ集団。
今回も棍棒や太いフリッパーを、これ見よがしに誇示して挑発して来るペンギン獣人の集団である。それに対して、ハスキー軍団は飽くまで冷静に対処している。
具体的には、肉弾戦に
「いいよっ、ハスキー達っ……茶々萌コンビも、ハスキー達を見習って外側の敵から倒すんだよっ。間違っても真ん中に突進しちゃダメだからねっ!
ルルンバちゃんは、この位置からみんなのフォロー役を頑張って」
「みんな頑張れっ、そんなヤンキーたちに負けちゃダメだよっ!」
香多奈の『応援』が響く中、すっかり定番の敵となったペンギン獣人との戦いは
魔石も微小サイズで、このダンジョンではパペット兵と同位置なのだろう。その割には威勢が良い敵で、さすがA級ランクのダンジョンを支える存在と言う所だろうか。
そんな事を話しつつ、一行は次の建物の扉を潜って探索を進めて行く。時間的には、そろそろ次の層へのゲートが見えて来ても良い頃合いだ。
つまりは階層主もいるって事で、まるで毎回中ボス戦を行うようなこのダンジョンはちょっと異常かも。今更それに気付いて、文句を口にする末妹だがもう遅い。
このエリアで出て来たのは、初見のすらっとした容姿の鳥型の獣人だった。嘴が長くて目の周囲が赤いその獣人を見て、紗良がトキかなぁと自信なさげに呟く。
そいつ等は装備も立派で、何より広げた翼がピンク色でとっても綺麗。とか思って見ていたら、そこから飛来する多数の羽根の刃!
フェザーシュートの攻撃を受けて、先行していたハスキー達は一転ピンチに。何しろ範囲が広くて、近距離で受けたら避けようも無いのだ。
慌てる姫香だが、幸いにも威力はそれ程でも無かった模様。レイジーは普通に炎のブレスで反撃しており、ツグミとコロ助も武器を振るって敵を駆逐して行っている。
茶々萌コンビも少し遅れて参戦したお陰で、その攻撃を浴びずに済んで何より。ルルンバちゃんも、盾になろうと前進しながら魔銃でのフォローを行なっている。
そんな戦闘音を聞きつけたのか、のっそりと岩の奥から顔を出す4メートル級の巨長が1匹。派手な色合いの羽毛に覆われたそいつは、飛べない進化をしたのか蹴爪がとっても立派だ。
獰猛そうな嘴は猛禽類のそれで、発した鳴き声で一瞬にして戦場に戦慄が走った。と言うか、スキルか何かで威圧が含まれていたと思われる。
負けずに《咆哮》を放つレイジーと、果敢にそいつに突っ込んで行くコロ助。そして案の定、放たれた前蹴りで吹き飛ばされて行くコロ助であった。
「うわっ、コロ助っ……ルルンバちゃん、前へ出てフォローしてっ! レイジーにツグミ、下手に近付いたらコロ助の二の舞だよっ!
あっ、コイツ風の防御も持ってる!?」
「うおっ、矢弾が弾かれたのは風の防御のせいか……コイツは手強いな、俺も前に出ようか。2号ちゃん、後の守りを頼んだよ」
「コロ助っ、大丈夫っ……? よくもコロ助を
そんな香多奈の言葉に『叱責』が乗って、途端に弱体化のデバフ効果を受ける階層主。元がバランスの悪い体型のせいで、クタッと前のめりに倒れて行く破目に。
要するに腰砕けの状態に、これをチャンスと近付いたレイジーが
後には魔石(中)とお肉の塊、それから羽毛がたっぷりドロップしていた。ちなみに最初に出て来たトキ獣人(仮)も、姫香とツグミの活躍で全滅に至った。
それを確認して、大慌てで前線へと出向く紗良と香多奈である。吹っ飛んだコロ助だが、今は巨大化も解いて横たわっており、幸いにも意識はあるようだ。
護人やレイジー達も心配して寄って来るが、紗良の『回復』スキルはあっと言う間にダメージを無かった事にして行く。そして元気に尻尾を振るコロ助に、ようやく安堵の表情の香多奈であった。
そしてトキ獣人(仮)は、出現地点に集落みたいな仮拠点を作っており、そこには宝箱も置かれてあった。そしてようやく巡り合った、鑑定の書や木の実や魔玉(風)などの定番品。
ポーションやエーテルなどの薬品類も数本入っていて、後は鳥籠や鳥のエサ入れなどが数点。一番の大物はスキル書が1枚、それからミスリルインゴットが2本ほど。
このダンジョン、やはり難易度は高いけど儲けもしっかり高そうだ。コロ助を撫で上げながら、ようやく末妹も現金な笑顔を見せてくれた。
コロ助もペロリと主人の顔を舐めて、心配かけてごめんねの合図。
――これでまだ3層、大物は今後もたくさん出て来そうな気配。
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