第419話 いよいよギルド合宿も最後の週に突入する件
ギルド合宿と称して行われている、このGWのお泊り会も残りあと僅か。念願の“アビス”探索もこなす事が出来たお泊まり組は、大満足で残りの日々を過ごしていた。
特にこっちで新スキルを得た、みっちゃんと怜央奈は上機嫌。探索中にお試しも出来たし、夕方の特訓でも毎回使い心地を試している。
後は練度を上げて、流れる様に使えるようになれれば言う事無し。スキルを覚えられなかった陽菜も、特訓では一番熱が入っていて成長率は一番かも。
それもこれも《獣化》スキルを持つ彼女を、獣人のザジが目を掛けていたってのが大きい。使う武器や戦闘での動きも似ているし、とにかく特訓では
そんな成果を実感出来て、お泊まり会の終盤には見違えるほどに
本当に、この3週間で探索者として1ランク上がったような心地である。
ギルドとしての派手なイベントや、繋がり的には薄い感じの『日馬割』ではあるけれど。こうしてお泊まり会を通じて、実りのある日々を過ごせたのは大いなる実績である。
主催した形の姫香にしても、大いに満足な結果となった次第。香多奈もキッズチームの始動に関しては、とっても面白かったと満足していた。
まぁ、護人からすればもう懲り懲りだと内心で思っているに違いない。ペット達にしても、変則的な探索よりもやはり来栖家としての活動の方が良いに違いない。
そんなお泊まり会の後半だが、あとは大きなイベントとして残っているのは青空市へのブース参加くらい。期待された露天風呂建設だったけど、さすがにこの短期間では業者は捕まらず。
その代わり、植松の爺と姫香に手伝って貰って、中庭の一角にピザ窯を作る事は何とか出来た。もっともこれも、地元産のチーズのお陰もあって高評価を頂いた次第。
お泊まり組やお隣さん家族も含めて、初の火入れの際には結構な盛り上がりを見せてくれた。ホスト役の護人の立場では、これで精一杯の持て成しである。
お手製のピザも美味しかったし、満足過ぎる敷地内イベントだった。
他にもイベントとは違うけど、前回探索した“アビス”の動画依頼と換金作業を2チームで行った。協会としても、動画の元データの買い取りを含めて、多めに料金を出してくれて何よりである。
それだけ、協会本部も“アビス”の景品を含めてのダンジョン資産の価値を認めているようだ。何しろ『ワープ装置』の普及は、探索業でなくても未来の最先端技術と言って過言ではない。
今回の協会参りは、暇も手伝って探索したチーム全員で向かう事に。2台の車を使っての協会
その頃には、お泊まり組と土屋&柊木組もかなり仲良くなっていて何より。それは、一緒について来たザジにしても同じく。信頼感とは別の、チームの
問題なのは、今回の報酬の分配についてである。全ての回収品を現金化するのは、協会の資本的にも無理な相談だ。そこで来栖家も協力しての、全員が納得する分配を提示する事に。
つまりは護人も出向いての、来栖家の持ち出し込みでの話し合いである。別に誰もゴネる雰囲気は無いのだが、姫香は至って真面目顔でギルド会を開きますと一言。
いつの間にかギルド員認定された土屋と柊木も、神妙な顔付き。
「ギルドやチームで、一番揉めて解散の原因になるのが報酬分配についてみたいなんだよね。私たちは友達だったりご近所だったり、絆は色々だけどそこに甘えちゃいけないと思うの。
だから、誰からも不満が出ないようにここはみんなの意見を聞かなくちゃ」
「私たちは、そんなに不満は言わないと思うけど……今後の探索の効率アップのために、出来れば魔法の鞄が欲しいって程度かな?
それについては、今回の“アビス”探索で何とか2個ほど自販機で購入出来たぞ」
「人数分には全然足りないよね、私も魔法の鞄は欲しいし……みっちゃんも欲しいって言ってたよね、
陽菜の言葉に乗っかる怜央奈は、若いけどハッキリとモノを言うタイプでこんな時には有り難い。変に遠慮をされると、分配作業も滞ってしまう。
結果、土屋と柊木は水耐性の装備で充分助かるとの返答だった。今後も“アビス”に通えるのなら、それは必須のアイテムなので自分専用のは欲しいに決まっている。
星羅はどうも、この地で新たな一歩を踏み出したいと考えているみたい。つまりは自身のマイナーチェンジとして、前衛の動きも覚えたいそうな。
その為の武器や防具を欲していて、今回は出なかったので何でも良いとの話。武器が欲しいなら、今までの探索のストックがウチにあるよと姫香の申し出に。
全く遠慮も無く、それじゃあ欲しいのあったら持って行くねと返す星羅であった。既にギルドに入ったとの認識で、来栖家との垣根も無い感じ。
元々が田舎の出身なので、ノリが合うのかも知れない。新しい姉ポジションと言うか、今は隣の家に
もっとも、嫁いだのではなく協会の2人と共同生活を始めたのだけど。
この引っ越しも手軽に片付けて、夕食は未だに食べに来たりもする間柄に変わりはない。そんな彼女も、当然ながらギルドの分配に文句を言う筈もなく。
ちなみに、“アビス”で回収した魔法アイテムは全部で5つ。
【ウツボの腕輪】装備効果:水耐性up&ステup・中
【魔タコの腕輪】装備効果:水耐性up&ステup・中
【珊瑚のネックレス】装備効果:水耐性up・小
【三又の長槍】装備効果:水属性&鋭刃・小
【海坊主の棍棒】装備効果:水属性&腕力up・中
協会の土屋と柊木は、それぞれ『ウツボの腕輪』と『魔タコの腕輪』を譲り受けて貰う事で同意した。他の魔法アイテムは、誰も欲しがる者は現れず。
それを来栖家で貰い受けて、代わりに交換しておいた魔法の鞄を1つお泊まり組に融通する事に。これで3人とも、魔法の鞄をゲット出来た事になって何よりである。
3つ出て来たスキル書と、それからオーブ珠1個は残念ながら誰にも反応せず。協会で魔石と一緒に売り払う事にして、それで得たお金は全員で山分けで合意。
それで得た金額は、魔石が160万で薬品が45万円。スキル書その他で210万と、合計で415万円とまずまず。1人頭に換算すると、だいたい60万円程度となった。
1回での探索に関しては、陽菜たちからすればゆうに最高金額の更新である。しかもそれぞれ魔法の鞄のオマケ付き、信じられない結果に言葉も無い彼女達。
協会の2人にしても、1度の探索でなかなかこの額には到達するモノではない。そもそもチーム運営&維持の視点からして、全額山分けはあり得ない。
何しろチームの維持費には、結構なお金が掛かるのだ。
それでも口を出さないのは、そのやり方で全員が納得しているからに他ならない。ギルド方針と言うのはそれぞれだし、儲けは二の次で個人の成長に当てるのはアリだ。
それで探索の成功率がアップすれば、儲けは後から自然と増えて来る。まぁ、来栖家に限ってはただのお人好しって気しかしないけど。
ちなみに今回の来栖家の魔石販売額は、家使い用に魔結晶(大)を除いて200万程度だった。薬品類や鑑定の書その他を売って更に5万程度、高額な薬品に関しては企業売りに回す事に。
スキル書やオーブ珠の相性チェックは、お泊まり組と同じく全滅だった。これも売らずにストックに回して、日の目を見るまで家置きとする感じ。
いつかまた、自治会やどこかが売って欲しいと言って来るかも知れない。それも来栖家がお金に困っていないので、出来る戦術ではある。
それから回収した魔法アイテムだが、ほぼ例の海賊骸骨団の宝物庫でゲットした品ばかり。中には厄介な呪いアイテムまで含まれていて、さてどうしたモノか。
とは言え、『海鉱石のインゴット』を含めて良品が多かったのも事実。
【珊瑚のイヤリング】装備効果:水耐性up・小
【蟹のイヤリング】装備効果:水耐性up&敏捷up・小
【鎖に巻かれた拘束具】装備効果:束縛&自傷&呪い・永続
【水切りのトライデント】装備効果:水属性&貫通up・中
【水切りの大剣】装備効果:水属性&鋭刃・中
【海賊船長の帽子】装備効果:怪力&水耐性up・大
その他:『海鉱石のインゴット』 (水耐性&硬化付与)×7
それから回収したダンジョン産の海産物、蟹やフカヒレは全員で美味しく頂いた。女子チームの回収した貝やサザエも、お昼にバーベキューで全て消費してしまった。
お隣さんも含めて大人数の参加で、大いに盛り上がったのであった。
「女子チームの今回の分配に関しては、こんな感じで良いかな? ザジはには改めて何かお手伝い賃を渡すとして、星羅ちゃんにも適当な前衛用の武器と防具を見付けておくね。
それにしても、星羅ちゃんが前衛デビューかぁ」
「後ろからついて行くのは、何だか性に合って無いって分かったからね。ここには優秀な先生がたくさんいるから、動きを覚えるなら今かなって」
「そうだね、ザジとかとっても熱心に教えてくれるからねぇ」
「ウチのお手伝い賃は昨日食べたカニでいいニャ、アレはサイコーの$*&だニャ! アレの為なら、幾らでもタダ働きしてやるニャ!」
興奮して
心配の火種となりそうなのは、来栖家が同じく海賊骸骨団の宝物庫で回収した宝の地図位のモノである。これを見て騒ぎ立てる香多奈と妖精ちゃん、また“アビス”へと出掛ける切っ掛けが出来てしまった。
来栖家のその他のリングやコインは、次の交換用に貯めて置く事に決定した。次回のお泊まり合宿の際には、またぜひみんなで行こうと約束を交わし合う。
こうして特に緊迫もしなかった、ギルド集会は終了したのだった。そして終わった瞬間から、夕食の準備を始めている紗良に
まだ“アビス”で回収した海産物は、半分くらいは残って調理されるのを待っている段階だ。お隣に分けようとしたが、調理が大変とみんな昆布やタコワサ瓶を選んだためである。
その為に1家族ずつ、カニ鍋パーティに招こうかと言う話になったのだけど。ザジが
食いしん坊属性、ここに極まれり。
いや、単に蟹の魔力のせいなのかもだが。とにかくこんな感じで、
それはある意味、ダンジョンが新たに生える以上の事件として記憶される破目に。
そんな2日連続のカニ料理を堪能した次の日、お泊まり組もすっかり慣れた早起きからの家畜の世話やりを終え。ついでに鶏卵の回収やら、牛の乳しぼりも順調にこなしてひと段落がついた。
お隣さんのお手伝いも交えて、朝から賑やかなやり取りが繰り広げられる中。その輪に寄って来る、ハスキー達のリアクションが何だかヘン。
それに気付いたのは、普段はそんなに
厩舎裏に異変があるよと、皆に知らせてダッと走って調査へと向かう末妹。朝から元気だねと、お姉さん軍団は微笑ましくそれを眺める。
ところが、一緒について行った和香と穂積の悲鳴を耳にすると、さすがにのんびりもしていられない。慌てて現場に駆け付けて、皆が目にしたモノの正体は。
一夜にして出来上がっていた、それは
――それは一体、誰の手によるモノ???
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