第178話 昨日に続いてお試し探索に向かう件



 昨日の午後からの凛香チームのお試し探索は、結局10層まで潜って無事に終了した模様。結果、スキル書1枚と宝箱3つの回収に成功して。

 キッズ達も新しい探索着と、新しいスキル使用に少しは慣れて来た感じを受ける。革製の探索着は、馴染むのにもう少し時間は掛かるだろうけれど。

 民泊移住からの初探索は、上々の滑り出しを見せてくれた。


 それには、留守番をしていた和香と穂積もニッコリ。姫香の報告も、全然危なげなく10層まで到着出来たよと、今後の活動に太鼓判をポンッと押す感じの言葉。

 そして護人にキラーパス、今度は叔父さんとゼミ生で敷地内ダンジョンに潜ってみたらと。彼らも経験を積む必要があるし、手近にせっかくダンジョンがあるのだ。


 そう言われれば確かにそうだが、予想外なのは香多奈もついて行くとの我が儘発動で。結局はそれを振り切れなくて、ゼミ生2人と護人+香多奈、レイジーとコロ助に加えてルルンバちゃんも参加する事に。

 割と大所帯になってしまったが、後衛の香多奈の安全を考慮するなら仕方が無い。敷地内ダンジョンの“鶏兎ダンジョン”は、罠もあるし侮れない場所でもあるので。

 撮影役の香多奈を差し引いても、戦力は厚目が良いかも。



 それを別にして、来栖家がダンジョンで収集した強化アイテムの分配方法の話が随分とお座なりだったので。取り敢えずの報告を、一度に行っておこうと思う。

 まずは2つの宝珠の行方だが、上級の鑑定の書を使用した結果、《心眼》と《心頭滅却》と言うスキルを覚えられる事が判明した。どの程度強力なスキルなのか、この名前だけでは判然としがたく。


 結局は護人が《心眼》を覚えて、良く分からない《心頭滅却》は家に保管と言う結果に落ち着いた。冷静になる系のスキルって、まず戦闘でパニクるのは大抵は香多奈なのだが。

 これ以上この末妹に、スキルを覚えさせるのは心情的にどうなのかって話になって。必要な人が現れるまで、大切に保管しておこうと言う流れで決定した次第。


 とにかくこれで、護人は新たなスキルを得たし『掘削』や『硬化』スキルの有用性も前回知る事が出来た。ついでに竜骨の盾は壊されたけど、新たに『翡翠水晶の大盾』を得て。

 その新装備に、妖精ちゃんの手によって強化の巻物で“敵煽”を付与して貰って。不壊&魔法吸収&敵煽と、随分とオプションに幅が増えてくれた。

 そして武器のシャベルも、ついでに闇属性の強化を付与して。


 一気にシャベルの色が変化して、ちょっと強くなった気がしないでもない護人である。ついでに薔薇のマントだが、ドッペルが落とした薔薇のマント:偽物を食べてしまい。

 ついでの様に強化の巻物(威圧)も食べて、良く分からない進化を遂げてしまった。この不思議装備が最終的にどうなってしまうのか、恐らく誰も分からないだろう。

 そもそも、成長限界があるのかも判然としない変テコ装備である。


 それから前衛の姫香の甲殻胸当て装備を、1段階防御アップする事に。強化の巻物も魔石のストックも、随分と増えたので妖精ちゃんにバンバン強化して貰って。

 ついでに姫香の鍬も、護人のシャベルと同じく闇属性へと変更。聖属性と言うか破邪効果の巻物も2枚あったので、こちらは白刃の木刀と白木のハンマーに付与して貰った。


 本当に、妖精ちゃん様々である……普段はただの大飯ぐらいの威張りん坊だが、やる時はきちっと仕事をしてくれる。魔石の使い方やら物知りだし、頼りになる居候には違いなく。

 そんな妖精ちゃんの最後の仕事と言うか、強化の巻物が2枚残っていて。しかしそれが大問題、『スキルの巻物』は装備品にスキルを付与できる強力なアイテムで。

 しかも、そこに封じられているのは『火の玉』と言う攻撃魔法らしく。


 物騒なスキルだが、使い方によっては強力な切り札にもなり得る。そんな感じで家族が悩んでいると、妖精ちゃんが勝手に暴走してしまって。

 結果、側に置いてあった『カボチャの杖』にその能力を付与して、さらに『スキル強化の巻物』でその魔法スキルを強化してしまった。魔石も丁度あったらしく、物凄い早業である。

 そんな訳で、回避アップ能力の火の玉を放てる杖が完成。


 もっとも、誰が持つかは今の所決まっていないけど。香多奈に持たせるのは論外なので、紗良が持つのが有力だろうか。とにかくやり遂げたぜって態度の妖精ちゃんは、まぁ悪くは無いと言う事にしておこう。

 何しろ彼女も、来栖家チームの実力の底上げには物凄く協力的なのだから。


 それから“鬼原ダンジョン”で回収した、虹色の果実2つの行く末だけれど。家族で話し合った結果、紗良と香多奈の後衛2人で食べる事に。

 後衛は直接戦闘に参加しない分、どうやらレベルアップが遅いらしい。だけどMPやHPの数値は、探索に於いては多いに越した事は無いのは当然で。

 さすがにスライム経験値だけでは、賄えないだろうとの判断である。


 それから“弥栄ダムダンジョン”で入手した、『千年亀の甲羅』と言う防御アップ効果のアイテムだけど。丁度3枚あったので、紗良がハスキー達の装備ベストに縫い込む事に。

 これで随分と、装備ベストも良品へと近付いて行った気も。ついでに“キャンピングカーダンジョン”のドロップ品の『カボチャの首飾り』だが、キッズのお守りは大変だろうとコロ助に融通される事に。

 装備の更新については、これでだいたいお終い。


 ちなみに仁志支部長が欲しがっていた、予知能力アップの『魔法の鏡』は85万円で協会に売る事に。来栖家で持っていても、香多奈の変な能力が加速する恐れしかなかったので。

 それからもう1つ、ヒーリング効果アップの『南瓜の置物』は探索に同行させて来栖家チームで使う事に。何かオルゴールもついていて、ちょっとお洒落なのもポイントだったかも。


 ついでに上級の鑑定の書が余ってたので、ミケの新特殊スキルとか諸々を調べる事に。ツグミも最近は全然調べて貰って無かったし、ついでに姫香とペアで調べる流れになった。

 それによって、色々と驚愕の事実が明らかに。



【Name】来栖 姫香/Age 16/Lv 16


HP 48/52  MP 20/28  SP 15/21

体力 C   魔力 E+  器用 D+ 俊敏 D+

攻撃 C+  防御 D- 魔攻 E- 魔防 E

理力 D   適合 D   魔素 D   幸運 D+

 

【Skill】『身体強化』『圧縮』『旋回』

【S.Skill】《豪風》

【Title】なし



【Name】ツグミ/Age 3/Lv 18


HP 70/76  MP 42/45  SP 40/42

体力 D+  魔力 D  器用 D-  俊敏 D+

攻撃 D+  防御 D   魔攻 C-  魔防 D-

理力 D- 適合 D-  魔素 D  幸運 E

【skill】『影縛り』『隠密』

【S.Skill】《闇操》

【Title】なし



【Name】ミケ/Age 12/Lv 14


HP 21/23  MP 41/48  SP 29/34

体力 E  魔力 C+  器用 C- 俊敏 C+  

攻撃 D  防御 F+  魔攻 C+  魔防 C-

理力 D  適合 D   魔素 D- 幸運 B+

 

【Skill】『雷槌』

【S.Skill】《刹刃》《魔眼》

【Title】《準猫又》



 まずは、ツグミのレベルが驚きの18と言う……恐らくハスキー軍団は、軒並みこのレベル帯なのだろう。真夜中に秘かに、ダンジョン通いをしているのは確定となった。

 護人としては叱るつもりは無いが、余り無茶はして欲しくないのは事実。ミケも戦闘参加が少ないのに、まずまずのレベルに達している。


 そして新たな特殊スキルは《魔眼》と言うらしい……恐らく小島博士を懲らしめたのも、このスキルで間違いなさそう。何より、《準猫又》が進化を遂げてなくて良かった。

 特にミケに関しては、こちらの意に反して何をするか分からないので。




 そして日曜日の午後、とにかく実戦が大事と“鶏兎ダンジョン”に送り出される面々である。護人とレイジーがサポート役で、ゼミ生の大地と美登利が経験を積むためのメインでの出陣。

 そして香多奈の我が儘の発動で、コロ助とルルンバちゃんをお供について行く事に。撮影は任せておいてと、趣旨はまるで違うのは毎度の事だと割り切って。


 姫香や紗良は、今回はお留守番で在宅待機である。何しろこのダンジョンも、ハスキー軍団の夜間特訓のせいで敵の数が激減していると思われるので。

 あまり多くの人数で固めても、かえって邪魔にしかならないだろうと言う配慮である。まぁ、5層の中ボスから7~8層程度をこなして、様子を見てから戻る予定で。

 各自の準備が整っての、出発と相成った次第。


「さすがに緊張しているみたいだけど、そんなに硬くならないで良いからな……革スーツを身体に馴染ませるのが、まぁ第一の目的くらいに思っておいて貰えれば」

「はっ、はい……頑張りますっ」


 私も頑張るよと、後ろから答える香多奈が一番元気なのはアレとして。とにかく不安が残るメンバーでの、探索開始である。ここのダンジョンは罠の設置もあるので、乗用草刈り機モードのルルンバちゃんが先頭だ。

 そして案の定、出て来る敵の少なさは護人の予想通りの展開だった。昨日の報告を姫香から聞いて、ある程度の予想はしていたけどこれでは実戦練習にならない。


 そして罠も1層に1個程度で、安全には違いは無いのだけれど。取り敢えず出て来る敵は、全てゼミ生2人に任せて護人やハスキー達は見学モード。

 5層の中ボスまでは、このパターンで行けそうだ。



 一方の地上待機メンバーだけど、紗良は温室で小島博士とゼミ生2人を相手に、木の実の苗の育成過程を説明していた。それらは概ね順調で、種類も段々と増えて来ており。

 作業環境も随分と整って来ている所に、『成長の植木鉢』と言う魔法アイテムを入手して。これは小振りな植木鉢で、数も3つしか無いのが欠点ではあるけど。


 試しに高価そうな『虹色の果実の種』を植えてみたら、3日と経たずに芽が出て来てくれた。この種からはもしや虹色の果実が収穫出来るかもと、期待の度合いは大きいのだけど。

 上手く行くかの結果報告は、恐らく随分と先になる気配。


 それでもやはり、ダンジョン産の腐葉土やら何やらは、これらの育成に相性も良さげで。苗やら種やら、今では種類は10種類程度にまで増えている。

 特に“樹上型ダンジョン”から入手したハーブっぽい種は、順調に育っていてもう少しで花を咲かせそうな勢い。鉢植えも順調に育っており、傍目からはいっぱしの温室風景かも。


 扱う種も、11月の青空市で偶然ながらも追加購入に至っており。どこかの探索者がブースを出していて、その中の1つに一緒に回っていた妖精ちゃんが反応したのだ。

 それはドライハーブ的な飾り物で、値段もほんの千円程度で。ついでにクレープも盛大におねだりしていた妖精ちゃんだが、お陰でそこから種も採集出来た。

 結果オーライと言うか、良い買い物が出来たと喜ぶ紗良だったり。


 手伝うゼミ生達も、その張り切りようは小さな田舎町に楽園を見付けた如く。種から芽が出たとか葉っぱが増えたとかの報告で、一喜一憂する始末である。

 そして紗良が『解読』スキルで錬金レシピを翻訳したノートは、まるで神様のように崇められ。コピーされた用紙は、彼らによってボロボロになるまで読み返されている様子。

 その研究熱心な姿には、本当に頭が下がる思いだけれど。


 同じ空間で仕事をするとなると、少々暑苦しいと言うか何と言うか。元々紗良は男性が苦手で、高校も女子校で彼らのノリに全くついて行けない状況も多々あって。

 モノの数分で、家族の雰囲気を懐かしみながらの共同作業だったりするのだが。その成果は幾つか上がって来ており、最近では木の実の能力アップをポーション薬にする事に成功していた。


 全部の種類ではないが、これで戦闘前に咄嗟に飲む事も可能になる筈。しかも混ぜる種類によっては、効果時間や効能も良くなる事を発見出来て。

 本当に、鑑定プレート(薬品)の存在は有り難い限り。





 ――探索組の無事を祈りながら、そんな作業に勤しむ紗良だった。








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