最悪の再会
武器屋を後にしたゲンは、町を出るため来た道を辿り広場へと戻ってきた。
相変わらず広場は多くの人で賑わっていた。
しばらく薄暗いところにいたからか、ゲンにはそれが眩しく感じた。
「えーと……、出口はどこかな」
辺りを見渡しながら町の出入り口を探す。
塀を乗り越えて町に侵入してきたため、どこから出ればいいのかわからなかった。
広場を歩いていると、出入り口らしき門から真っ直ぐ広場まで伸びている大通りを見つける。
ゲンは迷う事なくその大通りに行き、門を目指して歩いて行った。
門に近づいていくと、左右には重厚な鉄の鎧に身を包んだ門番が立っていた。
2人は身長の2倍はありそうな長い槍をそれぞれ持っている。
ゲンはその立派な格好に見惚れてしまった。
すると、門番の一人から声がかかる。
「おい、どこへ行くつもりだ。」
まさか話しかけられると思っていなかったゲンは突然のことに跳ね上がる。
「うおっ! び、びっくりした。えっと……、リースの森に。」
「だったらこの門を通す訳にはいかない。ただでさえ町の外はモンスターが出没して危険というのに、あの森は行方不明者がここ最近急増している。」
「そこをなんとか!」
「ダメだ。子供なら尚更通す訳にはいかん。」
「お願いします!」
「ダメだ。門から離れるんだ。」
門番は断固として通すつもりはなさそうだった。
まさかの所で出鼻を挫かれてしまったゲンは途方に暮れる。
また塀を越えて行こうか考えていたところ、急に後ろから野太い男の声がした。
「そのボウズは俺の連れだ。通してくれないか?」
門番はその声の持ち主を見るや否やピンと姿勢を正した。
「シャクドウ様! 大変失礼致しました! まさかあなたのお連れ様とは知らず。無礼をお許し下さい!」
ゲンは門番の態度の豹変のしように目を丸くした。
そして、「シャクドウ」と呼ばれた男の方へと振り返ってみる。
そこには髭が濃く、ガタイのいい男が堂々と立っていた。
「あ、あんたは!」
その男はボスコの中央広場で、ゲンに武器屋を教えてくれた人物だった。
「また会ったな、ボウズ!」
シャクドウはニヤッと笑みを浮かべ、ゲンの頭をガシガシ撫でる。
「や、やめろっ!」
「ガハハ! すまんすまん、ついつい!」
シャクドウは相変わらず乱暴だった。
豪快に笑いながらシャクドウはその手を退かした。
ゲンは文句をブツブツと言いながらグシャグシャに乱れた髪を手櫛で簡単にとかす。
「という訳で、俺とこのボウズはこれからリースの森に行く。通してくれないか?」
シャクドウは改めて門番に向き直すと、グッと顔を近づけて威圧感を込めた声でそう言った。
門番はその圧に押されたじろぎ、震えた声で門を開け始める。
「ど、どうぞ、お通り下さい!」
「ガハハ! 悪いな! ほれっ、行くぞボウズ!」
唖然としていたゲンの背中にドンと衝撃が走る。
シャクドウを見ると大きな手を広げ振り終わった所だった。
ゲンは前につんのめりそうになりながらやむなく歩き出す。
(やっぱり、この人苦手だ……)
ゲンの心の中ではシャクドウに対する愚痴で溢れていた。
しかし二度も助けてくれた恩もあり、声には出さない事にした。
門を抜けると、そこには見渡す限りの草原が広がっていた。
そして、その草原には門から伸びるようにどこまでも砂利道が続いていた。
「そういえばボウズ、名前を聞いてなかったな。俺はシャクドウだ。」
シャクドウは手を差し出して握手を求める。
ゲンはその手に応えることなく、ただ真っ直ぐ前を向いたまま「ゲン」とだけ答えた。
握手に応えられなかったシャクドウは決まりが悪そうに、差し出していた手をそのまま後頭部に持っていきポリポリと頭を掻いた。
「ゲンよ、そんなに俺のことが嫌いか?」
「うん。」
「なんでだ?」
「乱暴で豪快で執拗に絡んできてむさ苦しくて威圧感あって雑で、とにかく苦手なタイプだ。」
ゲンは不機嫌そうな様子をあからさまに出し、少しでも距離を開けようと大股でスタスタ歩く。
しかし圧倒的な体格差のせいで、シャクドウは普通に歩くだけで全く差が開くことはなかった。
「そうかそうか、よく言われる。」
シャクドウは白い歯を見せ笑みを浮かべる。
「でも俺はお前が好きだ。」
「はぇ!!??」
ゲンは思わず変な声が出た。
「あ、変な意味じゃないからな? 別に俺は男が好きとかそんな趣味はない。旅をするんだろ? ガキ一人だと心配だからな。それに精霊の石ってのにも興味がある。」
シャクドウは真面目な顔つきでそう言った。
「だから尾行してたのか?」
「そうだ。なんだ、気づいてたのか」
ゲンはボスコの町でシャクドウと一度別れてから変な視線を感じていた。
武器屋を出て広場に着いてからも誰かに見られているような気配を感じていたが、人混みに慣れていないゲンは気のせいだと思っていた。
「まあ、そういう訳でこれからよろしくな!」
シャクドウは再びゲンに握手を求める。
何言っても聞かなそうな態度にゲンは諦め、嫌々ながら握手を返した。
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