小学校
そしてあまねたちは6歳となり、小学校に入学する年齢となっていた。
今日は体験入学的な日だった。あまねとゆうきは蒼と小学校に来ていた。
「お名前教えてもらってもいいかな?」
先生がそう聞いた。
「小春裕貴です」
「小春……あまねです」
二人はそう答えた。
「はい。えーっと、おもちゃはおいて行ってくださいね」
先生がそう言った。あまねに向けられたものだと誰もがわかっている。
でもあまねはぬいぐるみを離すことができない。精神的な不安もあるが、能力がいつ暴走するかわからない。
「やっぱ、無理だね、あまね」
蒼はあまねにそう言った。蒼は先生に事情を説明し、保健室で預かってもらうことにした。もちろん、能力のことを言ったわけではない。精神的に……という説明をしたのだった。
「お預かりしますね」
保健室の先生はそう言った。あまねは無反応だ。
「よろしくね。お名前は?」
「……小春……あまね」
「そっか。あまねくん、ここで終わるまで待ってよっか」
あまねは何も答えない。
そのまま数十分が過ぎて、さっきとは違う先生が入ってきた。そしてあまねの前にしゃがんだ。
「僕は、特別学級の担当をしている田中です。よろしくね」
あまねはまた何も答えない。
田中はあまねの手を引っ張って半ば強引に他の教室に連れて行こうとした。
あまねは田中のことを睨む。田中はそのまま連れて行こうとする。
あまねはなんとかその手を振りほどいた。
「何するんだい? ここにいてはいけないよ」
「……勝手に触るな。それとも、怪我したいのか」
あまねの口調は6歳とは思えなかった。先生も驚いていた。
あまねは先生のことを鋭い眼光で睨んだ。そして、あまねの周りに黒い霧のような何かが発生した。
「えっ……」
あまりにも不思議な現象に先生たちは思わず声を漏らした。
「あまね!」
保健室に誰かが入って来てそう叫んだ。その声の主は蒼だった。
「あまね、ストップ。これ以上やるな」
蒼がそう言って、あまねは先生を睨むのを止めた。周りの黒い霧も無くなった。
そのころゆうきは、あまねの能力の大きさを感じたのか、驚いて声も出なかった。
あまねの能力は蒼が子供のころ、星悟の父が研究していた珍しい能力のうち、その2つを持っている。1つが、感情を貯めて攻撃などに繋げる能力。2つ目が、他人の能力をコピーする能力。1つ目の方は、あまねの母である杏奈の能力。2つ目の方は、杏奈の能力ではない。でも、あまねがコピーしている能力は杏奈が過去に見たことのある能力だ。
能力は親子で継承したりはしないと言われているが、ごくまれにこんなこともあるとかないとか……
その後、あまねが学校に行くことはなかった。
本人的には、ずっと友達なんていなかったし、勉強も一人でできる。
それにぬいぐるみがないと能力の制御が効かなくなることがあったりする。能力がバレたらどうなるのかというのは蒼の経験を聞けばなんとなくわかる。
色々なことがあって、あまねは学校に行かなかった。
一方、ゆうきは普通に学校に行った。友達もできて、普通の小学生の生活を歩んだ。もちろん能力のことは誰も知らないし、上手く隠せている。
ゆうきはあまねが学校に行かないことを悪いようには思っていない。
能力のせいで、しょうがないことだということははっきりとわかっているから。
でも一緒に学校に行けたら楽しいだろうな……とは思っているようだった。
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