君はいないとわかっていても
バイクに乗るようになってから
自転車は使わなくなりガレージで眠っている
買い物帰りに通りがかった想い出の公園は
いつのまにか殺風景な駐車場になっていて
まるでかつてここにあったものを
存在ごと拒否するかのような冷徹さを持つ
何もない駐車場を背景に
自分の写真に撮ってみた
昔のように幸せに満ちた顔で
笑ってみせたら寂しくなったよ
あなたの姿は依然見えないままだった
写真の端で恥ずかしそうにそっぽを向く
あなたは写真が嫌いだったよね
私はそれをわかっていながらも
一緒にいた証をどうにか残したくて
意地悪だったね 今更ごめんね
あんなもどかしいことはもうしなくていい
だってもうここにあなたはいないのだから
かつてあなたがここにいたことを
覚えている人が今どれだけいるだろう
あの日の私たちを誰が覚えているだろう
次へ進めと人はいう
だけど私たちにとってこの場所は
かけがえがない特別な場所なんだ
まだここから動けない私を
あなたは臆病者だと笑うだろうか
この街にはなんでもあるらしい
素敵なカフェも服もインテリアも
だけど、この街にはあなたがいない
大事なものは、なにもない
なんでも揃う街ですだなんて
そんな売り文句はきっと嘘
無造作に歩き回る人の群れの中
私は見覚えのあるあなたの背中を探す
無意味だと心の奥で知りながら
雨に打たれてずぶ濡れの私は
随分ひどい見た目をしているのに
気にする必要もなくなってしまった
あなたがいてくれないのなら
なにもかもが意味がない
あなたが見えなくなってしまっても
この街の残り香が、今もなお
あなたの足跡をいまだに残している
私はそんな見えもしない背中を探して
今日もあなたを求めて街を彷徨う
そんなもどかしいことはしなくていいのに
だってもう、あなたはここにはいないのを
本当はちゃんとわかっているのだから
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