第31話 モニカの想い

 僕たちは、支部長室にてソフィアさんの対面に座っている。


「さっきはモニカがすまなかったな。

 あの子はあの容姿と振る舞いで、誤解されることも多いが、真面目を絵に描いたような子でね。許してやってほしい。


 まあ、でも、あの成果じゃ、疑うなって方が無理ってもんだぜ!

 普通は、東の森まで往復で約1日かかる。

 だから理解できるだろう?

 どれだけ異常かってことをよw」


「いえ、モニカさんのことは、こちらこそ申し訳ないと思ってます。

 元気出してくれるといいんですが。

 対応してくれている間もずっと泣いていましたから。」


「え?泣いてた?それは変だな。」


「はい、泣いてました。

 あと、最後に『私にも……。』って呟いたのが、微かに聞こえたんです。

 どういう意味なんだろうか?と思って気になったんです。」



「うーん、そういうことか……。


 モニカについてのことなんだが、これはみんな知っていることなので、お前たちにも話しておく。長くなるが聞いて欲しい。


 まず、彼女は本当に仕事一筋で、かなり、人気はあるのだが、仕事以外に興味がなく、休暇もほとんど取らず、遊びや恋愛もしたことがない。

 職場以外に友達もいない。

 見ていて心配になるくらいなんだ。


 ただ、それには理由があってな。


 彼女の両親は早くに亡くなっているんだが、両親とも冒険者だったらしい。

 この街には孤児として預けられたんだ。

 その頃から冒険者になりたいというか、ならなくてはいけない、というふうな感じだったらしい。

 そして10歳の成人の儀式、本人は両親とも戦闘職だったので、当然なんらかの戦闘職を授かると思っていたらしいんだが、世界民だったことで、相当落ち込んでいた。


 『冒険者になりたい。』


 その一心で、諦めることなく、再天啓のためにどうするかを考えた。

 再天啓については話したとおりだが、後天的に授かる物なので、関連する業種である必要があるんだよ。

 10歳になったことで、孤児院も出なければいけないので、どこかで働かなければいけないのだが、彼女は冒険者ギルドしかないと思い、ここにやって来たんだ。


 その時の彼女は今でも覚えてるよ。

 世界民で雇ったのは、彼女が初めてだった。

 しかも10歳というのも前例がない。

 普通は冒険者を引退した場合に、ここを選択するのがほとんどだからね。

 ただ、当時の彼女は、それはもう必死で、毎日毎日通い詰めて……。


 結局のところ、私が根負けした形で採用したんだ。

 まあ、今となっては親子みたいな感じだなw


 ただし、彼女も18歳で、未だに再天啓はない。

 知っての通り、冒険者には最初に時間的な制約がある。

 20歳というタイムリミットがな。

 だから、私はもう、仮に今、再天啓があったとしても遅いと思っている。

 続けることはできるかもしれないが、今よりもずっと過酷な人生を送ることになるだろう。

 彼女にはそれを言わなければいけないと思っているんだが言い出せなくてね。


 でだ、お前たちを見て、思ったんだろうよ。

 新人でもこんなことがある。

 私にも……可能性はあると。

 ただし、今の現状のギャップに複雑な心境なんだろうよ。」



「そうだったんですね。

 僕たちで役に立てることはありますか?差し出がましいとは思いますけど……。」


 その後、長い長い沈黙が流れた。

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