「書道」という名の芸術に寄せて

塔山森山

第1話 芸術には爆発を添えて

真夜中。

周りには何もない。ただ机と硯、私の目の前には文鎮と半紙だけ置いている。

しゃくしゃくと墨をする音だけが周りにこだまする。


静寂。


私はこの静寂が好きだ。

そしてこの静寂の中で無心に墨をする時が一番安らぐ。


少し丸みをもった硯。

特に名のあるものではない。だが小さな頃から使っている手慣れたもの。

墨を硯の波止はとから滑るように海への浸す。

そのまま水を引き出すように、おかへと墨を上げた。


ゆるりと回転させるように墨をする。

かすかに漂う木炭のような匂いも心を落ち着かせてくれる。

この墨をする時間があるからこそ、この「書道」という芸術に真摯に向き合うことができる。そういう気がしている。


墨の1/3ほどすり終わった。いつもより少し多めに墨をする。

なぜなら今日は特別な日。特別なものを書く日なのだ。


「ふぅ」


小さく息を一つ。筆をとり、筆先を下に垂直に持ち上げる。

筆先を墨に浸す。

筆に徐々に墨がすり上がっていく。少しキラキラと光っているようにも見える。

まるで今日という日を祝福してくれているようだ。



私は行おうとするのは「書道」。

子どもがやっている「習字」とは違い、正解はない。

書道とはあくまで芸術、そう芸術なのだ。


昔、芸術は「爆発」だ、と言った方がいた。

爆発を「感情」と置き換えるのであれば、書道も「爆発」と言えなくもない。


もちろん、当時の芸術の潮流からいえば、「爆発」とは感情の・・・

おっと、いかん、いかん。書く前に邪念が入りすぎた。


私が書道で表現したいもの。

それはあくまで「静=清」の中の「動=道」なのだ。

あくまで静かな気持ちで、無心で臨まなければならない。


もう一度息をはいた。

筆先に集中する。


そく(点)


真っ白な紙に、小さく点を打つ。


たく(小さい左はらい)

りゃく(左はらい)


流れるように。無心の中に自然と溢れる感情を・・・




二文字目の最後、跳ね。

余韻を感じつつ筆をおく。


自分の書いた作品を見直す。


・・・ダメだ!こんなのではダメだ!

気持ちが入っていない。

そのまま駄作を横にすっと投げ捨てた。


たった2文字。だが2つの画数は大きく違う。

バランスが大事。

大事ではあるが、ただバランスがとれていればいいというものではない。

そう、もっと「字」を超越して、そのものを表すように。



もう一度筆をとる。

集中。

肩、腕から、指先。そのまま指が筆になるように・・・

筆に浸した墨液がキラリと光り、気持ちのまま筆を滑らす。



・・・


2回目の作品。

悪くはない。私の気持ちも表現できている。

しかし、、やはり字面を追っているようにしか見えない。

もっと本質を!本質をとらえなければ!!


悔しさを込めて、紙を再び投げ捨てた。


紙は決して安いわけではない。

この日のために、この芸術を完成させるために、特殊な紙を購入したのだ。

あまり無駄にするわけにはいかない。

これで最後。必ず、必ずや!!発動させる!!


お金のためではない!私のためでもない!

世界のため!いや、そんな小さいものではない!

芸術とは!真の芸術とは!



「ふぅ」


大きく息をはく。気合を込める。

筆先が自分と一体化したような感覚。

筆先の墨はキラキラと光っていた。今日一番の煌めき。



そく

たく

りゃく

ろく


筆が躍動する。

もう私の意志は関係ない。

筆の躍動が真っ白な紙の上に真実を生み出していく。



・・・


跳ね上げ。


跳ね上げた勢いのまま、筆を高く掲げた。

無我。無心。徐々に心に満ちていく達成感。


書けた。

完成だ。見ずとも分かる。真実を書き表せた実感。



作品名:「爆発」



そして・・・



起動!!!



購入した用紙、そしてキラキラと光る墨。

書かれた文字が真実に達した時、書かれた文字の意味と同一の作用を半径2kmに渡って発動する特殊な用紙と墨だ。


この起動によって私の芸術は完成する!!!


私が書いた文字が光と熱を放つ。

眩い光が私を覆いつくす。

熱は私の体を焼き尽くす。



どこかでかすかに「エクスプローーーーージョン!!」という声が聞こえる。

成功だ、あぁ成功だ。

芸術は、芸術は!!!


ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

♪ BGM あいみょん 愛を知るまでは ♪

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アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

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