~interlude1.0~
術式は組み込んだ。長い間、あの少女を観察していたのは正解だった。
本体には手が出せなかったけれど、今なら利用することが出来る。
大魔術式を起動させれば、恐らく も魔術師として一歩も二歩も踏み越える。
そうなれば、あの少女はどう思うだろう。
まさか喜びはしないだろうし。悔しがるだろうか。
あの少女のそんな顔を想像するのは些か難しい。
だがそれまでは は慎重に仮面を被って行動するべきだ。
実験体の周囲には警戒すべき要因が多い。
おまけに網に掛かった情報を調べると、あの組織が。
精鋭は投入されていないようだが油断は禁物だ。しかしあの少女の手が及ばないのなら恐れるべきは悪名高い原理の使者くらいか。
**は着実に育ってきている。 の術式となるには、もっと増幅しなくては。あの少女の行動もだから上手く利用してやるのだ。
急がず認識阻害の魔術を継続して、 は仮面を装わなければ。
**は家系的にも抜群の逸材だ。それはマイナス要素を持つほど更に際立つ。
――――向こう側に行く。その門に到達する。
――――世界その物が
逸脱しなければ〈エンテレケイア〉には到らない。
それは――――あの少女も違う視点でそこを目指していたのだから。だから、歪みを正すこの世界のシステムが厄介だ。
――――星の力や〈世界〉そのものの有り様が。
だが必ず はやり遂げると決意した。いつか失敗した愚かな怪物を乗り越えて。
思えば彼とは衝突していた。 は慎重であり、彼は臆病だと を笑ったが。
だが彼は拙劣だった。アレと は違う。
**や他の術式の準備も入念だ。そしてここにはアレの時と違い、大きな心配要素になる危険因子はいないはずだ。
――魔術師の悲願。
〈エンテレケイア〉への到達と現象化。理想による革新。
賽は投げられた。ルビコンを渡ってしまえばもう引き返せない。
――進み続けて、走り続けて。
潰える時は――――その時は。
きっと には力がなかっただけ。
世界が勝ったのか。または魔術が世界に熟していなかったのか。
常に可能性を計り、町の監視網は緩めず、機関の改人にも細心の注意を配ろう。
――――進む。進む。進む。
――――誰も見ていない上へ。前へ先へ。可能性の極限へ。
――――interlude out.
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